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第五四七回('15年5月10日 放送)
 「近づく『戦後70年』の夏」
 ゲスト: 仙谷由人 氏 / ジェラルド・カーティス 氏

御厨

「さあ、カーティスさん。今回の新しいこの安全保障の協力ですけども、アメリカがこれに期待するのはなぜなんでなんでしょう」

カーティス

「まあ、それはやっぱり、ひとつはアメリカも変わってきて、アジア全体の環境も大きく変わってきて、中国が台頭して東シナ海に対しても南シナ海の島に対しても、非常にアグレッシブな態度を取っているでしょう。アメリカの財政問題も色々あって、やっぱり同盟国にもっと負担してもらいたいというのは事実であって。だから現実的に考えれば、日本の防衛政策も変わらざるをえないと思っているんですが。しかしですね、十分な日本国内の中の議論なしで、日本の国民の意見と違った政策を政府がとってしまって、後はいや、それは仕方がないと、諦めるしかないというふうに日本の国民が思うような、どうもそのような方向にいってるような気がしてならない」

「例えばですね、この防衛協力の新しい指針の中にね、こういうくだりがあるんですね。これだけちょっと読ませていただきたいんですけどね。『自衛隊は日本と密接な関係にある、他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に対処し、日本の存立を全うし、日本国民を守るため、武力の行使を伴う適切な作戦を実施する。』」

「これどういう意味しているかわかりませんけど、本当はわからないんですよね。存立が脅かされる、じゃ例えば、石油がなくなったら存立が脅かされると考えられるので、そしたら、じゃ日本がなに、中東で戦争してアメリカと同じ様な過ちを犯しますか。ただこれ、新しいガイドラインが発表されてからね、私がよく知っている、国防省のアジア担当の偉い方が、ある会議に出ていて言ったのは『良かった、これで日本はアメリカを守る約束をしてもらった』と」

「ちょっと待って下さい、安保条約で日本がアメリカを守るということ書かれてますか。第9条で守ることができるんですか。なんでこういうような議論を十分しないで、こういうことが出来るか。アメリカから見ればね、アメリカの兵士が日本を守るために死ぬならば、日本もアメリカを守るために死んでもらうのは当然だと思いますよ。思うんですけども、日本は日本の憲法もあり、日本の価値観もあり、これが変わるんだったら、やっぱりもっともっと議論して、憲法改正するならば改正し、改正しないんだったら、今の憲法の常識の中で行動することは当然だと思うんだけど。どうもね、国民が黙っているというか、見て、観察して政府が色々なことをやって、それを観察して大きな支持もなければ反対もない、なんとなく流動的に動いていっちゃう。そういうふうな感じがしてならない。だからこれ日米関係の問題よりも、日本国内の問題だと思いますね」

「だから現実問題として、日本の防衛政策もう変わらざるをえない。ただ、どういうふうに変わればいいのか。それでもうひとつはですね。ごめんなさいこれだけ言いますが。安倍さんの演説の中で、中国という言葉一度も出てこなかった。中国とのバランスを取ることは大事だけれども、日米両国にとってもね、中国となんとか友好的な関係を作る努力をしなければならない。そのこと安倍さんは一言だけでもね、演説の中で、これから中国とどういうふうにして仲良くできるか、これアメリカと日本が力を合わせて、一緒に中国と良い関係を持とじゃないかということを言ってくれればね、よかったと思うんですけど。何か冷戦時代の発想で、今度、中国に対して同じ発想で話したような感じでしたよね」

御厨

「仙谷さんいかがですか」

仙谷

「カーティス先生のおっしゃるのと同じなんですが、結局大きな外枠としては、少なくとも1990年以降続いてきたパックスアメリカーナというか。世界の警察官アメリカがですね、もう、ちょっと我が国だけでは無理なんだよねと、こういう話から始まってる部分がそうとう大きい要素ですね。今おっしゃられたように、地球規模でアメリカと一緒になって貢献するって話しは、世界の警察官の役割の一翼を担うということになるとすればですね、それは国民的な議論としては熟していない。特に安倍さんの周囲の応援団にわりと多いね、民族主義的傾向の強い人達も、そこまではお考えになっていない」

「つまり日本のことは、日本の利害のことは考えるけれども全世界の平和について責任を持つと、そのために軍事力というかこれをアメリカと一緒になって使うんだということを本当にお考えになってこんなことやっているんですかと。これはね、やはり本当に憲法云々だけじゃなくて日本人の将来の生き方の問題でしてね、もう少しオープンで突っ込んだ議論が必要なんじゃないかなという気がしますね」