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第四六六回('13年9月22日 放送)
 「次々『決断』の1ヶ月の中で」
 〜安倍総理への注文
 ゲスト: 枝野幸男 氏 / 武村正義 氏

御厨

「議論のポイントでもあるですね、何故今、集団的自衛権の行使を認めるという、そういう憲法解釈の変更をするのかと。先ほども申しましたが、石破さんはこうおっしゃった。つまりアメリカの国防費削減でアジアが手薄になってると、だから中国が入ってこないように日本が負担すると、こういうことなんですけど。枝野さんどうお思いでしょう」

枝野

「まずですね、ちょっと論点が違うと思っていますそれは。立憲主義というのは、戦後日本民主主義になったので重要性を忘れてるんですが、でも立憲主義と言うのは民主主義と同じくらい、あるいはそれ以上に大事な近代国家の大原則なんですね。つまり権力は憲法によって縛るというルール。これ民主主義だから、権力自体多数決で選んでるんじゃないか、だから良いじゃないかと言う人いるんですが、実は民主主義は絶対ではないという前提に立っているんです。つまり抽象的には正しい判断を民主主義はするという前提である訳ですけど、個々個別具体的な事になると、一時間違えることは十分にありえる。その時でも権力が変な事しないようにあらかじめ抽象的なルールで縛っておく、これ必要なんです。実際に戦後日本の民主主義においてもですね、例えばハンセン病の患者さん達、戦後民主主義の下でも偏見による差別と人権を民主主義の下にやってきたんです。今の憲法があってもそう言う事が起こるんです。ですから憲法によってきちっと縛っておくということは、民主主義と同じくらい大事なルールなんです。それを、縛られてる側が勝手に解釈変えて良いんだったら縛っている意味が無くなって、憲法が憲法としての意味が無くなります。時々、自衛隊元々認められたなかったのを、解釈変えて一回しているじゃないかと言う人いるんですが、これも憲法の歴史しっかり勉強していただければ、実は新しい解釈は出てきていますが、過去の解釈を否定しない中で色んな対応をしてきたんです。もし本当に従来の解釈を否定しなければならないのであるならば、それは憲法を条文を改正してやる。そのためのハードルが高いかもしれないけど、まさにそのくらい大事なことだから、やるなら条文を変えてやらないといけないと思ってます」

御厨

「武村さんいかがですか」

武村

「私も、解釈で解釈改憲で集団的自衛権を一挙に認めるなんていうのは、ちょっとこれはどうかなと思いますね。過去、自民党の先輩も、宮澤さんとか中曽根総理なんかも国会答弁では4類型なんてことを言われてますが、ああいう例については個別自衛権で出来るっていうか、個別自衛権の幅で可能だというようなことをおっしゃってることも含めるとね、なんか一途に解釈をがらっと変えなきゃいけないという考えはついていけないし、さっきの石破さんの説明で中国とのバランスをとる必要があると言いだすと、向こうは急速に軍事力増やしてますからね、じゃあ向こうが航空母艦持つなら日本も航空母艦、向こうがトマホークならこっちもトマホーク、最終的には核兵器を持ってるから日本も核兵器と。バランスをとるなんて言い出したらそこまでいってしまいますから、際限なく軍事力を強めていかないといけないということになりかねない。そう言う意味では憲法9条で60年守ってきた専守防衛という基本は軽々に崩してはいけないと私は思います」

御厨

「枝野さん、この集団的自衛権を仮に認めると何が起きるんですか」

枝野

「まずですね、集団的自衛権の何をおっしゃってるのかが皆、人によってバラバラなんですよ。つまり今の4類型と言われているような、従来の解釈の延長線上で説明が十分に出来るような話。本当に実際例えばPKOで行かれてる自衛隊の皆さんが自分の身や、一緒に行動してる他の国の軍隊の人たちの身を守るのに中々説明がうまく出来ないねと。こういう話ならば、それは今の解釈でも十分説明できるし。と言う話と、それこそどこかと同盟を結んだら、どこかの同盟国が地球の裏側で何か起こす時に全部じゃないにしろ付き合いますと、どこにでもやりますと、それもこっちから出かけて行ってやりますと。この話と何か全部ごちゃごちゃになっていて、おそらく前者は多くの国民皆さん、そういうことは良いんじゃないと思われると思いますが、後者を良いと思ってる国民の皆さんどれくらいいるのか、これを十把一絡げ集団的自衛権の話になって議論していることも、もうひとつ今回の議論の仕方の大きな混乱の要因だと思っているので、これは集団的自衛権の話じゃなくて、あくまでも自衛権、あるいは日本の安全保障の観点でどこまでがやるべきことなのか、それが今の憲法でどこまで説明しきれるのか、出来ないならば憲法をどう変えるのか。これが議論の仕方だと思います」

御厨

「武村さんいかがでしょう。この一連の問題で、気をつけておかないといけないっていうポイントあれば、教えて下さい」

武村

「まあ分かりやすく言えば、日本が昔やったように世界のあちこちの国に出かけていって、軍事力を展開すると、戦争をすると、言うふうな事にはなって欲しくはない。分かりやすく言えばそういうことなんですけどね、理屈から考えても、長年自民党政権でも守り続けてきた憲法の解釈ですね、憲法上できないという考え方をそんな軽々しく変えることは、これは慎重であって欲しいと、繰り返し申し上げたいですね」