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傾聴ボランティアと一緒に話を聞く中村キャスター |
「相手の話にじっくりと耳を傾ける」傾聴ボランティアが、主に高齢者を相手に、ここ数年盛んになっています。最近は各地でボランティア養成講座も開かれていて、修了者がボランティアとして活動しています。
東京・荒川区で活動する「ダンボの会」のメンバー2人に中村愛美・情報キャスターが同行しました。
古いマンションの3階、1人暮らしの70代前半の女性が住む一室を、ボランティアの左田野さん、只野さんと共に訪ねました。奥のたたみの部屋に通されると、仏壇が目に入り、箪笥の上にはお孫さんの写真が置いてあります。この日は、そのお孫さんがもうすぐ七五三で、着物を買ったという話や、足を運ぼうと思っている地域のコンサートのことなどが話題になりました。 左田野さんと只野さんは「うん、うん」と相づちをうちながら聞いていて、1時間の予定が、気がついたら2時間たっていました。
女性は「二人が2週間に1回来るのが、とても楽しみです」と話します。また「ちょうどいいんです。年が近いんで、話があうんです」とも話していました。左田野さんと女性は同年代、只野さんは少し下です。「ダンボの会」全体でも60歳前後の方が多いんです。左田野さんは「時代がずれていないから、終戦当時の話や、子どもの頃の話など話題はけっこうあるんです」と話していました。
女性の娘さんの家族は近くに住んでいて、娘さんとは毎日電話で一回話すようにしていますし、病院にも通っていますので、全く孤独というわけではありません。しかし、基本的には1人で過ごす時間が長く、傾聴ボランティアの二人が良い話し相手になっているようです。「ダンボの会」の代表もつとめる左田野さんは「1日に3人と挨拶をかわしたら元気に生活できるって言われてるらしいんですが、例えばヘルパーさんが通っている方でも、お話をしてたら仕事にならないから、実際にはあまりヘルパーさんと話はできません。私たちが訪問する中には、ほとんど人と話すことのない生活をしていらっしゃる方、もう1年も2年も同じ話をされてる方もいます。でもそうでしたか、そうでしたかって聞くだけでいいんです」と強調します。
傾聴ボランティアは、自分の意見をいったり、押しつけたりしません。何か本当に困ったことや不満がある場合は、ボランティア自身で解決しようとせずに、社会福祉協議会や民生委員の方に伝えて、対応してもらうんです。また、話のきっかけを作るために個人的なことを聞き出すこともありません。ひたすら昔話などを聞いているうちに、信頼関係が生まれるんです。この日訪問した女性も、訪問を続けて3年たつうちに、ご自分から 亡くなった家族の話などするようになったということです。
荒川区では、話し相手がいなくて孤独を感じている1人暮らしの高齢者が多いことが4年前の調査で明らかになりました。そこで、社会福祉協議会が「傾聴ボランティア」の養成講座を始め、「ダンボの会」が講座を終了した人たちから生まれたんです。
現在メンバーは34人。うち男性は3人で、ほとんどが女性です。只野さんは講座を受けたきっかけについて、「ちょうど子供も成長して手が離れたし、身体は健康だし、そろそろ人様のお役に立つようなことをしたらいいんじゃないかなという気持ちはありました。じゃあ自分にできることって何だろうって考えたら、人の話を聞くのが好きですから、やってみようかなと思ったんです」と話します。只野さんのようなきっかけの方がメンバーの中にも多いようです。
もちろん、「話を聞く」というのは簡単なようで、難しいこともあります。只野さんは「いい話にしろ、悪い話にしろ、人の話を全部受け入れるということは、ものすごく重いことです。だからそれを自分のストレスにならないように気をつけなければいけないということと、話を聞くには、心身共に健康でなければいけないっていう、そういう意味で突き詰めていけば、自分自身の為にやっているという感じがします」と話していました。
「聞く」方にも「聞かれる」方にも生きる元気を与える「傾聴ボランティア」。「ダンボの会」代表の左田野さんは、「これから団塊の世代でボランティアにさく時間を持てる人が男性も女性もどっと増えると思うので、期待している」と話していました。ただ、簡単そうだから、なんとなくやるというのは困るので、やる気のある方が集まるような工夫もしたいといろいろ考えているということでした。