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「フリージア」代表の後藤さんにインタビューする綾部キャスター |
東京・荒川区の「あらかわ遊園」に週末行きますと、ゲートを抜けてすぐ左手から焼きたてのパンの香りが漂ってきます。そこには「フリージア号」とペイントされた一台のキャンピングカーが止まっていて、4〜5人のスタッフがパンを焼き、売っています。
この「移動式パン工房フリージア」は、障害者に働く場を提供しようという荒川区のNPO「フリージア」が3月にオープンしたんです。
「フリージア」代表の後藤潔さんは「知的障害者や精神障害者にとっては、働く場を見つけるのが難しいのが現状。だったら、よそに働きに行くのではなくて、自分たちで始めたらどうだろうということで、この事業を考え出しました」と話します。後藤さんのお子さんも軽度の知的障害があることから、これまで障害者の支援にいろいろ取り組んできたんですが、子どもたちの将来のことも考えてのことのようです。
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焼きたてパンをいただきました! |
障害者が働くパン屋さんは各地にありますが、「移動式」というのは都内で初めての試み。全国でも初めてかもしれません。最初は店舗を構えて、「パン屋」を開業しようと考えたんですが、区内にいい場所がなかったり、資金の都合もあって、苦肉の策で「移動式」になったんです。でも「移動式」だと、季節の移り変わりも味わえるし、場所によって様々な顔ぶれのお客さんに出会えます。
「あらかわ遊園」内に漂う焼きたてパンの香りに、お客さんが集まってきます。「あらかわ遊園」は区立で入園料がお手頃。すっかりリピーターになった方もいるようです。
売っているのはメロンパン、あんパン、カレーパンにアップルパイなど15種類。値段はいずれも130円。5月のゴールデンウィーク期間中、お天気のいい日は大盛況で、 焼いた片端からどんどんパンが売れていく状況だったそうです。
スタッフには「フリージア号」専任の方のほか、区内の福祉作業所から交代で来ている方もいます。
お二人の方に話を聞くと、販売担当の方は「作業所では座ってばっかりなので、ここでパンを売るのは楽しいです。売れると嬉しいです」と話、パンを焼く担当の方は「お客さんと話すのはちょっと苦手だけど、パンを焼くのは大好きになりました。焼き加減がなかなか難しいです」と話していました。
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荒川区役所前でオープン |
現在、土日祝日は荒川遊園。水曜日に都電三ノ輪橋駅近くで営業しています。また5月17日からは木曜日に荒川区役所前で開業。区内の精神障害者の通所施設から二人の方が来て、賢明に働いていました。「フリージア」はさらに営業日を増やして、目標の利益を上げようとしています。
後藤さんは「僕らの目標は、障害者がパンを焼いて売って、お金をもらって、それで自分の生計を立てていくことです」と話します。福祉作業所ではだいたい月1万円くらいの収入しかならないことがほとんどです。障害年金はありますが、それだけでは、親が亡くなった時、荒川区内で1人で暮らしていくのは難しいのが現状。働いて稼いで、親がいなくても生きていける、つまり「自立」のための「パン屋」なんですね。
「フリージア」の目標は1人1月10万円の収入。営業場所を増やして、利益を確保し続けなくてはいけないので、協力や寄付を募っています。区内の企業などで昼食用にまとまった注文などがあれば、と後藤さんは話していました。