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大学案内 障害者版 2005 |
「大学案内障害者版2005」という本があります。障害を持つスタッフが運営する「全国障害学生支援センター」(神奈川県・相模原市)という非営利の民間団体が発行しています。
センターによりますと、全国では毎年およそ3千人の障害を持つ学生=「障害学生」が大学を受験し、およそ500人が入学しています。最近の傾向としては、障害学生の在籍者数は大幅に増えているが、在籍する大学の数はあまり増えていないということで、大学をめざす障害者は増えても、受験できる大学は増えていない、ということになります。
文部科学省は各大学へ通知する要項で、障害者の受験への「配慮」を求めています。しかし「義務」ではないので、「受験を認めない」大学もまだまだ多いのです。
また、センターの事務局長、西村伸子さんは「聴覚に障害を持つ学生が、受験は認められたけど、英語のリスニング試験分は減点されると言われたことがあります。そうすると、他の部分が満点でもとうてい受からない。結局受験を断念したそうです」と話します。受験は認めても、配慮がなかったり、合格はしても大学生活を送る上でのサポートが不十分な大学も多いんです。
せンターでは、2〜3年おきに全国の大学に調査を実施して、「大学案内障害者版」を発行、2005年版には、およそ半数、373の大学から回答がありました。
掲載されている情報は
1、障害に応じた受験の可否
2、受験の時の配慮。(例えば、視覚障害者には、点字や拡大文字で試験が可能か?聴覚障害者には、手話通訳をつけることが認められるか?試験では注意事項などを文書で伝えてもらえるか?手足などに障害がある場合は、介助者の付き添いが認められるか?手が使えない時は、パソコンや代筆による回答が認められるか?等々………
入学後の情報も載っています。
3、車椅子対応のエレベーターやトイレ、点字の案内図といった設備や補助機器の情報や、ノートを取る人や介助者をつけてもらえるか?テキストを点字や拡大文字にしてもらえるか、等々……
4、障害学生が相談する専門の窓口の有無、大学への交通機関の情報や、学生寮や下宿の情報、等々………
情報は「全国障害学生支援センター」のHPで検索して調べることもできます。
また、情報提供だけでなく、障害学生や高校の先生、大学側からの相談に応じています。最初の問い合わせは無料、予約相談は有料です。
学生と大学の間に立って、解決策をさぐることが多いんですが、特に、受け入れ実績のない大学は、とまどうことも多いという西村さんは「大学側も障害を持つ当事者側も話し合って行ける場を作ってゆきたい」と話します。一つ一つ「話し合い」で詰めていけば、難しくないこともけっこうあるそうです。
障害学生が1人入学したことがきっかけで、入学する障害学生が次々と増え、最初の人のために作られた配慮や設備のシステムが充実して、誰が入学しても、同じ対応ができるようになった大学もあるということなので、大学側が「一歩踏み出す」ことが大事だといえそうです。
また、西村さんは「すぐできることだけでなく、人やお金が必要なことも多いので、 一大学の問題にせず、国がバックアップする体制もあれば」と話していました。
バリアフリーという言葉は普通に使われるようになりましたが、「広く開かれた学びの場」であるはずの大学がまだまだ閉ざされています。障害のあるなしに関わらず、全ての大学で「学びたい人」が「入試に挑戦できて、学ぶことができる」ようになってほしいですね。
関連情報・お問い合わせ先
- 全国障害学生支援センター
http://www.nscsd.jp/