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買い物は真剣 |
東京・世田谷区に、定年退職後の男たちが昼間っから集まって、なにやら楽しんでいるところがあります。ほうれん草をゆでたり、魚をさばいたり……。
世田谷区の「松原ふれあいの家」で開かれているのはミニデイ「おとこの台所」。材料の買い出しから始まり、わいわいがやがや作って、最後は一杯飲みながらお昼ご飯。池田亜希子・情報キャスターが取材した日のメニューは、「カブとアンチョビーのグリル」、「ジャガイモと塩鱈のサフラン煮」、「蓮根とホタテと栗の蒸し物」でした。
なぜ定年後に料理教室なのか?ある人は「自分は包丁一つ使えない。コンビニばかりで買っているので、自分1人になったら困るから」と話しますし、またある人は「リタイアした男たちを何とか地域社会に引っ張り出そうというのが目的。何もできないやつが死んだら、生きていけるかどうか、と女房も心配しています」と話します。
区内には高齢者が気軽に立ち寄って交流できる場は色々ありますが、参加者のほとんどは女性だそうです。「料理教室」への参加という形で、なかなか地域社会に出てこない定年退職後の男性を引っ張り出そうと、世田谷社会福祉センターが中心になって3年半前に設けたんです。
最初は4人。それがビラ配りや口コミで広がって今や31人。下は62、3歳から上は77、8歳までと年齢もかつての仕事も様々。大体第1か第3金曜日のいずれか月1回、一回500円の会費で、好きな時に参加しています。
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調理中も会話が絶えない「おとこの台所」のメンバー |
はじめのうちは、スーパーの何処に何があるか分からなくて買い物に1時間もかかったり、エプロンの紐が後ろで結べないとか、包丁を持ったことが無いとか大騒ぎで、お昼ご飯になかなかありつけないこともあったそうですが、今は、皆さんそれぞれにこの活動を楽しんでいるようです。
先生役を務めているのは、定年退職仲間の1人で、料理が趣味という龍さん。龍さんのレシピはいつもオリジナルで、あまり主婦は作らない「こった」ものが多いので、「奥さんの友達が遊びに来たときには、自分がシェフになってご馳走しちゃうんだ」と話す方もいました。また去年の4月からは、地域の人をお昼に招待したり、時には、足の悪い人のお宅に出向いていって美味しい料理と楽しいおしゃべりを提供する「出前シェフ」という活動もしています。
順調な活動を続ける「おとこの台所」ですが、最近はこの活動が「介護予防」になるのでは、ということで注目されています。
介護関連の講演に呼ばれることもあるという代表の小竹智久さんは、「料理は介護予防にすごく良いらしいです」と話します。「手を使うでしょ。頭使うでしょ。ボケッとしていたらろくなものが出来ないでしょ。その後歓談。これがまた、素晴らしい。世界が違うからね、色んな話が出るわけですよ」。
また、食事をシッカリすると「栄養不足」にもならないし、「出前シェフ」などの活動で、さらに多くの人とコミュニケーションをとるから、「元気であり続ける」ことができるんです。
東京都老人総合研究所などでは、「介護予防」の観点から、各地にこういう集まりを広げてゆきたいと考えているようです。「定年退職後も元気な男性」がどんどん増えて行きそうですね。