認知症予防のため、各地で様々な取り組みが行われていますが、「街ぐるみで認知症予防に取り組む先駆的な事例」として知られているのが、東京・豊島区の「元気!ながさきの会」です。豊島区長崎の周辺に住む171人が、太極拳、料理、パソコン、園芸、旅行など12の部会に分かれて活動を行っています。
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「元気!ながさきの会」の伊藤副代表にインタビューする綾部キャスター |
豊島区は65歳以上の高齢者の割合が2割近く。認知症などで介護が必要な人も多く住んでいます。そこで、楽しみながら認知症の予防に取り組もうと、「元気!ながさきの会」は5年前に発足し、豊島区と東京都老人総合研究所の指導を受けながら活動を続けてきました。
綾部峰雪・情報キャスターが取材したのは、月曜の午前中に長崎第三集会所で行われている「フィットネス」部会。20人ほどが1時間にわたって、筋肉を伸ばすストレッチや、膝を伸ばしたり、つま先で立ったり、といった体操に励んでいました。綾部キャスターも加わったのですが、ゆっくりと何度も手足を上げ下げするのは、けっこうきつくて、途中でへばりぎみ。でも、参加者の誰かしらが手取り足取り教えてくれたので、あっという間に輪に溶け込むことができました。
休憩時間にはあちこちでおしゃべりに花が咲きます。会全体の平均年齢は74.5歳。60歳以上とは言っても、「実際の年齢より見た目が10歳以上若い人ばかり」と感じた綾部キャスターでした。
テレビや雑誌などを参考に新しい運動を考えるなど、メンバーが飽きないように工夫されていますし、初めは体操も6種類だったんですが、自分たちで増やしていって、今では20種類くらいあるそうです。つまり、自分たちで色々決めているんです。
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「元気!ながさきの会」フィットネス部会の様子 |
これが「元気!ながさきの会」の特徴。つまり会員自らが、認知症予防の自覚を持って活動に取り組んでいます。活動を始めた頃は、老人総合研究所から専門の指導者が派遣されていましたが、今はほぼ「自主運営」。フィットネスでインストラクターをしているのも、ベテランの会員の方です。パソコンでも、できるようになった人がインストラクターになっています。
「元気!ながさきの会」副代表の伊藤登さんに話しを伺うと、「仲間と楽しく活動を行うことで元気になって、生活にハリが生まれます。そこでおしまいではなく、その次は、指導者になったり、仲間と話し合いながら、活動を企画、運営していく」ということです。身体だけではなく「脳」をよく使うことになり、会のそもそもの目的である「認知症の予防」につながっていくんですね。このほかには例えば旅行の部会でも、ただ旅行に連れて行ってもらうのではなく、旅行の計画から電車の切符の購入まで、全部自分たちでやるんです。
しかも、地元・長崎に根ざした活動であるということも大事なポイント。伊藤さんは「いかに地域に自分たちができることを提供できるかっていうのが、これからの街づくりの基本です。街にはいろんな人材=眠っている財産がいっぱいいます。元気な人がどんどん手伝ってもらえれば街は絶対に活性化できると自信を持っています」と話します。
「第ニの人生」を自分のためだけじゃなく、地域のために貢献していこうとする、街づくりには頼もしいパワー、きっと活性化につながるでしょう。今や「パイオニア」的存在の「元気!ながさきの会」のメンバーは各地から講演に呼ばれ、ノウハウを伝えているということです。