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マップ作りのため、街を調べて回る明正小の子供たち |
子供がターゲットとなる犯罪が多発する中、最近新しい試みとして「地域安全マップ」が注目されています。
東京・中央区の明正小学校では2005年の10月に、3年生を対象とした授業の一環として「地域安全マップ」作りが行われました。これまでの「安全マップ」は、以前、犯罪が発生したり、不審者が出没した場所を大人が地図の中に書き込み、子供に注意を促すためのもの。これに対し、「地域安全マップ」は子どもたち自身で「犯罪が起こりやすい場所」を調べます。
子どもたちが危険な場所を判断するための要素は2つ。「入りやすい」。そして「見えにくい」。具体的には子どもの背丈だと隠れるほどの垣根や、入り組んだ路地、ビルとビルの合間、駐車場に並んだ車の間といった場所です。また、放置自転車がたくさんあったり、ゴミが散乱しているような場所も地域の人の関心の薄い場所ということで、危険だということです。
明正小の3年生の子どもたちはこの日、7〜8人のグループに分かれ、写真を撮る係や、「危ない場所」の状況を記録する係など役割を分担して、学校の周辺を1時間半ほどかけて歩き回りました。「お昼前の時間に街を歩くのは初めてで、危険な場所がこんなにあるとは思わなかった」とか「真っ暗で人通りも少なくて、犯人も隠れやすそうなところがいっぱいあった」と感想を話していました。また、見るだけではわからないことは、商店や工場の人に自分でインタビューして補っていました。
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教室で安全マップ作り
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東京都の青少年・治安対策本部では、この「地域安全マップ」に注目して、地図作成の指導員を育成したり、学校に派遣することに力を入れています。指導員になるのは教職員や区や市の職員、地域のボランティアが中心です。
取材したクラスの担任で、指導員でもある、柳田美佳先生は「子どもたちが自分でつくることによって、自分の身は自分で守ること、そして危険な場所を認知できるようになりますね」と話します。「危ないところには近づかない」という意識を自分の力で身につけるわけです。普段から意識していれば、より安全な道を選ぶようになるし、
危険な所を通るときには、友達と一緒に行動したり、いつもより注意力を高めて行動するようになるというわけです。
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「地域安全マップ」についてインタビューに答える担任の柳田先生 |
子どもたちは学校に戻ると、模造紙に、学校周辺の道路と主な施設を書き込み、どうして危険な場所なのかというコメントを書き込んだり、現場の写真を貼り付けたりと、マップ作りに取り組みました。完成したマップは全校集会で発表した後、廊下の掲示板に貼って、他の学年の児童にも見てもらっているそうです。
また柳田先生によりますと、「地域安全マップ」には、もう一つ効果があります。地域の人たちと触れ合う機会があまりない子どもたちですが、顔も知ってもらえて、お互い声も交わせる仲になるきっかけになるんです。子どもたちが地域の大人と話す機会も増え、「地域の総合的な防犯力」が高まるというわけです。
東京都では、200名以上がすでに研修を修了していて、今後は、学校や自治会などから要望があれば、派遣する事業を積極的に推進する方針です。