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子どもたちの歓迎を受けるモルドバ復興支援協会の会員たち |
ちょっと前に流行ったオゾンの「恋のマイアヒ」。曲を聴いたことはない、という人はあまりいないかもしれませんが、オゾンというグループの出身国は知らない人が多いかもしれません。
オゾンの出身国は旧ソビエトの「モルドバ共和国」。ルーマニアとウクライナに挟まれた九州ほどの小さな国土におよそ420万人が住んでいます。ルーマニア語の方言とされるモルドバ語を話すモルドバ人が6割以上ですが、ロシア人やウクライナ人、そのほかの少数民族もいます。
土地が豊かで、小麦や野菜や果物の生産が盛んな農業国です。特にぶどうから作るワインはヨーロッパでは有名だそうです。一方で、91年の独立直後には民族間の内戦もあり、経済的、社会的な混乱が続いていて、政府の財政も悪化。教育や福祉は行き届かない状況です。
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どこまでも緑のじゅうたんが続くモルドバの風景 |
そのモルドバの現状を知ろうと、現地視察の報告会が7月、東京・新宿区の早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターで開かれました。日本では「モルドバ復興支援協会」(事務局:神戸市)という団体が、バザーやチャリティコンサートなどで集めたお金を福祉施設などに送る活動をこれまで10年間、主に関西を中心に地道に続けてきました。自立のための支援で、送ったお金がちゃんと活用されているか、実際に会員が現地に見に行って確認しているんです。
今年も5月末から6月にかけて2週間、会員が訪れたんですが、報告会ではこれが初めての訪問となった早稲田大学理工学研究科修士1年の川村容子さんが報告しました。関東でこういう報告会が開かれるのは2回目のことです。
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インタビューに答える早稲田大学の川村容子さん |
川村さんは実際に行ってみた感想について「日本にいて、写真でみる限り、人の顔を見ると陰鬱な感じがしていたんですが、すごいホスピタリティーのある方たちで、歓迎してくださって、貧しさを感じさせないような明るさを持っていたのに驚きました。どこまでも続く緑の絨毯に青い空はとても美しく、こういう所に住んでいる方たちはすごく心がおおらかなのかな、という印象を受けました」と話します。そして、2週間の滞在にすぎないので、モルドバ人全体が、とはいえないかもしれませんが、可能性のある国だな、と思ったと、取材した崎山敏也記者に答えました。
モルドバには、「モルドバ復興支援協会」が一昨年、現地の人と協力して開いた「子どもデイケアセンター」があります。モルドバでは、親が出稼ぎのために、子どもを残して国を離れるケースが多いそうです。子どもは親戚に預けられますが、貧しくて学校に行けず、食事や衣服も満足にない状況で、人身売買の対象になる心配もあるんだそうです。そこで「子どもを保護し、勉強の機会を提供する」ために開かれたんです。
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早稲田大学のボランティアセンターで開かれた報告会 |
報告会では、民族衣装を来た子どもたちに歓迎される様子などをビデオで紹介しながら、20人を超える参加者にモルドバの現状を説明しました。モルドバのお茶とお菓子が出され、モルドバ語、つまりルーマニア語の詩の朗読もルーマニアの方が披露しました。
詩の朗読が行われたのは、川村さんは「ルーマニア語」の響きの「美しさ」に惹かれているからです。そして現地では、博物館や大学、劇場といった教育、芸術、学術に関わる施設も訪れたんですが、「皆さん自分たちの文化に誇りをすごく持っているんです」と川村さんは話します。日本人にとっては不思議に聞こえる歌詞が話題になったオゾンですが、CDの訳詞を見ると、「自分たちの言葉のような美しい歌を、いつまでも響かせよう」とか「自分たちの言葉、ルーマニア語を譲らない」という風に、ルーマニア語に誇りを持っていることをうかがわせます。
参加した学生の中には、将来国際支援の仕事につきたい、ボランティアに興味がある、といった方がいましたが、「正直モルドバについて何も知らなかったんですが、子どもたちのきらきらした目を見ていると、こういう人と笑顔を共有したいなあと、次のモチベーションにつながるなあ」と話す学生や、「ニュースに出てくるのは、先進国ばかりですが、いろんな国が世界にはあって、その国にはいいものもいいこともあるはずなのに、知らないのはもったいない、とあらためて思いました」と話す学生もいました。 川村さんは「すぐに一緒に何か始めるのでなくてもいいから、慌てずに前に進んで行きたい」と話していました。
今後のことですが、これまで「モルドバ復興支援協会」が続けてきた自立支援の輪を広げる活動を続け、
現地にも行って、今度は子どもたちとゆっくり過ごしたい、という川村さんですが、その一方、学生の自分にできることとして、文化的な交流に取り組みたいと話します。
具体的には詩の朗読会や、美しい刺繍のワークショップを開いてモルドバの文化について知ってもらうこと。それから、ヨーロッパ各地でも水準の高さを認められている国立イヨネスコ劇場という劇団があるので、その公演を早稲田大学で開きたいそうです。8月初めに、劇団の監督が来日し、早稲田大学を見学した際には川村さんも会って、あらためて交流をお願いしたということです。
今後の支援の輪の広がりと日本とモルドバの文化交流、どちらにも期待したいですね。
関連情報・お問い合わせ先
- モルドバ復興支援協会
http://www.interq.or.jp/white/mirage-k/