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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
第五七七回('15年12月13日 放送)
 「師走も半ばに」
 ゲスト: 片山善博 氏 / 武村正義 氏

御厨

「7月から9月期のGDPの改定値は1%増、上方修正ですけれども。一方で、消費や輸出の回復力は弱い、プラス成長の実態が乏しいということですね。武村さん、これをどうご覧になります」

武村

「とにかく、アベノミクスは上手くいっているのかと私はいささか疑問を感じます。安倍さんはよく数字をおっしゃるんですが、最初のアベノミクスの時も名目成長3%、実質2%、物価も2%というふうに、数字でおっしゃったことがありますが。とてもそんな状況にはなってない、という理由があるんだけどもですね。そこで2回目のアベノミクスが今度はまた600兆円とかね、あと5年余りで490兆円のGDPを600にすると。これはもう年率3%でも足りないくらいですから。過去20年間日本は3%成長って1回もないんですよ。それほど低迷しているんですけどね。今年から3%がずっと数年続いていくというようなことをおっしゃるのは、非常に明るくて良いんだけども、総理大臣がそんな大胆なことを突然言い出していいのかなと。ちょっとこれ眉唾じゃないかなと。こういうふうに思ってしまうんですね。だから、ちょっと夢を与えて下さるのは良いんだけど。数字で表現どんどんされていくと、出生率を1.8とかね、介護離職ゼロとかいうのもそうなんだけど。分かりやすいんだけども、そんなに上手くいくのかなと。アベノミクス全体に対して疑問を感じ始めてます」

御厨

「片山さん、どうでしょう」

片山

「私はね、いくつか感想があるんですけど。ひとつは、あまりこの、その時その時の数値に一喜一憂しない方が良いと思うんですね。これは政権の皆さんとか、役所の皆さんですけど。もうちょっと長い目で見てみないと景気の動向というのは分からない面が多いと思いますね。それがひとつとですね、もうひとつはGDPを増やすことに政権が躍起になっている印象がありますよね。そのために一方では大企業に給与を上げなさいとか、もうひとつは設備投資を増やしなさいとか。政府が、国が企業に対して給与を増やせとか設備投資を増やせっていうべきものではないと思うんですね。ああいう姿を見てますとね、なんか躍起になってGDPを増やそう増やそうとしてるのを見ると、内閣府で甘利担当大臣の下で、この内閣府がGDPの算出なんかしてますから。あの数字本当かなっていうふうに、私なんかはちょっとひねくれてますから、そういう眼鏡をかけて見てしまう面があるんですね。もう少しやはり政府は淡々として、目標を掲げるのは良いですけども、あまり躍起になっているような印象は与えない方が良いと思いますね」

御厨

「さあ、その中で会社向けに法人税の実効税率の引き下げ、あるいは今も出ましたが中小企業向けの設備投資減税と、消費増税の一方での減税というのが目立ってますが。この点は武村さん、どうお考えでしょう」

武村

「ですから、結局安倍内閣としては、経済成長をスローガンにされてますから、必死で成長するための努力をされてるというふうに評価も出来ます。しかし、先ほど申し上げたように財政がこんなに酷い状況でね、易々と減税ばっかりあちこちでやって、一体どうするんだと。本当は財政のことを考えれば、辛いけれども増税をしなきゃならない。相対的にはそういう状況にも関わらず、減税のバラまきと先ほど申し上げましたが。今度は補正予算でひとりいくらですか、3万円ずつね。1千万人以上の低年金の所得の人に配るというので。これも良いことだけど、まさにバラまきの典型的な政策をまたやるのかと。余裕があればね、そういうことも絶対に悪いとは言いませんけど、財政どうするんですかと。前年度に少しでもカネが余ったら、それはやっぱり借金を減らす方に回すべきだ。今年度の予算の見積もりをちょっとでも収入がオーバーすれば真っ先に赤字の削減に回すべきだ。そうしなきゃならない状況にあるにも関わらず、それを余裕財源にして補正を組んでしまうというのは、一体財政をどう考えてるのかと問いたいですね」

御厨

「はい、片山さん」

片山

「あのね、その点は私も全く同感なんですね。税収が上振れをしたと。予算で見積もっているよりも沢山入ってくる、これは結構なことですよね。それであれば、それは真っ先に赤字国債の解消に使うべきですよね。今年度もそうですし、来年度も赤字国債を相当発行するわけです。で、もし年度中途に税収が増えたってことが分かったらば、それは少しでも赤字国債減らすように使うべきですよね。それが、そっちの方はトンと忘れてしまって、なにか財政に余裕が出来たから、これを財源にして何かしましょうなんて、やはりちょっと緊張感が足らないと思いますよね。それから、政策税制として法人税、設備投資減税なんかはあって良いですけども。何かね、法人税の減税なんかは非常に安易にトントンと進んでしまって、ちょっとその辺の議論とかが薄いような気がしますよね。本当に効果があるのかどうか、私は疑問だと思いますね」