山口智子リポーターが今回取材したのは、品川区の大井銀座商店街。空き店舗の有効利用で、街の活性化につなげようと、ある空き店舗を改装し、「食育」の拠点にしました。名前は「みんなの食育ステーションIN大井町」で、2年前にオープンしました。
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料理に取り組むお母さん達 |
大井銀座商店街振興組合の後藤邦夫理事長は「食育を取り上げようと考えたきっかけは、赤ちゃんを連れたお母さんが居酒屋に入るのを見たのがきっかけです」と話します。後藤理事長は「今の若いお母さんは居酒屋で子供と食事をするのか」とショックを受け、商店街が取り組むテーマとして「健康な街づくり」を掲げていたこともあって、「食育」に取り組むことにしたのです。
「食育ステーション」はJR大井町の駅前に伸びる商店街のほぼ真ん中にあります。3分の2ぐらいはキッチンのスペースで、2,3日に1回は講座や教室が開かれています。山口リポーターが取材したのは「母と子のための本当のお食事」という教室。4ヶ月から1歳半ぐらいまでの子供がいるお母さんが対象で、取材した日は7人のお母さんが「カブと車麩の煮物」や「大根飯」など和食5品を作りました。中には離乳食として食べられるものもあって、できあがったら一緒に食べていました。
また、食事のことだけではなく、離乳食の悩みや子育ての不安などもお母さん同士やスタッフとのおしゃべりのなかで出てきていました。お母さん達にとっては子育て情報の収集の場にもなっているようです。
品川区内の方だけでなく、電車やバスを乗り継いで大井町まで来ている方もいたのですが、「こういう場所はどんな所にもあってほしいです」とか「友達も増えるし、出かけるきっかけにもなります。散歩で来れる距離の人がうらやましいです」と話していました。
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一緒にお昼ご飯 |
キッチンスペースではこのほかに、「子供が食材について学びながら、料理にチャレンジする」教室や「中高年のためのメタボリック予防」のための講座も開かれています。
また、新鮮な野菜や、雑穀や無添加の調味料など健康にこだわった食材の販売コーナーも「みんなの食育ステーションIN大井町」にはあります。全面ガラス張りで、中で何をしているのかよく見えるので、商店街を歩いていて、ふらっと立ち寄ってみる人もいるようですし、毎週金曜日の夕方市の日は大賑わいだそうです。
教室帰りのお母さん達も商店街の他のお店をのぞいたりしているということで、商店街の方々も変化を感じているようです。「店の前通って挨拶する小さい子とか増えてきてます」という声のほか、「商店街が一つのテーマを持って情報を発信するというイメージができたので、お店が並んでるだけじゃなくていろいろやってる、ということを理解してもらえるようになりました」「自分達も協力して商店街を活性化させようという気持ちにはなりました」という声も聞かれました。
協力するお店の方も多く、ワインに詳しい方が大人向けに夜のワイン教室を開いたり、アロマテラピーに詳しい方がアロマの教室を主催したりしています。また視察に来た事がきっかけで、「高知県」から新鮮な野菜を宣伝してほしいという相談があり、今年は、高知県産の野菜を使った料理教室を開き、高知県産品のPRのイベントを商店街全体でやったそうです。
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ガラス張りで中の様子が見える「食育ステーションIN大手町」
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食育ステーションを運営する「NPO法人 みんなの食育」の理事、加藤雅之さんは「今後は、地域の住民とか学校とか高齢者施設とか、一緒になって健康によい新しいメニュー開発に取り組みたいと考えています」と話します。「商店街が一方的に商品を提供するだけではなくて、住民の意向をふまえながら、地元の医療とも一緒に組んで新たなものを作っていってそれを飲食店で扱っていけるようにしよう」ということのようです。
「食育」というテーマで地域が盛り上がっていけば、「食育ステーション」という名前の通り、地域に根ざした「食と健康の情報発信基地」になっていくでしょう。