
山口智子・情報キャスターが取材したのは、40年前に入居が始まり、現在も5000所帯以上が住む千葉県松戸市の常盤平団地。ここでは団地自治会や団地社会福祉協議会を中心に民生委員や公団、警察なども協力して、4年前から「孤独死ゼロ作戦」に取り組み、実態の調査や提言も行っています。
高齢者のひとり暮らしが増えている常盤台団地ですが、対策をはじめたきっかけは二人の方の孤独死。二人とも50代の男性でした。
一人の方は3年間誰も気づかず、 家賃が滞納の状態になり、督促に行った段階で、やっと発見されました、もう一人の方は、会社からリストラされ、その後なかなか就職できず、家庭の不和もあり、一人暮らし。発見されたとき、部屋にはワンカップやカップラーメンしかなかったそうです。
常磐平団地を含む松戸市全体では年間90人の中高年の方が孤独に亡くなっているんですが、うち64歳以下が3割をしめているそうです。これに加え、常盤平団地はもともと高齢化率が26%と高く、 新しく入居する人も高齢者が多いということで、孤独死を防ぐ対策が重要になっているのです。
「孤独死ゼロ作戦」の具体的な内容ですが、まずは「孤独死110番」。緊急事態が発生した時に、 自治会長の自宅などを拠点に、地区の社会福祉協議会や民生委員、公団、警察などに 連絡がすぐに行くようなネットワークを作りました。また、「隣近所の異変に気づいたら、すぐに連絡をしてほしい」という呼びかけも徹底して行ったそうです。
「何かおかしいんじゃないかということで連絡があって、踏み込んでみたらテレビの前で餓死寸前。すぐに病院に搬送されて一命を取り留めました。孤独死は、早期に異変に気づけば助かることもあるんです」と団地自治会の中沢卓実会長は話します。
この他、記入を呼びかけているのが「安心登録カード」。家族や近くの知り合いなどの緊急時の連絡先、かかりつけの医師や血液型などを記入してもらって自治会が保管しているので、速やかな対応ができるんです。さらに、新聞販売店にも異変を感じたら連絡してもらうとか、鍵の専門店とも協定を結んで、いざという時に、24時間鍵を開けてもらえるようにしているんです。
40年前はプライバシーの保てる最新鋭の団地だった常盤平団地ですが、高齢化が進むにつれて、人と人のかかわりが非常に重要になってきています。団地地区社会福祉協議会の坂井豊事務局長代理は「孤独死の問題があって近隣の方、変わってきた。異変に気づいたら団地社協とか自治会に知らせようという雰囲気がちゃんと生まれてきたというのが一番の成果だと思います」と話します。
もちろん問題は常盤平団地だけではありません。全国何処でもありうる話ですが、自治会で調べてみると、「孤独死」という統計は役所にも警察にもないんだそうです。中沢さんたちはシンポジウムを開くなどして、高齢社会を前に、「孤独死対策」に関心を持つよう訴えています。
「孤独死」は、「対岸の火事」ではなく、私たち自身やその家族の問題でもあるんです。