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小学生の部で最優秀賞の絵 |
昨年暮れに起きたスマトラ沖大地震で、インドネシアのアチェという地域は、死者・行方不明者合わせて17万人以上とも言われる大きな被害を受けました。そのアチェの子供たちが自らの被災体験を描いた絵の展覧会が、東京・新宿区の「インドネシア文化宮」で開催されています。
「インドネシア文化宮」代表の大川誠一さんによりますと、今年1月にアチェの報道写真展を開催した時、来ていたアチェの現地新聞社の人に、「何か我々が出来ることはないか」と集まった人の中から声があがったそうです。そして3月に、「絵画コンクールを開き、入選者には日本からの義援金を奨学金という形で渡せるようにしたい」と新聞社から提案がありました。新聞社では「アチェ人としてアチェを見たとき、家を失い、学校を失った子供たちの学習意欲が無くなっていることに気づいた。これはアチェの未来にとっては大きな損失で、子供たちにもう一度学習意欲を持たすにはどうすればいいか」と考えたようです。
絵画展では、800点のうちから選ばれた作品20点が、所狭しと展示されています。クレヨンや水彩絵の具で描かれた絵には津波で沈んだ町に浮かぶ遺体や、屋根に登り助けを求める人達の様子などが描かれています。なかでも小学生の部で最優秀賞になった絵は、空やモスクの色を紫一色で表現しており、彼女が体験した悲しみや衝撃を取材した鳥山記者は強く感じました。
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アチェの子供達の絵に見入る東京・羽村市の中学生達 |
取材した日に東京・羽村市から訪れていた4人の中学生は、「被災の様子が描かれていて、自分達よりも上手い」、「もうこんなことは起きて欲しくない」、「被災者の気持ちが分かり、悲しくなった」と、自分達と同年代の子が描いた絵を食い入るように見ていました。
一方、小学生の絵は地震直後の様子を描いた絵が多いのですが、中学生になると鮮やかな色使いで難民キャンプの様子を描いたり、「かつてのようなアチェを」などのメッセージを絵の中に入れたりと、前向きな様子が見てとれます。大川さんによりますと、「想像していたより明るい絵も多く、安心した」という感想を持った人も多かったようです。
アチェはインドネシアの中の一つの州で、天然ガスなどの資源が豊富ですが、富は地元に還元されず、非常に貧しい地域です。そのため、インドネシアからの独立を求めて約30年近く紛争が続いてきました。大川さんは「津波で流された学校の数と、紛争で焼かれた学校の数は同じぐらいです。復興で学校を建ててもまた焼かれるかもしれない。紛争解決が復興の鍵となっています。この状況を逆に利用して、平和を求める形で復興を進めることが一番大事です。そのためにもこの大震災を風化させてはいけない」と話し、和平あってこその復興だということを強調していました。
「アチェの子どもたちの絵の展覧会」は2005年7月30日まで。その後は、京都や静岡での開催が予定されています。
問い合わせはインドネシア文化宮、電話(FAX兼)03−5331−3310まで。