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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
第五一〇回('14年8月17日 放送)
 「動く世界」の中で
 ゲスト: 武村正義 氏 / 田中均 氏

御厨

「田中さんは前回のガイドラインの改定では中心的な役割を果たされた訳ですが。すでに本格化していて、年末までに行うと言う今回の見直しのポイントは何でしょうか」

田中

「私はやはり一番大きなところは、私たちがガイドラインを作ったときに出来なかったこと、すなわちその北朝鮮有事になった時に、これ一番蓋然性が高い訳ですけどね。その時に果たして日本が十分な協力をアメリカと韓国との間で出来るかどうかっていう事が、やっぱり最大の課題だった。ところがね、一定程度のことは出来たんですね、だけど集団的自衛権の行使をしないという前提で作ったもんですから、空白が生じた訳ですね。私はその部分を集団的自衛権の行使と言うかどうかは別にして、現実問題として個別的自衛権の延長でもあるんですね。例えば臨検するとかね、米軍に対する支援についてもう少し意味のある支援をするとかですね。それがアメリカが一番求めてることだと思うんですね。ですから私はそこが一番大きなポイントであると思っています」

御厨

「もうひとつだけ田中さんにお伺いしたいのが、この集団的自衛権の行使を容認した、認めた事で日本側が交渉に強く出られるという考えもあるんですが、田中さん経験者としてそれはいかがでしょう」

田中

「その、いわゆる集団的自衛権の行使じゃないんですね。今一部容認として認められてる事はけして米軍と一緒にイラクに行って戦うという概念ではないと、いうふうに総理は説明しておられる訳だから、全然違うんですよね。ですから、それは要するに総理大臣が言われている事もね、アメリカとの関係でやっぱり逃げないでエフェクティブな効率的な計画作りやりましょうということである限りアメリカは歓迎すると思うんですよね。だから別にどっちの立場が強くなるという話ではないと思います。私はそれは好ましいことだと思います。効率的な防護が出来るという意味ではね」

御厨

「武村さん、今回は臨時国会での議論がないと。そのままアメリカとの交渉にこの後入っていく訳ですが。こうした事態、武村さんはどうお考えでしょう」

武村

「私はこの問題はやっぱり解釈で憲法を変えたというか、一番内閣としては安易な道をとったところに原因があると思いますね。だって、あれは閣議で決めただけで、これから各法律はですね、来年の通常国会で真剣に議論が国会で行われるんだと言ってましたけど、ガイドラインはもう年内に決めると。もう具体的に集団的自衛権どうこうするという議論が日米間で始まってるというのは、すごくちぐはぐな感じがしますね。それに何と言ったってやっぱり本来は憲法改正でやろうと思っていたのを最終的には閣議で解釈を変えるという道を選んだところにやっぱり問題があって。おそらくアメリカから見ても、これは僕の憶測ですが、解釈改憲で集団的自衛権を急に決めた日本と言うのは、また内閣が変われば変わるのかという不安がきっとどこかに残っているんではないですか」

御厨

「田中さん、この点いかがでしょうか」

田中

「私もね、本格的には集団的自衛権の行使と言うのは憲法を変えないと、憲法9条の精神には相容れないと思います。ですからね、それは今回そうではないということを言われているのでね、一部容認という言葉の中でね、現実的なところをやるんだという事だと思うんですよ。ですから今武村さん言われたようにね、これがね、集団的自衛権を解釈改憲をしたということになって、実は歯止めがないんだということになっていけば、アメリカもね、これは近隣諸国との関係で極めてこれは刺激的なことになる。アメリカにしてみればアメリカの体力がだんだん落ちているときにね、日本が中国や韓国と事を構えるということは好ましくないという事でもあるので、けしてそれは歓迎しないでしょうね。だから要するにあんまり不透明なね、歯止めがあると言っているんだから、きちんとした歯止めを作ってやっていかれるべきだと。歯止めがだんだん外れていって、言ってる事と違うことをやっていくということになればね、やっぱり日本は信頼を失いますよ」