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「RAINBOW」の多言語読み聞かせの様子。一節を日本語で読み、その後それぞれの言葉が続く。この日は中国語、タガログ語、ビサヤ語の順に行われた。 |
5月の下旬に山口智子リポーターが取材したのは、東京・目黒区で活動するボランティアグループ「多言語絵本の会RAINBOW」が目黒区内の図書館で行った「読み聞かせ」の会です。名前の通り、多言語で絵本の「読み聞かせ」をしています。
「読み聞かせ」を行った図書館では毎週水曜日に30分、絵本を使った「おはなし会」を開いています。そこに、「RAINBOW」から「多言語でやってみたい」という提案があり、月1回「RAINBOW」が行うようになりました。
前半15分はその図書館の職員が普段の「おはなし会」のように、日本語で「読み聞かせ」をします。そして後半の15分が「RAINBOW」の時間です。まず日本人のボランティアの方が日本語で絵本の「ある一節」を読み、他の言葉で同じ一節を繰り返します。
現在、12の言葉で、読み聞かせをする方がいますが、取材した日はいずれも日本人と結婚して、現在子育て中というお母さん3人が「中国語」、「タガログ語」、「ビサヤ語」(フィリピン南部で広く使われている)の順番に行いました。
会場となった会議室にはマットが敷かれ、0歳の赤ちゃんから小学生まで20人ほどの子供たちが座って、聞きました。聞く機会があまりない言葉もあるので、子供たちにとってはわからないなりに新鮮だったようです。
一方、お母さん達は「日本の社会で中国語を話せるチャンスがあまりないので、自信がつきました」「自分の子供に読み聞かせる時、どうやればいいか、確かめられました」と活動について話していました。
「RAINBOW」の活動は、日本に住む外国人のお母さんが読む絵本が図書館などにあれば、というところから始まり、「読み聞かせの会」に発展しました。去年1年活動してみて、ボランティアの中村のぞみさんは「『読み聞かせ』は読む方のお母さんにとってもすごく力になる、ということがわかった」と話します。だったそうです。日本で生まれた子供は日本語しか話せず、お母さんが使っている「母語」を話せないことも多いんです。中村さんは「子供は日本語だけの世界で育って、親の文化なり言葉なりを拒否したりします。また子供はどんどん幼稚園とか学校で日本語を覚えてくるのに、お母さんの方は勉強が大変だったりします。親子のコミュニケーションがとれないんです」と話します。そういう「本当は自分の言葉で子育てしたいし、子供に本も読んであげたいけど、難しい」お母さん達に子供とコミュニケーションをとろうという力になんです。例えば、参加者の中にエチオピア出身のお母さんがいるそうですが、絵本の「読み聞かせ」をきっかけに、自分の子供にエチオピアの言葉で接するようになったそうです。
また、中村さんは「外国の言葉や文化に興味を持つというのはすごく大事なことですが、大人が考えるよりも子供は色々楽しんで聞いているようです」と話します。インドネシアのお母さんが、日本語とインドネシア語で「紙芝居」をやったこともありました。日本ではおなじみの「紙芝居」ですが、インドネシアにはないそうで、二つの文化の融合が楽しめたようです。
また「RAINBOW」の中には、外国人が「絵本で日本語を学ぶ教室」に関わっている方もいます。その教室では、「わらべうた」や各国の「じゃんけん」など、親子の伝承遊びで交流する活動も行っています。国籍や言葉を問わず、親子一緒に楽しんでいるんです。
「読み聞かせ」にこだわらず、多言語での文化交流や多言語での親子のコミュニケーションが広がっていっているようです。