時事放談 トップページ 毎週日曜あさ6:00〜6:45
過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
第六六八回('17年10月22日 放送)
 「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか・・・」

ゲスト: ジェラルド・カーティス 氏/片山善博 氏

御厨

「米韓軍事演習を経て緊張が高まっているわけですけども、カーティスさんはこの状態はどうご覧になってますか」

カーティス

「ますます危険が高まってる感じがしますね。まず、合理的に考えれば金正恩は自殺したくない。自分の国が攻撃されることを望んでいない。彼が核兵器を本当に使うということを非常に考えにくい。トランプも戦争はしたくない。戦争になれば同盟国の日本も韓国もやられる。ですから彼も戦争はしたくない。しかし、北朝鮮の核兵器開発に対して止めるように圧力をかけるのは正しい政策だと思うし、これを強い制裁をやることは大事だけども。

しかし強い制裁をやるだけで金正恩が核兵器を放棄する可能性はほとんどないでしょ。あるとしても、長い長い交渉の末に放棄すると。だから僕が思うのは、強い制裁を中国も協力するように、中国に対しても圧力をかける。同時に、公の場でなくて裏で北朝鮮と話をして交渉をする。

しかし交渉をするというのはね、核兵器は放棄するのが交渉の目的であったら、こっちがインセンティブを与えなければならない。要するに北朝鮮が何か得するようなことがなければ、放棄するはずがない。ですから問題は、トランプは絶対に許さないと。アメリカを攻撃する核兵器、アメリカの本土に落とせるような能力を許さないと。その前に止めさせると。止めさせるならば軍事行動しかない。しかしそしたらもう、予防戦争になっちゃうんですね。攻撃されそうだからやるんじゃなくて、攻撃される前にこっちから予防戦争をする。

そうしたら報復はね、アメリカまでは届かないでしょうけど、韓国とか日本にやる。だから僕は、強い制裁しながら北朝鮮との交渉をして、もっと大きなパッケージを、核問題やいろんな問題が解決するようなパッケージのやり方でやらないといけないと思うんだけど、今のところはそういうような感じではありません」

御厨

「なるほどね。片山さんはいかがですか」

片山

「誰も戦争を望んでないと思うんですね。今、カーティスさんおっしゃったように、金正恩も望んでいないでしょうし、やれば国が崩壊しますし。アメリカも望んでないですよね。我々国民も、韓国とかも含めて望んでないですよね。

これ、どうやれば良いのかって今までも散々やってきて、何回も過去にあって、危機が高まって、まあまあってことで交渉して、それで経済支援とかエネルギー支援とかやってきたけど、全部騙されたというか裏をかかれたみたいなところがあって。それは許さないぞってとこが現状だと思うんですね。

私、考えてみますとね。例えば、核も持たないミサイルも持たない北朝鮮が出来たとして、その時に果たして例えばアメリカが北朝鮮を崩壊させるだろうか、日本や韓国がそれを望んでいるだろうかというと、けしてそんなことはないと思うんですね。核がなくてミサイルがなくても、たぶん体制を維持することは可能だと思うんですね。そのことを金正恩以下の体制の人達が確信が持てれば良いと思うんですけど。そこがたぶんとっても難しいことだろうと思うんですね。みんな疑心暗鬼になってますから。

だから、核を放棄してICBMを放棄しても、少なくとも対外的にはあなた達は体制を守ることが出来るんだよということを、どうやって確信を持たせるか。ここがひとつのポイントだろうと思いますね」

御厨

「双方の言い合いで緊張がエスカレートしてきている状況ですが、カーティスさんはどうご覧になってますか」

カーティス

「ですから、北朝鮮側から見れば、核兵器がなければやられると。体制が潰されると。核兵器がただ一つの彼の政権を維持するための保障になるわけですね。ですから、いくらこちら側が、アメリカ側が核兵器放棄してミサイルがなければ絶対にこの体制を我々は落としませんと、いくら言っても信じるはずがないんですね。

ですから私はね、金正恩は、あの政権はもう最悪な酷い政権だけど、彼はクレイジーじゃないんです。非合理的な人ではないんです。彼のおかれている立場を考えれば、これしかないと。

しかしトランプは、許さないという気持ちは本当なんだから。いつかぶつかっちゃうという、軍事衝突になる危険が目の前に高まってますよね。戦争ないだろうと思いますが、ないだろうとは思いますが、絶対にありませんということを誰も言いきれないんです。今」

御厨

「片山さんはどうでしょう。2人の言い合いで緊張が高まる、その一方で、実際、日本は何度も上空にミサイルを飛ばされているわけですが」

片山

「国民は不安ですよね。ただ、日本を脅してますよね、横須賀に落とすとか、東京を火の海にとか言ってますけど、それは結局日本に留まらないで、例えば横須賀にししてもどこにしても、アメリカの米軍基地があるわけで、それはアメリカに戦争仕掛けたのと一緒ですから。それは今は、日本を攻撃することはアメリカを攻撃するのと一体だと。彼らもそう見てると思うんですね。だからそういう脅しを我々がどうとらえるかですけども、あんまり過剰反応してもいけないですけども、安心しきってもいけないし、難しいところだと思いますね」