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アイヌの民族楽器「トンコリ」 |
10月21日、東京・千代田区の東京国際フォーラムで「アイヌ文化フェスティバル」が開かれました。会場では歴史や文化の紹介、刺繍が入った着物や木彫りなど工芸品が展示され、民族舞踊やアイヌの楽器、トンコリとムックリの演奏が披露されました。
トンコリは長さ一メートルぐらい。基本的には5本の弦で、琴を細長くしたような楽器です。トドマツなどの木をくりぬいて作られ、女の人の体をイメージしているので、中心には魂にあたるガラス玉が入っています。5つの音の繰り返しで曲は構成され、「とても幻想的であたたかい音だなぁ」と取材した山口智子リポーターは感じたそうです。
ムックリは長さが15センチぐらい、幅が1センチぐらいの竹の板で、中央に切れ込みが入っています。ついているひもを引っ張って板をふるわせ、口の中で共鳴させます。ムックリは来場した人にもプレゼントされ、山口リポーターも生放送で演奏に挑戦しましたが、なかなか難しく、まだ練習が必要なようでした。
ムックリは「口琴」とも呼ばれ、昔は鳥のさえずりなど、自然界のものを音で表現して楽しんだそうです。女性が演奏する楽器だったということで、逢い引きの時、好きな男性を呼ぶために鳴らしたりもしたそうです。奏でる人のあごの形によってそれぞれの音があるので、自分の彼女の音かどうかを聞き分けて逢いに行ったそうです。
「アイヌ文化フェスティバル」でトンコリやムックリを演奏したのは星野工さんと娘の美希さん。星野さんは全国各地で演奏活動を行っていますが、「まだまだ日本中歩いていて、えっどこの人っ、ていう人が多いんです。こうやって演奏とか講演とかしながら、アイヌは日本の先住民だぞということも訴えたいし、苦労して生きてきたわけですから、自信もってアイヌだよ、と言える時代がくるように頑張って広めていきたいなぁと思っています」と話していました。
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「トンコリ」を演奏した星野工さんと美希さん |
この日会場を訪れたのは、年配の方から若い人まで、およそ1000人。子供連れの家族が多く、「子供が学校でアイヌの踊りをやったので、興味を持って来た」という人もいました。星野さんも子供たちに期待しているようで、「大人と違って素直だからそのまま言いますよね。えーこういう楽器もあったんだぁ、とか。そういう子供たちがいるということは、大人と違って将来的にも、アイヌじゃなくて、同じ人間として手をつないでいけるかなぁと思います」と話していました。
「先住民」としての権利がなかなか認められないアイヌ民族ですが、97年にはアイヌ文化の普及、啓発のため、「アイヌ文化振興法」ができました。民族としての誇りが尊重される社会を実現していこうという法律です。アイヌの文化が広まれば、日本の文化も多様になり、星野さんも話していたような「同じ人間として手をつなげる」社会に近づけるかもしれません。
星野さんは現在栃木県に住んでいますが、東京都内に住んでいるアイヌだけでも、以前東京都が行った調査でおよそ3000人ということですから、関東全体では、おそらくもっと多く住んでいるとみられます。
11月の始めには、東京・中野で「チャランケ祭り」が開催されました。アイヌと沖縄出身者が「東京に大勢いるのだから、一緒に祭りをして楽しもう」と始まったお祭りで、今年で13回目。アイヌと沖縄の踊りや音楽が楽しめ、アイヌ料理と沖縄料理の店も出ました。
また、東京駅の八重洲南口には「アイヌ文化交流センター」があります。歴史や文化の紹介、刺繍やトンコリの展示もあり、様々な講座も開かれています。