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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
第五八五回('16年2月7日 放送)
 「『揺れる世界』の中で」
 ゲスト: 藤井裕久 氏 / ジェラルド・カーティス 氏

御厨

「さあ、株式市場では今回も黒田バズーカへの期待が高まっていたわけですが、今回の日銀にお金を預けた銀行の方が金利のお金を日銀に払うマイナス金利の決定をどうお考えになるか。景気を押し上げ、あるいは円安株高といった効果が期待されたわけですが、どうでしょう」

カーティス

「このマイナス金利にすれば、会社がもっとお金を借りて設備投資をして、そして賃金を上げると。しかし、今でも、利子がかからなくても、借りたい会社はほとんどいない、借りるのはどうせ外国に投資をしますし。それで賃金を上げるのは、政府に言われるから上げるんではなくて、自分のビジネスプランの中で上げるかどうか、ビジネスが決めることであって政府が決めることではないのでね。日本政府が賃金上げろ、設備投資を増やそう、そのことをいくら言ってもね、会社は自分で判断しますよ。今の日本だったら。昔の通産省の行政指導の時代とは違うはずですから。

ですからね、私はね、これは大失敗するおそれがある。もうすでに、最初マイナス金利と発表されて株が上がって円安になったけど、もう2、3日で逆ですよ。ですから傾向としては円高・株が安くなる。これはこの政策では止められなくて、それで銀行が非常に困るでしょ。それで国民もどうぞお金借りて下さいと、しかしね、将来に対して不安感があればね、今借りて将来返せるかどうか、利子とか別にしても、借りないんですよね。

だから日本の消費者はそんなに銀行にお金置くのは利子が得られないから、じゃあ使いましょうという無責任なことやるひとは少ないと思うよ。ですから、私はこれ非常に副作用の多い、どちらかと言えば危険なやり方じゃないかという感じがしますね」

御厨

「藤井さんに伺っておきたいのは、今回のマイナス金利で、住宅ローンの切り下げなどもあったわけですが、その一方で預金金利の切り下げも発生していると。この点を藤井さんはどうお考えでしょう。個人へのマイナスは決定の当初は指摘されてなかったんですが」

藤井

「これは当然そうなると思います。金融機関も生きていかなきゃならないわけですよね。ですから、手数料を引き上げにくると思いますよ。それから今のように定期預金の金利はほとんどゼロにしちゃうと思いますね。そうしないと彼らは生きていけないというでしょう、おそらく。

そうなりますとね、一般大衆に対してはね、マイナスの方が大きいと思います。おっしゃるように住宅ローンの金利が下がるかもしれません。下がるかも知れませんが、それと今の様な話と比べますとね、明らかにこれは一般国民にはマイナスだと思うんですよ。それでね、ダボス会議でね、ドラギっていうECBのがやってますね。俺達のやってることは正しいことだ、と言ったのに対してね、やっぱりダボスの知性派の人の中にはね、こんなことやっちゃダメだと。今ここで話が出てるような事を言っておられる方もだいぶあるんですよね。

だから世界も、けしてマイナス金利という政策が、世界の経済の為にプラスだとはとても考えていない人が多いということだけは申し上げられると思います」