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第五八〇回('16年1月3日 放送)
 「2016年 新春全力スペシャル」
 ゲスト: 石破茂 氏 / 野田佳彦 氏

御厨

「さあ、来年度予算案も過去最高となっていますが、野田さん、どうお考えになりますか。景気を良くして税収を増やすということが協調されて、このところ財政再建があまり出て来ません。野田政権の頃は、子どものクレジットカードで買い物をしていて良いのかという議論が強くありましたが。いかがでしょう」

野田

「経済の成長は大事なんです。これはどの政権でもやらなければいけないと思いますが、合わせて成長と財政再建を両立させるという、この命題に挑んでいけなければいけないんですが。

財政再建という点におけるとですね、やっぱり私は財政規律緩んできてるのではないかと、強い懸念を持っています。

ひとつはですね、ひとつはやっぱり軽減税率ですね。私は軽減税率反対なんです。論点は色々あります。線引きの問題であるとか、益税の問題とか色々ありますけども。私はあえて言うと、財源をどうするか、この一点でもとても合点がいかないです。

今回はお酒を除いて飲料品、食料品全般になりましたけれども、財源が1兆円必要ですよね。その穴埋めする1兆円のうち、決まっているのが4000億円の総合合算制度というものです。総合合算制度というのはですね、ひとつの家庭で一挙に介護とか医療とか子育てとか障害とか、色んなものが自己負担が増える時に、低所得者困りますよね。その時に合算してキャップをはめて、これ以上は国が面倒見ようというのが総合合算制度。

私はこれは社会保障にとって大事な制度だと思うんです。どの家庭でも起こりうることですよね。そのための低所得者対策の4000億円を失くして、軽減税率に充てる。軽減税率って響きは良いですけども、だけどそれは高級おせち料理だって松坂牛だってみんな軽減の対象で、高額所得者も多大な恩恵を受ける。そのために総合合算制度という、低所得者のための対策を潰して良いのかどうか、というのがひとつ。

もっと大きな問題は、1兆円のうちの6000億円をまだ決めてないという事です。参議院選挙終わってから決めるということですよね。これは酷いんじゃないですか。私はね、財源なくして政策なしだと思います。そのことをお互い徹底していかないと、1千兆円の借金というのはどんどんまだ膨らんでいくと思いますね。ひとつひとつが大事です、政策を決める時は。財源なくして政策なしを徹底しなかったら、この国はもたないと思います。

たぶんだから軽減税率は有権者の皆さんは税金まけてくれるのかなと思って喜ぶかもしれない。でも冗談じゃない、と思わないと。じゃあ6000億円社会保障削るのか、赤字国債にするのか、違うんじゃないでしょうか。そういう大切な議論すべきだと思いますね。

まだいいですか、もっと言って。ちょっと最近溜まってるものですから、言いますけども。もうひとつは補正予算の3000億円ですよ。65歳以上の所得の低い人に対して一律3万円を配るという、これバラマキじゃないですか。で、しかもいつ配ると思います。5月、6月ですよ配るのは。65歳以上の人は喜ぶ人いっぱいいるかもしれません1200万人対象ですから。だからといって自民党・公明党に一票入れるとしたら、私は悲しいですね、日本の民主主義。こんなバラマキないじゃないですか。合法的買収ですよ。

低年金低所得のための対策は講じなければいけません。それは消費税10%にした時に月額5000円、年間6万という制度はやろうとしている。それは良いと思いますよ、恒久財源だから、でも一時的な税収の上振れを、私はそれは借金返すのに充てるべきだと思うけど、投票率の高い65歳以上を狙って、1200万人狙って、5月6月に3万円配るなんてのは、愚民思想の政策じゃないですか。私は酷いと思うんですね、これは。財政規律が緩んでると思います」

御厨

「野田さんこうおっしゃいました、石破さんどうでしょう」

石破

「色んなご批判は虚心坦懐に耳を傾けなければいけないと思っています。ただどうすれば消費税5から8に上げ、今度10に上げるわけですね、二桁に乗るわけですね。どうやって国民の皆樣方に、これを許容して頂けるかというのは大事だったと思います。

そこにおいて、本当に低所得の方々に、きちんとしわ寄せがいっていないのかどうかは我々政府としてきちんとお示しする必要があると思っています。それは消費税のみならず、税全体に言えることなんだけれども、所得再分配っていうのがもっと効くような仕組みというのを政府の中でも検討していて、例えば控除のやり方ってのは、むしろ高額所得の人に効くように、そういうふうなものなんですね。だとしたらば、給付と控除ってのを組み合わせていって、もっと低所得の方々に、きちんとした手当が出来るような税制というのを消費税のみならず考えていかなきゃいけない。

そして我々が600兆ということを言ってるのは、例えば来年度予算でも、新規国債発行額ってすごく抑えてるんですよね。これが単に増収頼みにならないようにきちんとした経済の成長で増収というのを、たまたまボーナスみたいにポンと入ったからっていうことじゃなくて、きちんと経済が成長して、増収もありますよと。そして借金も返していきますよということをやんなきゃいけません。

そして、これは正しく野党の方々のご理解が必要なんだけれども、社会保障というのをどうしていくか。これからご高齢の方がわっと増えるわけですよね、人類が経験したことのない規模とスピードで。そうすると、医療にしても年金にしても介護にしても、本当に困っている方々に、きちんと重点的な手当をする。本来保険ってそういうもので、贈与じゃないですからね。困っている人も困ってない人も同じに手当てしたら、消費税何%にしても足りないですよ。

で、きちんとした見極めをしていくっていうことは、弱者切り捨てだってご批判を頂くに決まっている。だけども、そうしていかないと、財政規律も保てないし、本当に困っている人に光も当たらないし、そういう議論をさせて頂きたいなと思っています。

ですから、税のあり方は、これから先、法的な措置も含めて参議院選挙の争点にもなるでしょう。そして、28年度末までに法的な措置も含めてきちんと手当をさせて頂く。それはこのまま財政規律が緩んでしまったら、それはもう後はハイパーインフレしかないよってのは、私ども強く認識していて、そんなことこそ本当に弱者切り捨てだと思っているから、そんなことだけはしてはいけません」