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第五四九回('15年5月24日 放送)
 「スタート『新安保法制』論戦」
 ゲスト: 野中広務 氏 / 古賀誠 氏

御厨

「さあ、まずリスクです。後方支援の活動地域が広がる事や、あるいは他国への弾薬も提供できるという事で、岡田代表はリスクが高まるというふうに言ったわけですが総理はそれに反論をしました。野中さんはどうお考えでしょう」

野中

「リスクは当然あるわけでして。クエートに対して自衛隊を派遣しました。その時にね、無事全部帰ってきたという報告を私達どもは受けておりましたが、つい数年前に聞きましたら、28人が精神的な悩みで全部亡くなっていったということを、私には関係者が報告を下さった。今もなお、あの人達の中で精神的な悩みで務めにも何にも就けずに悩んで病んでおられる人がある。そういう状況というのを、国民のみなさんには分かって頂いてない。しかも政府はそれを発表していないんです。そういう中でね、リスクがないなどとは絶対に言えませんし、リスクに対してもっと、岡田さんに明確にですね、答えるべきだったと私は思うんです」

御厨

「今、野中さんこうおっしゃいましたけど、古賀さんはどうでしょう」

古賀

「もうリスクが高まることは当然だと思いますね。先ほども、周辺事態法のことも申し上げました。特にですね、これ恒久法の中で後方支援の問題も出てくるだろうと思います。後方支援というのはですね、ご承知の通り正面の戦闘行為と一体化するものですね。これはもう世界の常識が、これは兵站と言うんだそうでございますけど。まさに武力を行使する。そうなると、専守防衛というものが捨てられちゃって戦闘が出来るということです。だからそういうことを考えますとね、巻き込まれるとか巻き込まれないとかじゃなくて、後方支援を行動に移すことによって、もうすでに巻き込まれてるんですよ」

御厨

「そういうことになっているんですね」

古賀

「そうだと思いますね。だからリスクと言うのはものすごい大きなリスク。専守防衛というね、そのものがもう捨てられてしまう。これ一番怖いことだと思いますね」

御厨

「さあ、そして野中さん。新3原則にあっていれば、日本が攻撃されなくても反撃出来ると言うのが集団的自衛権ですけども、岡田代表が他国の領土、領海に及ぶのではとする一方で、総理は一般に海外派兵は認められないというふうに言っていますけども、これをどうお考えになるか。機雷除去は例外とも言っていますけどこの点はいかがでしょう」

野中

「私はね、前にも機雷除去は現に日本の技術で十分やれることが、証明していますし、 その程度のことは協力しないといけないというのは過去の例にも見られることでございます。ただね、あの答弁で、「派兵はしない、兵は派遣しない」これは絶対にね、総理として使ってはならない言葉なんです。前にね、「軍」という表現をしました。で、攻撃がものすごくありましたので、「軍がいけなかったらこれは取り消します」と言うそういうことを安倍さん自身がやられましたが。私はね、派兵をするというね、こういう自衛隊を兵隊として送るという、そういうことを言外に含んでいると思うんです。そうでなかったら、派遣をしない、派遣をするとか、こういう「派遣」に変えるべきだと私は思うんです」

御厨

「この点、古賀さんはどうでしょう」

古賀

「よくですね、この集団的自衛権の容認の中で除去の問題がありますね。機雷のですね。あんなの全然考えられないような事態でしょ。今はもうあんな中東での産油国なんかですね、どんどん日本が使うエネルギーの原油ではですね、減ってきておりますよね。しかも産油国がですね、一番大事な海峡にですね、魚雷なんて自分のところで首を絞めるような事をするわけないじゃないですか。アメリカもシェルのガスがあるし、ロシアももう原油を出している。どんどんどんどん価値感のない周辺をですね、魚雷を除去するだなんてそんなの考えられないことですよ。そういうのを例にとること自体ね、ごまかしだと私は思いますね。しかも、個別法でいけばですね、我が国は原則ね、自衛隊は海外に出さない。原則。ところが恒久法では例外として海外に出ることがある。大変な違いですよ。原則と例外が逆転しているわけですから。これはですね、本当に安保体制の大転換ですから、こんなことをですね、さっきも、野中先生から触れていただいたように、今、与党が大多数を取っている議会だけでね、決するような問題ではありません。国民の合意が必要です。だって国民に覚悟を求めなければいけないわけですから。もっとリスクを言うべきですよ。答弁では。こういう心配あるし、こういう恐れがあると、しかし、これは必要だからやるべきだというならわかるけども。リスクはひとつもない、おっしゃらない。それはまさに国民の生命、財産に関わってくること、これですから。これをもっと説明しとかないと、国会の議決だけで進むような問題ではない」