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「すみだ福祉保健センター」の一室で練習する「同好会」のメンバー |
「健康増進につながる」として、中高年を中心に人気の「スポーツ吹き矢」。1,2メートルある筒に20センチの矢を入れ、吹いて、的にあてて点数を競います。10年ほど前に考案されたスポーツで、手軽にできるということで、今は中高年だけでなく、子供や、会社帰りのサラリーマンやOLにまで、愛好者が年々増えています。「日本スポーツ吹き矢協会」によりますと、会員だけで1万人を超え、各地に教室や同好会が生まれているということです。
坂本麻子・情報キャスターが取材したのは、障害者と高齢者を中心にした「スポーツ吹き矢同好会」。東京・墨田区の「すみだ福祉保健センター」の一室で月2〜4回、練習を行っています。
メンバーの1人、角谷実紀さんは足と目に障害があるため、車いすに乗ったまま矢を吹きます。そして、的はぼんやりとしか見えません。的は中心の方から「白、赤、白、黒」と塗り分けられていますが、矢が当たった場所の色と方向を横についている他のメンバーが教えます。それを聞いて、角谷さんは矢を吹く方向や強さを微調整して、次の矢を吹くんです。
指導している「日本スポーツ吹き矢協会」理事の横田博文さんによると、的の方向を知らせたり、当たった矢を的から抜く時は補助が必要ですが、基本は誰でも変わらないということです。そして、横田さんはできるだけ手は貸さないようにしているそうです。「自分のできる範囲内でやることに楽しみがあるし、身体に障害があっても、残っている力をどううまく使うか、考えながら動くので、そういう面では皆よくなってます」と話します。
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坂本キャスターも「スポーツ吹き矢」に挑戦! |
「スポーツ吹き矢」は足腰を激しく動かすことはないのですが、的に向かう時の集中力と腹式呼吸をちゃんと強くできるかが大事です。お腹を使って深く息を吸い込み、一気に吐き出します。坂本キャスターもやってみましたが、体が「ほどよく」温まってくるのを実感したそうです。
メンバーの一人、八巻一四さんは10年前に病気で倒れ、 話したり、歩くことはできるようになりましたが、身体の右の方がまだうまく動きません。でもかなりの腕前で、初めたのは去年ですが、次々と的の真ん中に当てていました。
ぼやーっとしている気分がぱーっと晴れる感じがするんだよ、という八巻さんですが、「最初は自分にやれるのかな、と思ったけど、今はスポーツ吹き矢が最高の楽しみだよ」と話していました。
メンバーの中には、障害のあるご主人のリハビリになれば、と 一緒に来ている70代のご夫婦もいました。奥様は「付き添いとして一緒にきたんだけども、つい一緒にはまりました」と話します。また「2人だけで家にいると、話したり話さなかったりですけど、人の輪の中に入っているのが楽しいです」とも話していました。
すみだ福祉保健センターは障害者向けの「スポーツ吹き矢講座」を開いていて、それを終えた方たちが同好会を作りました。会長の羽田野美代子さんは目に障害があって、的がほとんど見えません。的に工夫を加えても、なかなかうまく当たりませんが、気にせず、楽しんでいるそうです。羽田野さんは「点数にこだわったら楽しめないと思います。やっぱりみんなで仲良くやるのがいいんだと思います。そうやっているうちにやる気が生まれてきて、座ってやってた人が立てるようになってきたり、点数なんて関係ないと言っていた人が、どんどん上手くなったりするんですよね」と話します。
同好会の人数もどんどん増えていますし、基本は月2回なんですが、希望が多いため、練習場所を探して、ほとんど毎週やっているそうです。
こうした愛好者が増えていることを受け、日本スポーツ吹き矢協会も今年の3月、「障害者サポート部」を作って、障害者にも楽しんでもらえる環境作りに取り組み始めました。「スポーツ吹き矢」を通じて、自然な形で心も身体も元気になる人が今後もっと増えるかもしれません。