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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
第五二二回('14年11月9日 放送)
 「乱高下」の中で
  〜誰が喜んで誰が困るのか
 ゲスト: 片山善博 氏 / 浜矩子 氏

御厨

「さあ、まずは市場で黒田バズーカと言われている方の話からですけども、国債の30兆円の買い増しなどの今回の電撃緩和ですね。この狙いってのを分かり易く説明して頂くとどうなりますか」

「狙いは何なのかは本人に聞いて頂かないと分からないですけども、もうちょっと私はこの金融政策が完全に常軌を逸していると。常軌を逸しつつあると言うふうに思いますね。規模をどんどん大きくして、前にやってたのと同じ事をやると言う訳ですけど。今までやって来て上手く言っていない事を、同じ事を規模だけ大きくしてやったって上手くいかないに決まっている訳ですけれども、だけど、そういう形で突入をしていく。そして、かつ、何でもやると言う言い方を総裁自身がするという事。この何でもやるという言い方が、円安を全面的に容認していると受け止められてしまったみたいで、すごくこれでどんどん円安が進行する。かなりこれ危険水域に入っていると思うんですね。だから、目指している所が何であれ、結果としては非常にまずい状態になってきてると思います。もう円暴落前夜って感じじゃないかと思いますし」

御厨

「そういう事ですか。今、浜さんこうおっしゃってますが、片山さんはいかがお考えでしょう」

片山

「私はね、色んな見方出来ると思うんですけど、これGPIFのポートフォリオの変更と同日の発表ですよね。やはりそうせざるを得ないところはあったと思うんですね、政権の狙いはやっぱり株価だと思うんですよ。株価を上げる、維持するためには年金資金を株式市場に相当数投入する。ですから、GPIFのポートフォリオの変更で最初出てきたのは、日本株の割合増やすと言われてましたよね。だけどこれは変じゃないかと、年金の資金の健全運用だったら何で日本株式に限るんですかという当然の批判が出てきて、で、外国株式も買うと。こういう事になれば、当然国債が追い出される訳ですよね。その国債が大量に追い出された時に、ほっておくと国債の価格が下がりますよね、で金利が上がりますよね。これ、財務省は困りますから、そうするとどこかで引き受けなきゃならない、そうすると日銀だと。ですからこの30兆円と言うのは、私は年金資金の運用変更から、そのババを日銀が掴まされたという事ではないかと思いますね。もしそうだとすると、そんな事を通貨の番人の日銀が絶対にしちゃいけない事ですよね」

御厨

「浜さん。もうひとつのバズーカである、例の年金バズーカの方ですけどね。公的年金基金が日本株を買う枠を2倍、10兆円増やすという話ですね。これは浜さん、どうなんでしょう。年金を株で運用してそもそも大丈夫なのかという根本的疑問はありますが。いかがでしょう」

「その根本的疑問は全くまっとうな疑問であって、これはもう全然ナンセンスだと思うんですね。この公的年金というものをお預かりしている、やっぱりそれもまた日銀は通貨価値を担保するわけですけど、こっちの方は年金資金のプールの価値を保つという役割がある訳であって。それをやっぱり多少とも、多少ともたって株というのは金融商品の中で一番リスクの高いほうに入っているものですよね。それの運用に充てるという事は、まっとうに年金資産の運用ということを考えているのであれば、当たり前のように回避すべき事ですよね。だから中央銀行なら当たり前に回避すべき事を日銀はやっていて、こっちの二番目のバズーカの方も、年金資金の運用ということを責任としているのであれば当たり前のように回避すべき事を両方ともやっている。だから本来の自分たちの責務を放棄して、株を上げる。なんとか点数を、政策的な点数を上げるということのために非常に貴重な二つのものを使っていると。バズーカ扱いするとは何事であるかということですよね」

御厨

「バズーカではない」

「そのように使っていいものではいずれも全くないと」

御厨

「また叱られちゃいました」

「別に御厨さんが悪いと言っているわけではありません」

御厨

「一応、民意代表で。で、片山さんどうなんですか。年金の運用で利益が増えるならいいんですが、その目的に成長戦略としての株価対策も混じっているという。この状態をどうお考えでしょう」

片山

「私は、年金という巨額の資金をどう運用するかってのは色々考え方あると思うんですね。海外の年金を原資にした機関投資家なんていうのは株式相当割合高いところもありますよね。ただね、今回見てみますとね。本来、日本の年金資金がどうあるべきかというようなことをほとんど議論しないまま、むしろ政治の介入によって、政治の圧力によって株を買おうという、そういう方向ですよね。我々から見てますとね、じゃあ実際にどういう株をいつ買おうとか、いつ頃とかそういうことをやる人達はどんな人なのか、誰が責任持つのか。必ずリスクがありますから、そのリスクを場合によっては受け止めるだけの年金受給者、将来の人も含めてですね、その人達にある程度覚悟があるのかどうか。そんなこと何もしないまま買えますよって、リスクは当然あるんですけど、その事はあんまり言わないでって言うのは非常にまずい事になりかねないと私は思いますね。そこのところ基礎部分をもう少し詰めなきゃいけない。それがないと思いますね」