
「簡単な朗読や計算をすることで脳が活性化する」という「学習療法」が注目されています。東北大学の川島隆太教授が研究で明らかにしたもので、「認知症」の改善など高齢者の脳の老化予防に効果があるとされています。
各地で「学習療法」を取り入れた取り組みが始まっていますが、綾部峰雪・情報キャスターは、品川区で開かれている「いきいき脳の健康教室」を取材しました。
品川区は去年、川島教授と教材を作った「公文」の協力で、学習療法をモデル事業として試験的に取り入れました。その後アンケートを採ったところ、「脳の機能検査で数値が向上しただけでなく、モノ忘れが少なくなったようだとか、生活にハリが出てきたとか、いろいろすべてに積極的になったとか、気持ちが明るくなったとか、そういう声が実際に寄せられました」と品川区高齢事業課の蓼沼課長は話します。
「学習療法」は基本的には毎日15分程度、朗読や計算問題などの教材に取り組みます。自宅で1人でやってもいいんですが、品川区では「週一回は集まろう」ということで、現在区内3箇所の教室で、70代、80代の102人が受講しています。
教室は「個別授業」のような形で、2人の受講者に1人、
やり方を指導する「サポーター」がつきます。まず自宅でやってきた宿題のチェック。
そのあと、小学校低学年程度の朗読や計算問題に取り組みます。
皆さん、大変熱心で、「ぼけを防いで、孫に負けないように」とか「人の名前が出てこないようになったら困るので」と、教室に来るきっかけを話していました。
お子さんに絵本の読み聞かせをしていた頃を思い出しながら、
感情をこめて朗読をされる方、「今では、数字を見るだけで自然と答えが浮かんでくる」と綾部キャスターに話す方も。
そして皆さん「脳がイキイキしてきています」と話していました。
一方、この教室は、1週間に1回来ることで、お年寄りが同年代の人に「出会える」場にもなっています。教室が終わった後も残って、お茶を飲んでおしゃべりする方も
多いですし、近所同士、散歩がてらなのか、一緒に帰る方もいました。
近くに住んでいてもなかなか交流できない都会ですが、
家族だけでなく、同世代の人と、交流が生まれると、生活にも張りがでます。
ついつい家に閉じこもりがちなシニア世代にとっては、
1週間に一回歩いたり、自転車に乗って、教室まで来ることが、
広い意味で社会参加につながっているんですね。
「学習療法」は、「介護予防」だけでなく、取り入れ方によっては、ご近所づきあいが生まれるきっかけにもなるようです。