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第五〇六回('14年7月13日 放送)
 「集団的自衛権」の行方
 〜「歴史」から見えてくる事
 ゲスト: 藤井裕久 氏 / 半藤一利 氏

御厨

「中国の軍備増強、あるいは尖閣近くに船がやってくる事。こういった事を考えるとですね、この武力による抑止力に期待する意見というのも広がっている部分もある訳ですけども。半藤さんはこれどうお考えでしょう」

半藤

「これね、抑止力という言葉は非常に耳障りが良いんですね。なんかこの言葉によって日本がかちっと守られるような風に私たち聞こえるんですが。だけどこれ一番危険と言えば危険なんですね。つまり抑止力が本当に有効なのは、軍事力を行使するための基準というものがしっかりとしている場合にはかなり有効であるかもしれない。ところがですね、曖昧なんですよ日本の場合は。曖昧な抑止力ってのはかえってですね、攻撃を日本に攻撃をする国は無いと思いますが、そういうふうに考えている国がですね、日本の意図を誤解しましてね、かえってリスクを増すもんなんですよね。過去に日本は2回こういう形で抑止力のために同盟を結んで、とやったのが2回ある訳ですね。ひとつは日英同盟ですね、日英同盟結んで2年後には日露戦争起こっちゃったんですよ。それからもうひとつは日独伊三国同盟ですね、これも一年と三ヶ月後には大戦争が起こってるんですね。抑止力のつもりだったけれども抑止力にならない。つまりなぜかと言ったら、どういった場合にこれを使いますという事の基準をですね、カチっと本当に国家として作らなきゃいけないんですよね。それが出来てなきゃ、かえって疑心暗鬼を生みましてね、相手の国にですね、妙な誤解を招いて向こうが強硬化すると言いますか。強硬になってくると言う形になるんですよね。歴史はたった二つしかないんですけど、近代日本の中の歴史に二例しか無いと言うけど大きな例なんですよ。これだけ見ただけでもかなり分かるんで。私これで抑止力がこれで増したとか、これで十分になったという言い方で私たち国民は騙されちゃいかんと思いますね」

御厨

「なるほど。藤井さん、今半藤さんこういうふうにおっしゃったんですけども。この仮想敵国をね、一種設定して準備すると言うのは逆に相手との緊張を高めてしまうという側面があるような気がするんですけど。その点藤井さんいかがでしょう」

藤井

「まずですね。二国間の同盟というものはですね、今先生がおっしゃったように仮想敵国を作ると言う前提によって成り立ってるんですよ。従ってですね、この仮想敵国が本当の敵国になる可能性がある訳ですね。それが今、半藤先輩言われた日独伊ですよね。日独伊の仮想敵国はアメリカですよね。ところが本当にアメリカが敵国になっちゃったんですよね。要するにファシズム・ナチズムの国が民主主義国家と戦うと言う仕組みですからね。これは私許せないと言うか、必ずそうなると思うんです。だから始めからマルチラテラルでやるべきだというのが私の意見です」