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地域に開かれたお寺を目指す善了寺の本堂 |
お年寄りがお風呂や食事のサービスを受けられるデイサービス。最近、自宅を開放したり、銭湯で行ったり、古民家を利用したりと、デイサービスも多様化しています。
綾部峰雪・情報キャスターが取材したのは横浜市戸塚区にある浄土真宗本願寺派「善了寺」。JR戸塚駅近くの小高い丘の上にあるんですが、入り口には「デイサービス 還る家ともに」と大きく書いた看板が立っています。
境内の一角にある住職の一家が生活する建物の1階でデイサービスは行われています。普通の住宅で、定員は1日10人と小規模。取材した日は利用者さんと、ボランティアを含めたスタッフの方、そしてご住職夫妻が綾部キャスターを笑顔で出迎えてくれました。
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綾部キャスターのインタビューに答える成田住職 |
朝、迎えの車で到着すると、まず体調チェックと軽い体操。その後は、お昼ご飯とおやつ、お風呂以外は、自由時間です。ゲームをしたり、折り紙や将棋、カラオケをしたり、お天気のいい日は、自然いっぱいの境内を散歩したり…。何かリハビリや訓練に取り組むというよりは、そのときの利用者の方の体調や気分に合わせながら、何をして「楽しむ」かを決めますが、取材した日は綾部キャスターも加わり、もっぱらおしゃべりに花が咲いていました。
「とても家族的でいいですよ。ここで皆とおしゃべりしてるの」「年も年だしね、あちこち痛くてしょうがないんだけど、ここへ来るとね、痛いの忘れちゃうの」とアットホームな雰囲気が伝わってきます。皆さん一日おきぐらいに利用するリピーター。家で1人でいるよりも、こちらにきて皆と楽しくやりたい、ということのようです。食事の時は、利用者もスタッフやボランティアと一緒に配膳や片づけを手伝っていました。
一日の終わりは読経です。約1年前に始めた頃は、利用者も檀家さんが多く、「デイサービスに行くんだったら、その時お墓参りにもなるから」と要望が出たそうです。その後、檀家さんの紹介で、檀家さんではない利用者も増えていますが、読経は続いています。もちろん無理強いしたりはしません。この日はご住職が不在で、奥さまが読みましたが、時には小学生の息子さんが読むことも。
お寺が運営する介護施設は全国に探せばあるんですが、神奈川県では善了寺が初めて。成田智信住職は「還る家の還るって、いう字は、もといた場所にぐるっと回って戻ってくるという意味なんですね。そういう安心した場所があれば、外に出ていろんなつらいことがあってもまたぐるっと帰ってこれるじゃないか。あなたがきてくれることを皆が喜んで迎えてくれるそんな空間にしたいんです」と話します。
この日来ていた男性の方は、ちょうど入院生活が終わったばかりだったんですが、「あなたの笑顔がまた見られて嬉しい」と皆さん大歓迎。お昼ご飯は、男性の大好物のカレーで、奥さまが腕をふるいました。BGMはご住職の演出で、男性の方が大好きな石原裕次郎でした。本当に「還る場所」だなあ、と綾部キャスターは感じました。
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スタッフ、住職夫妻も交えて、楽しいおしゃべり |
ご住職は以前、富山にあるお寺のデイサービスを見学した時、「これが本来のお寺のあり方だよな」と思い、「地域の中で高齢者が孤立するのを防ぐ役割を果たしたい」と思うようになったそうです。「還る家ともに」の「ともに」の方には、地域の皆さんと「ともに」歩んでいきたい、地域に「開かれた」お寺にしたい、というご住職の考えが込められています。
本堂では、育児中のお母さんが孤立するのを助けようと、「子育てサークル」も開かれていて、子どもたちがお年寄りの所に遊びに来ることもよくあるそうです。また医療関係の方の協力も得て、肉親を失った方が集まって自分の思いを話しあう「悲嘆回復サークル」も開かれています。境内では散歩や体操、子供会の活動だけでなく、時にはジャズやクラシックのコンサート。世代の違いや立場の違いを超えた地域の人々の交流の場になっているんですね。
地域にコミュニティがなくなりかけていて、それを再生するための様々な試みが行われていますが、善了寺のような仏教からのアプローチも注目されますし、ニーズに応じて多様化している介護サービスのあり方にも「お寺のデイサービス」はヒントを与えてくれそうです。