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日本語教室では新宿虹の会のボランティアが先生をつとめる |
外国人が多く住む街、東京・新宿区。大久保小学校では、月2回、土曜日に「外国人が親子で参加する」日本語教室が開かれています。
2004年に、母親がマレーシア人の女子中学生が中国籍の男の子をマンションから突き落とすという事件が区内でおきました。この中学生は「周囲との関係作りがうまくできていない」状況だったということです。一般的に、外国人の子どもは小学校に通うようになると、親よりも日本語に触れる機会が多いため、親よりも日本語ができるようになることがあります。親子の間のコミュニケーション不足につながることもあるので、この事件をきっかけに文化庁が「親子向けの日本語教室」を企画したんです。
文化庁は新宿文化・国際交流財団に運営を委託、「外国人を何らかの方法で助けたい」と考えていた区内のボランティア団体「新宿虹の会」のメンバーが先生となって2年前にスタートしました。
山口智子リポーターが取材した日は中国や韓国など7カ国の親子、40人ほどが参加。「買い物へ行く」というテーマで授業が行われていました。スーパーのチラシを切り取って作った野菜や果物を、手作りのお金を使って、買いに行く練習をします。
月2回の教室ですが、毎回は来られない方もいるので、回ごとにレベルを上げるのではなく、毎回完結型。生活に密着したテーマを選んで、実践的に「日常生活に必要なことば」を学びます。テーマは「病院に行く」「電車に乗って出かける」など日常生活ですぐに使える内容です。また季節に応じて、盆踊りやお正月遊びをしたり、自分の国の料理を披露するパーティなどのイベントも行っています。
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スーパーのチラシを使って、買い物の時に必要な言葉を勉強 |
ウクライナ出身の方1人とフィリピン出身の方2人に話を聞きますと、皆さん「子どもは日本語上手いけど、私は下手。上手くなりたいから頑張ります」と勉強への熱意を語る一方で、「色々な国の人と付き合いができるので、とっても楽しい」と答えていました。
また台湾出身の方は「一番感謝したいのは、とてもやさしく接してくれることですね。それに、ここにくると、仲間がたくさんいるような気がします」と話します。ただの「語学教室」ではなく、「居場所」にもなっているようです。
「虹の会」代表の小林普子さんは、「日本人はあんまり慣れていないんだけど、ここに来るとハグをしたり、されたり。こちらがオープンにして、受け入れる雰囲気を作ることを心がけています」と話します。
ガーナ、タイ、ウクライナの出身の方たちは、最初はお互いに「英語」で話していたそうですが、今は「日本語」で話すようになりました。教室がお休みの間は「私どこに行けばいいの?」と聞いてくる方もいるそうですし、出産でやむをえず、教室をいったんやめた方が、また戻ってきたときは小林さんはとても嬉しかったそうです。
街で会えば挨拶をしたり、立ち話をしますし、子供の勉強をみてあげたり、パソコンの使い方を教えたり、いろんな付き合いがうまれているようです。今年の夏には、初めて地域の縁日にも教室の生徒達がテントを出して参加することにもなったそうです。
日本人、外国人双方が住みやすい「街づくり」につながってゆけばいいなあ、と山口リポーターは感じた取材でした。