 |
9月に行われた桜葬墓地の見学会 |
樹木を「墓標」にする「樹木葬」が各地で広がっています。その「樹木葬」で墓標に「桜の木」を使うのが、「桜葬」。死と葬送に関する情報を提供している東京・世田谷区の市民団体「エンディングセンター」(http://www.endingcenter.com/)が2005年の4月、東京・町田市に「桜葬」の「モデル墓地」を作りました。
「桜葬」墓地は霊園「町田いずみメモリアル」の一角にあります。すぐそばにはかつて新撰組が剣術の出稽古に向かうために通ったという小道が そのまま残っていたりと、自然いっぱいで、遠くには横浜の町並みも見渡せます。
霊園の一角には楕円形の芝生に桜が3本。これが墓標です。これから、横に枝が延びると、3本で芝生の上を全部覆うようになるそうです。芝生の下は1人や夫婦で入る「個別区画」と他の人と一緒に入る「共同区画」に分かれていますが、全体としては大きな桜の木の下にみんなで眠る形になるんです。
9月に行われた見学会は定員いっぱいの30人。話を聞きますと、「父親が、普通の石の墓には入りたくないというので、いろいろ散骨とか探していました」「自分のお墓は持ってるんですが、お墓の管理を遠くに住む娘たちに任せるっていうのも大変だから」とか、「
主人の実家の墓が遠いので、2人だけの墓の方がいいんじゃないかと思って」等々、様々な事情を抱えています。
他にも「一人暮らしで後のことを頼む人がいない」「子供が転勤がち」など「お墓を自分や子供が継げるのか?」という問題に皆さん直面していましたが、一方で、「死んだ後は自然に還りたい」という理由の方も多く、「自然志向」の広まりも感じました。
「エンディングセンター」の代表、井上治代さんは「代々継がなくてもいいし、自然志向にも応えられる。それが桜葬です」と話します。
この墓地に入りたい場合は、「エンディングセンター」の会員になって申し込みます。無期限の永代使用墓地で、宗教宗派も問わないので、お葬式も自由な形式でできます。持ち主の子供が入る「義務」はありませんが、会員を引き継げば、子供も墓地に一緒に入れます。これからは毎年桜の季節に、合同慰霊祭を行い、「花見をしながら、故人をしのびたい」と考えています。
これから広がって行きそうな「桜葬」ですが、「エンディングセンター」は桜葬だけが葬送のあり方だと考えているわけではありません。散骨などのさまざまな「自然葬」や皆で一緒に入る「合葬式」という墓地。従来のお墓でも、墓石の形やそこに彫る文字など自分の好きなようにデザインしているものも増えています。多様化して選べることが重要だということです。
「葬送のあり方」も自分で「選ぶ」時代に入りつつあるようです。