10年前に「山形」で始まった「だがしや楽校」が各地に広がっています。「楽校(がっこう)」とはいっても授業ではなく、放課後や土日を利用して、広場や公園などに「屋台形式」の店が出ます。店で売るものは地域によって様々。商店や学校の先生、親や大学生など地域の様々な人が関わっています。
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3月に横浜市立盲学校で行われた「出前だがしや楽校」 |
山口智子リポーターが取材したのは3月に横浜市立盲学校で開かれた「出前だがしや楽校」。放課後の「学校」に「だがしや」を出前するというもので、横浜市のNPO「教育支援協会」が3年前から市内の小学校で開いています。
横浜の「出前だがしや楽校」の特徴は本物のお金ではなく、「エコマネー」を使うこと。「エコマネー」は何かのご褒美として、例えば、家でお手伝いをしたり、ボランティアをしたりして、もらいます。
盲学校では小学部と中学部から、15人ほどの生徒が参加、「みんなで仲良く遊べたね」ということで、1人に10枚のエコマネーが渡されました。教育支援協会のスタッフ3人がお店を担当、テーブルには、1枚で買えるものから、3枚必要なものまで、40種類ぐらいのお菓子やおもちゃが並べられました。
お金の使い方を学ぶ「駄菓子屋」は、子供が初めて大人から「一人前」としてみてもらえる場所。子供たちは触りながら、持っているエコマネーをどう使うか、いろいろ頭を悩ませていました。中には「子供だけで買い物するのは初めて」、という子もいて、みんな1時間たっぷり楽しみ、満足いく買い物ができたようです。
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去年「パシフィコ横浜」で行われた「横浜だがしや楽校」 |
2006年度は76カ所で行われたという横浜の「出前だがしや楽校」。活動の中心となってきた「教育支援協会」の田中靖子さんは「視覚に障害があるからどうしようとか事前には考えていなかったんですが、その場になったら、スタッフも手を取って、一つ一つお菓子の説明をしました。そういうふれあいが、この楽校のいつも感動する所なんです」と話します。
昔は子供たちも、ご近所のおばちゃんおじちゃんやお年寄りとみんな顔見知り。大人も自分の子、他人の子関係なく、時には叱ったり、褒めたりと、地域で子供を育てていました。しかし今は地域のつながりも薄れて、そういう場がなかなかありません。「だがしや楽校」は新しい「ふれあい」が生まれる場。そしてそのよさを生かして、「子供たちに社会性を身につけてほしい」、ということから山形で始まったんです。
山形では土曜日に、実際にある「駄菓子屋」の前の公園で、けん玉や工作の教室を開いたり、手品を披露したりといった形で、卒業生達も協力して始まりました。今は県内50カ所以上で行われているということです。
大阪では、「子供の居場所作り」の活動として始まりましたが、人が集まれば、商店街の活性化にもつながるということで、地元の商店街も協力しています。
また「出前」を行っている横浜では年1回、数万人規模で来場者がある大きな「だがしや楽校」を開いています。的当てゲームや竹とんぼ作りなどおよそ30店の屋台が出ます。そして、参加する子供達は「エコマネー」をもらうためにお店の手伝いをしたり、場内整理などの「仕事」をするんです。
「最初は照れていても、しっかり挨拶ができるようになったりと自信をつけていくのがおもしろい」という田中さんは「子供たちが一人前に扱われることで、大人の方の子供観が変わっていくのが醍醐味」と話していました。
かつて子供は地域の中で育ちました。時代も社会も変わりましたが、その「良さ」を取り戻すきっかけに「だがしや楽校」はなっていくかもしれません。