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第五〇五回('14年6月29日 放送)
 「集団的自衛権の意味と行方」
 ゲスト: 武村正義 氏 / 加藤紘一 氏

御厨

「さあ、安倍総理の会見以来、集団的自衛権は日本人を守るためのものとばかり議論されてきた感じがするんですね。日本への反撃の可能性、あるいは自衛隊の危険性などはこれまであまり議論にならなかった訳ですが、加藤さんはこの点どうお考えですか」

加藤

「現実の問題としてどういう状況で、例えば韓半島に日本人が数万人いますね、商社マンとか。そこに北朝鮮が何か撃ってくる。アメリカ軍に頼んで引き上げると、そのために日本を守るために集団的自衛権が必要だという一番分かり易いケースが議論されてますけどね。しかし、その時にアメリカが日本の在韓国の居留民を米軍の艦船で運ぶでしょうか。僕はないように思いますね。それから日本の自衛隊の船、アメリカの船が、ソウルとかプサンなんかにいる日本人守るために船が近づいただけで、韓国北朝鮮と連絡して、戦争やめちゃおうというような事言う韓国の指導者もいますよ。その理屈の理論の話より、日韓の外交の経緯の方が重要なんじゃないかな。そんな情勢、日韓関係は悪いし」

武村

「私は加藤さんほどこの問題専門家じゃないんですが、それでも一国民として憲法の前文とか第9条を読み直してみましてもね、どう読んだって戦争するとか武力の行使をして良いとか書いてないんですよ。二重三重に書いてないと言っても良いくらい。ご承知のように、国権の発動たる戦争も、武力による威嚇も武力行使も、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄すると書いてますしね。陸海空軍ももたない、交戦力も持たないとピシッと書いてる訳です。で、かろうじてそれはまあ、正当防衛論ですから、敵が日本を攻撃した時は自らを守る権利はあるだろうと。これが自衛権、自衛隊の根拠で、それは私もそう思うんですが。よその国が攻撃されたのにですね、日本の自衛隊が行って武力行使をして良いなんてどう考えても憲法で読みようがないと僕は思ってるんですけどね」

御厨

「なるほど、どうなんでしょう武村さん。憲法9条をめぐってね、改正ではなく閣議決定した解釈で変えると言う。それによってこれまで禁じていた攻撃が出来ると言う訳ですが。このところはどうですか」

武村

「とにかくそれは安易だし、ご都合主義としか言いようがないですね。だって自民党も安倍さんも一年余り前まではやっぱり憲法を変えて集団的自衛権を導入しようと考えていたじゃないですか。だって96条の改正がワッと浮上しましたよね。これがどうもなかなか上手くいきそうもない、と言う状況が分かってきたので今年あたりから急に解釈改憲。と言うこういうずるい方向に転換してきたと私は見てるんですね。だから本当にこの判断と言うのは、憲法の解釈を恐れ多くも、わが国の根幹にかかわる政策ですから、そんな安易な形でやるべきではないと思います」

御厨

「加藤さん、今度は公明党です。公明党は当初ずっと慎重だった訳ですけども、ここにきて限定的なら容認するというふうに変わった訳ですね。加藤さん、この変化どうご覧になりますか」

加藤

「戦後この解釈改憲とか、交戦権についての憲法改正9条とかですね、どうせ実現しないだろうと。だったら少し防衛ただ乗りじゃないように、集団的自衛権についての文言だけは解釈改憲しておいても良いんじゃないかと、それは私もそう思ってました。けど、日本国内にね、ものすごい平和勢力があったんですよ。それは田舎の、戦争に行ってすごい現場を見てきた、昔の言葉で言うと復員して、命からがら幸いに帰ってきたけどいうね。それが皆、自民党の保守系無所属の我々の選挙基盤になったんですよ。だから国会に赤旗立てられちゃ困るけど、だから反共自民党だけど、戦争はダメよって言う人が多かったんです。その人達が皆死にましたからね。引退しました。引退と言うかもう今82,83になってますから。だから原爆の戦争体験から反戦って言うのはそういうもんですよ。それは一種の出版社のムードとか、一種の熱さとか新聞社の流れとか、そんなもんじゃ、生易しいもんじゃないんですよ。自分の同期の友人が目の前でボンッなんて死んじゃうんだから、脳味噌撃たれて。その人達の反戦ってのは凄まじいもんでしたよ」

御厨

「なるほど、そこがだんだん薄れてきたと」

加藤

「薄れてきた」