乗り物やホテルなどを対象にバリアフリー化を促す法律の施行で観光地の環境整備が進んでいることから、高齢者や障害者向けの旅行、「バリアフリー旅行」のニーズが年々高まっています。東京・豊島区にある「駿台トラベル&ホテル専門学校」が、「バリアフリー旅行」を企画、添乗できる人材を育成する「ユニバーサルツーリズム学科」を今年の4月から開設しました。
現在、第1期生として4人が学んでいて、旅行に関する一般の資格に加え、バリアフリーの基礎知識、ホームヘルパー資格や手話、上級救命講習などの専門技術取得を目指しています。
教務部・部長代理の川田昇さんは、学科開設のきっかけについて、「観光サービス業の人材に福祉の要素がなく、対応できていない現実がある。日本には数万の旅行社があるが、福祉旅行に対応しているのは40・50社」と話してくれました。障害者や高齢者が旅行へ参加を申し込んでも、スタッフにノウハウや知識がないという理由で断られるケースも多いようです。
学科長を務めるのは小野鎮さん。これまでも障害者120人を連れてドイツでベートーベンの第九の合唱会を行うなど、日本のバリアフリー旅行の草分け的とも言える存在です。授業では自身の経験を生かし、「生徒には挑戦、工夫するテクニックを伝えたい」と意欲を語ってくれました。
一方、この学校では「ユニバーサルツーリズム学科」の前身となる「福祉旅行専攻コース」が半年前から既にスタートしていて、現在3人の生徒が学んでいます。
鶴岡記者が取材した「高齢者体験」という授業では、1人の生徒が80歳のお年寄りと同じ動きしかできなくなるように、写真にある「浦島太郎」という特殊な器具を身に着けます。そして車椅子に乗り込み、別の生徒が学校から歩いて15分程の所にある「巣鴨地蔵通り商店街」まで誘導しました。生徒の話では、「車椅子の視線は低い為、段差がある時や人とすれ違う時の荷物などには十分注意が必要だ」ということです。
このほかにも、駅や行楽地を訪れて、バリアフリー環境の整備の現状を見たり、夏には障害者の乗馬体験を一日掛けてアテンドする授業もあるそうです。
駿台トラベル&ホテル専門学校の他にも、大学の授業にバリアフリー旅行の講義が取り入れられたり、大手旅行代理店の中にはツアー添乗員にホームヘルパーの資格を義務付けたりとバリアフリー旅行への人材育成の取り組みはいろいろな所で始まっています。