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集まったリボンで作ったキルトと千代田区男女共同参画センターMIWの高野章子さん |
「リボン」をシンボルにしてメッセージを伝える運動が最近、日本でも広がっています。エイズへの理解を訴える「レッドリボン」や、乳ガンの早期発見、治療を訴える「ピンクリボン」などがありますが、DV=ドメスティックバイオレンスなど女性に対する暴力防止を訴えるシンボルとして「パープルリボン」、つまり紫色のリボンをつける運動がアメリカから世界に、そして日本にも広がりつつあります。
東京・千代田区の「男女共同参画センターMIW」では、去年の11月、リボンを作ってもらって、MIWに置いてある箱に入れてもらうという方法で、「パープルリボン」の運動に参加しました。置いてあるリボンを丸くよじり、交差させて、重なったところをホチキスなどで止めてできあがり。あとは募集箱に入れるだけです。
MIWの高野章子さんは「女性への暴力の問題というと、どこか遠くの、被害にあっている人だけの問題、自分の周りにある問題ではないという風に思いがちです。しかしデータによれば、5人に1人の女性が何らかの暴力を受けたことがある。暴力の問題に関心のない人にも少しでも知っていただくきっかけを作りたかった」と話します。リボンを集めるという方法にしたのは、暴力防止という強いメッセージを出すよりも、ビジュアルに、あれなんだろう、と興味を持つところから入ってもらいたかったからだそうです。
MIWにはとりあえず11月いっぱい箱を置いたほか、千代田区内の図書館、児童家庭支援センターなどの公共施設や大学、YWCAやアムネスティといった民間の支援機関が協力しました。12月までに集まったリボンは450個。予想を上回る反響だったそうです。
なかでも、千代田区内にキャンパスがある共立女子大学・短期大学は人権週間の行事に合わせて、キャンパス内の3カ所に2週間、箱を置いたんですが、140個、全体のほぼ3分の1のリボンが集まりました。共立女子大学・短期大学学生課の沢崎靖英さんは当初、「学生に人権問題に興味を持ってもらうのは難しいな」と感じていたようですが、「ここまで反響があるとは驚きだった」ということです。「学生たちは無関心というわけではなく、優しい気持ちは持っている。ほんの少しの時間で取り組めるものだったから、関心を持ってもらえたのでは」と話します。
予想以上の反響を受けて、MIWでは、リボンとメッセージの募集を今も続けています。また、集まったリボンは職員が手作りで縫いつけて、大きな「キルト」を2つ作りました。このキルトは1月のYWCAを皮切りに貸し出して、暴力防止を訴えようと考えています。
この取り組みを知って、大田区の男女平等推進センターでもリボンの募集を始めたそうですし、杉並区の司法書士会では、「配布物にリボンを付ける」という方法で、広めるそうです。
リボンを身につけたりするのはちょっと抵抗があるという方には、パープルリボンを印刷したオリジナルのブックカバーがあります。MIWのホームページからダウンロードすることもできます。
実際に暴力の被害で悩んでいる人にとっては、リボンをつけた人や、この「ブックカバー」を持った人を見かけると、「あなたの周りに味方はいますよ」というメッセージにもなります。暴力の被害に悩んでいる方で、実際に相談する方は少ないということなので、MIWの高野さんはぜひ男女共同参画センターなどの相談機関に相談してほしいと話していました。