災害がおきた時、高齢者や障害者だけでなく、乳幼児も災害弱者としてとらえるようになり、乳幼児がいる家庭への支援が課題になっています。
 |
「育ちの森」が行ったアンケート調査結果 |
例えば、2004年10月の新潟県中越地震。「新潟市にいつ子育て支援センター 育ちの森」館長の椎谷照美さんは当時、現地で母親や子供たちの支援を行いました。また、乳幼児のいる母親216人にアンケートをとる方法で調査を行いました。
アンケートには、
- 水がないので、煮るとかそういうことが最初の1日2日は全くできなくて、離乳食に困った。
- おむつが足りなくて取り替える回数を減らして、おしりがかぶれてしまった。
- 子供が泣いたりすると周りの人に迷惑がかかるんじゃないか心配だった。
- 体育館に避難したが、歩き始めた頃で寝ている人のところに子供が行ってしまうので、困った。
というような声が寄せられています。小さい子供がいるお母さんだからこそ出てくる悩みです。
また、地震後に「用意しておけばよかった」と思ったものは、
- おむつと共に、おしり拭き。
- 靴(避難するとき、靴を持っていかない方が多いが、避難所ではずっと抱っこするわけにはいかない)。
- ミルク、使い捨てできるタイプの哺乳瓶、離乳食。
- 水とカセットコンロ………等々。
さらに
子供のお気に入りのおもちゃや絵本を挙げた方も多かったそうです。避難生活では、子供もストレスがたまります。子供の心を癒してくれるものがあった方がいいんです。
 |
「乳幼児のいる家庭の防災サロン」で、ハンカチを使った止血方法を習う |
新潟や神戸、福岡といった最近大きな地震があった地域だけでなく、地震を経験していない地域のお母さん達も防災に興味を持つようになっています。椎谷さんもいろんな所に呼ばれて話をする機会があるそうですが、その一つ、東京・世田谷の子育て支援グループ「amigo(アミーゴ)」が9月1日の防災の日に、「幼い子供のいるお母さん達を対象にした防災教室」を開いたので、山口智子リポーターが取材に行ってきました。
教室には0歳や1歳の子供を連れたお母さん達10人ほどが参加、日頃から備えておいた方が良いものが紹介されました。
また、参加者から反響が大きかったのが「おんぶをすること」。最近は子供を前で「だっこ」する方が主流。しかし、例えば子供が2人いると、逃げる時に2人は「だっこ」できないので、一人は手を引き、一人は「おんぶ」することになります。また、いろいろ荷物があって、両手を自由にしておきたい時も、「おんぶ」した方がよいということでした。
「おんぶ紐」のようなものがあると便利だということですが、アミーゴの教室では「さらし」をおんぶ紐がわりにする方法を実演していました。「おんぶ」に慣れていないお母さんたちも、「意外と楽にできる」という感想でしたし、おんぶされている子供たちもみんなご機嫌でした。ほとんどのお母さんが、妊婦の時に腹帯で「さらし」を使うので、捨てずに持ち出し袋の中にいれておくのがおすすめだと講師の方は話していました。
 |
「おんぶ」の練習をするお母さん |
この教室「乳幼児のいる家庭の防災サロン」は今年で4回目。初めてという方も、何度も参加したことがある方もいましたが、それぞれに新しい発見があったようです。
また、講師の方からは「近所の人と普段から仲良くして、自分の家には小さな子がいます、ということを知ってもらうのも大切だ」という話も出ていました。新潟の椎谷さんが集めた被災地のお母さん達の声の中にも、「近所の人たちと仲良くなれたことがすごく励みになった」という声が多かったそうです。ご近所付き合いを普段から心がけておくと、いざという時に大きな力になるようです。
乳幼児のいる家庭にとっては、家の中でできること、家の外でできること、いろいろありそうですし、支援する側もどういう支援が必要なのか、お母さんたちの声を元に考えることが求められています。