|
「痴呆高齢者疑似体験プログラム」の体験者にインタビューする綿田キャスター |
今回は、「痴呆のある高齢者の気持ちを理解して介護するため」に始まった新しい試みを、綿田実苗・情報キャスターが取材しました。
痴呆があるお年寄りは、物忘れをしたり、あちこち歩き回ったり、と様々な症状がみられます。介護する方は大変ですが、大変だからといって、お年寄りに対し、「あっちに行ってて」という感じで迷惑がったり、「何言ってるの」と否定したり、非難したりするのは問題です。
そこで、社団法人、長寿社会文化協会が開発したのが、「痴呆疑似体験プログラム」です。
「ヘッドマウントディスプレイ」をつけ、目の前に流れるビデオ映像と、耳から聞こえてくる音声で、誰でもバーチャルリアリティ=仮想現実の世界で痴呆のお年寄りの体験ができるのです。
体験できるのは、痴呆のお年寄りによくみられる「トイレを探し回る」という行動。まず、「自分の部屋を出て、トイレに行こう」という所から始まります。ドアを開けてみたら、物置だったり、電話に出てよと頼まれているうちに、「トイレを探していること自体」を忘れてしまったり。歩くスピードはとても、ゆーっくりです。
17分ぐらい家の中をさまようのですが、綿田キャスターによると、「霧の中をあるいているようで、ほんとに疲れたり、あせったり」したそうです。
|
自ら体験する綿田キャスター |
途中、二階の部屋のドアをトイレと思って開けると、部屋にいた女の子が「どうしたの、おばあちゃん」と聞いてきます。これに対し、プログラムでは「なんでもないよ」と答え、「トイレはどこだったけ」と家族に聞くことができません。「とりつくろい」という痴呆によく見られる行動だそうです。またこの時、部屋にいた女の子が「どうしたの?おばあちゃん」と聞くのは、割と良い対応だそうです。「こんな時に、なにやってるの?」と非難気味にいうと、恐怖でどこのドアも開けられなくなるんだそうです。プログラムでは、お年寄り自身の気持ちだけでなく、家族がとった方がいい行動も学べるんです。
高齢社会を迎え、重い痴呆の症状でも、入院させるのではなく、それ以上症状を悪化させずに、家族や周りの人と普通に暮らしていけるようにすることもできるようになっています。そのためにも、「このプログラムを体験して、痴呆のお年寄りを人間としてみようという気持ちになって、痴呆のケアが少しは上手くできるようになってほしい」と、長寿社会文化協会の小林里美さんは話していました。
このプログラムは様々なところで公開されたり、長寿社会文化協会で貸し出したりしてます。トイレ探しの「施設編」もすでに体験できますし、今後は街での徘徊行動なども体験できるようにしたいということです。