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第五七五回('15年11月29日 放送)
 「激動の社会の中で 〜自民党結党60年〜」
 ゲスト: 野田聖子 氏 / 藤井裕久 氏

御厨

「まずは出生率からいきましょうか。野田さん、希望出生率1.8に向けて保育の受け皿50万人増といった政策が打ち出されました。これ、ずばりどうお考えでしょう」

野田

「方向としてはね、やはり子どもがたくさん生まれて幸せに育つ国家を再建するっていうことは間違ってないんですね。ただその、やり方として、女性が子どもを産む合計特殊出生率のことなんですけど、1.8。若い人でアンケートを取ったらこのくらいという、そういうことらしいんですけど。ちょっと、その数字が先にあるのではなく、子どもは製造物じゃないんで。むしろ女性達が気付いたら、これだけたくさん子どもを産み育てられてたよ。ということが、本来の政治のデリカシーというか。どうでしょうね、私はもう年取った女性なんでね、でも若い女性からすると何かちょっと違和感がね。むしろ若い女性達に、保育のことも出てますけど、例えば私であれば、全ての子どもに幼児教育をとか。そういうアプローチで子ども達が授かっても安心だというところが、本来はターゲットだったのかなと。何でもかんでも数値目標を出せば到達出来るという日本人の考え方はあるけれど、こと子どもを生み育てるというのは、そういう簡単なことではないという事を男性はもっと知って頂きたいなと言うか…」

藤井

「大賛成です」

野田

「それであと問題は、受け皿を作るのは良いんですけど、今も受け皿はあって、充足出来ていないんですね。というのは、子どもを受け入れたいけれども、保育士さんがいないとか。それで何でいないのかというと、お給料が安いからと。そこらへんまで根っこが深いんで、50万人と言ったところで、じゃあその手当ては、ということのほうが実は核心なんですね」

御厨

「なるほどね」

野田

「だからそこを言っていくと、みんなうなずくんだけど。現場を知ってる人からすると、いやいや今だって入れるけど保育士さんがいないのよと。だって給料が安いんですもの。となると、これがなんとなく素直に受け入れてもらえなくなる数字になってしまうんですね」

藤井

「保育も介護も全く同じ」

野田

「そうですね、人がいないですね」

藤井

「私は野田さんの言うのは全部賛成なんだよ。ただ、僕らの世代の人はね、この一億なんとかっていうのは本当に抵抗感があるんですよ。一億一心とか、出せ一億の底力とかね、みんな戦争の話なんですよね、この一億って言葉が。それはもう戯言ですから良いですよ。それから今のね、子どもの話もね、産めよ殖やせよって、どうしても戦前を思い出す人がいるんですよ。今、野田さんのおっしゃった通りなんです。結果としてそういう環境を作るということが大事だけれども、産めよ殖やせよという戦前の話で良いのかという事を、おそらくおっしゃってたと思いますよ。その通りだと私は思います」

野田

「それにやっぱり現代の女性はね、過去よりもしっかりしてるでしょうけど、やっぱり働き方もトコトン変えて頂かないと。男の世界に両立って言葉はないけど、私達は常に両立っていう天秤で、女性達は苦しむわけですよ。子どもと仕事で。そういうのをまず改善しないことには、数値があってもなかなか難しいんじゃないかと思います」

御厨

「さあ、そして介護のために仕事をやめる。これ毎年10万人に上るといわれてます。この介護離職をゼロにするために、特養老人ホーム50万人増などが打ち出されました。野田さん、これはどうお考えでしょう」

野田

「これもまさに同じ流れで。ベッドは50万床いくらでもすぐ作れるんです、施設は。だけどそこに人がいなければ、要するに仏作って魂入れず。まず人ありきなんですね、介護も保育も。そこから始めないと、正直これは実現しづらいんだと。そこがまだ答えが出てきてないところに、多くの皆さんが怪訝な風情で眺めている感じがします」

御厨

「藤井さんいかがですか」

藤井

「まさにね、保育とか介護とか社会保障の問題がね、有効求人倍率がめちゃくちゃ高いんですよね。ですからね、これは何だといえば、今、もう野田さんのおっしゃった通りなんですよ。そこに手を入れなきゃダメだと私も思っています。その前提がなくて50万とかなんとかっていう数字だけが先行してる」