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大林組の特例子会社「オークフレンドリーサービス」のオフィス |
障害者の雇用の場を広げるために、最近、「特例子会社」を作る企業が増えています。
障害者雇用促進法では、従業員56人以上の民間企業は、全体の1.8%以上障害者を雇うことが義務付けられています。しかし達成できない企業がまだまだ多い状況です。そこで「子会社」が障害者を雇うと、親会社の雇用とみなせるようにしたのが、「特例子会社」です。
鳥山穣記者が取材したのは東京・墨田区の「大林組」の特例子会社「オーク・フレンドリーサービス」。現在25人の知的障害者が、3つの事業所に分かれ、4人の健常者スタッフとともに大林組のオフィスや研修施設の清掃、郵便物の仕分け、図面をコピーする仕事など大きく分けて三つの仕事をしています。
「オークフレンドリーサービス」の中島顕業務部長は「仕事の種類は何でもいいというわけではなく、障害者にあった仕事を探していきます。できそうなものをやらせてみたり、他の特例子会社を参考にして仕事や人数を増やしてきました」と話します。5年前の設立当時は6人でしたが、現在は20代から40代の知的障害者が25人働いています。
取材した日は、仕事を始めておよそ1年半という清掃などを担当している女性が、大林組の研修施設の寝室のベッドメイキングをしていたので、話を聞きました。
前職では12年間アパレル業の配送や事務を担当したということですが、今の仕事については「仕事を覚えるのが難しかったですが、経験の無い事を学べて良かった」と
喜びを語ってくれました。
また、この女性とペアを組んでいた健常者の女性は「仕事が独り立ちできるようになるまで確かに時間はかかるが、仕事を覚えた今となっては重要な戦力。特例子会社で働く彼ら、彼女ら抜きでは仕事が成り立たない」と話していました。
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研修施設で黙々と働く |
そしてもう一人、5年前の設立時から働いている自閉症の男性の仕事ぶりも見てきたのですが、研修施設の浴場で、ペアを組んでいる健常者の男性が浴室を担当、彼は一人で脱衣所を隅々まで黙々と掃除していました。浴室が終わると、今度は会議室や廊下に大きな掃除機をかける作業。「一連の仕事を自分のペースで確実にこなしていっているな」という鳥山記者の感想でした。
研修施設の職員の方も「仕事を覚えるまでに時間がかかるが、覚えたら、絶対に手を抜かない」と働きぶりに感心していました。
それぞれの個性やペースに配慮すれば、いろいろな仕事が見つかり、またできるようになる好例ではないでしょうか。
このように、特例子会社は、仕事上の指導や助言もそれぞれの障害に合わせてきめ細かくできますし、障害者を集中して雇うことで設備や健康管理などに配慮して、働く環境を整えることができます。
中島部長も「周りに仲間もいますし、環境としても過ごしやすい。親会社の職場に入ると、健常者の中に一人ぽつんといることもあり、うまくいかない心配があります」と話します。
そして、「雇用率の数字を達成するために仕事もないのにただ雇うだけでは意味がない。仲間といっしょに働けると意欲も出るので、仕事の種類ももう少し増やし、少しでも多くの障害者に働く場を提供できれば。」と話していました。
東京労働局の調べでは、「特例子会社」は、去年の11月の時点で、全国に180社。
親会社の業種によって仕事も多彩になってきています。
民間企業の障害者雇用率は去年の時点でまだ1.49%。「特例子会社」が増えることで、障害者の仕事の種類が増え、働く人数も増え、結果として、企業が雇用率を達成できれば一番いい形かもしれません。