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第四五七回('13年7月14日 放送)
 「選挙に行こう」
 ゲスト: 半藤一利 氏 / 増田寛也 氏

御厨

「中国との対立が深刻化している。このことを半藤さんはどうご覧になります」

半藤

「私はこの問題は、すぐにあのノモンハン事件を想起しちゃうんですよ。要するにノモンハン事件も国境の問題なんですね。で、日本の私たちは島国ですから、いわゆる国境の問題でよその国と交渉するっていうことにぜんぜん慣れてないんですよね。ですからノモンハン事件というのも国境が日本側が主張してる国境線はハルハ川という川だと。ところが蒙古側、ソ連側が主張しているのはノモンハンという、ホロンバイルの草原もこっちのもんだと言って。わずかな空間だけの争いなんですね。それが結局武力でもって解決しようという日本側の意向が強く先に働きまして、それでそれが、あわや首都戦争になるという所までいっちゃったんですよね。で、日本側は1万8000人くらいの死傷者を出し、ソ連側は2万人ちょっと越えたくらいの死傷者を出すという、大乱戦を4ヶ月にわたってやっちゃったんですね。

あれなんかもですね、正直言えば同じテーブルについて話し合いをすればもう少し何とかなったと思いますが、テーブルにつかないんですよね、もうね。ですからそれを思いますとね、同じような形でこれ、なってるんですね。で、日本としてはたぶんテーブルにつくということは、国有化しちゃったんだと、国境の問題は無いんだと突っぱねておりますからテーブルにつくのは難しいんでしょうけども、でもここは何とかテーブルについて話し合いで解決すると言うことを両方の国が考えるべきだと思いますよ。間違っても日本は自分たちの主張を貫くはいいんですが、武力でもって解決するなんてそんなこと夢にも考えちゃイカンと。これだけは是非言っておきたいと思いますね」

御厨

「増田さんはいかがですか」

増田

「ちょうどね、経済が今、中国ずいぶんかげりが見えてきたような気がするんですね。7月危機説なんてことも言われてますが貿易統計見てたら6月がかなりマイナスになってましたね、3%くらい。リーマンショック後初めてだと。4年近くずっと成長だったんですね。要はどういうことかと言うと、経済にかげりが見えてくるとたぶん中国国内に貧富の差も非常に大きなものありますから余計不満が色々溜まってくと、そうすると中国も指導部が変わったばかりですからね。そういう国内情勢を見るとどこかでね、まあ日本ですが、日本に対してそういうはけ口でもないですが、はけ口って言うとあれですが、国内の不満をそちらのほうに向けようという気が働きやしないかなと。要は先日日中韓の賢人会議が福田元総理と、中国は副首相の曽培炎なんかが来て会議してましたけども、今のこの状況考えると中々、今お話しあったように同じテーブルに現職が囲むというのは難しいなという感じはしますね」

御厨

「半藤さんね、この尖閣の周辺では中国の船が来ては緊迫する状態になってると。これやっぱり不測の事態っていうのが起こりうるんじゃないですか」

半藤

「結局そういう小競り合いを、ノモンハン事件という事件の場合も、けして一発で 起きちゃうんじゃないんです。その前から草原にですね、羊飼いが出てきたりなんかするわけですから、常に小競り合いが起きてたんですよね。ですからそういうような形でエスカレーションしていくんですね、両方がね。ですからそれが一発で起きるってことはないんですが、エスカレーションしていくと両方に鬱憤が溜まってきますから、で今のお話のように中国の国内事情がある訳ですから。あの時もソ連の国内事情があったんですよね。ですから何かもう我慢できないというふうに日本人は思いやすくなるんじゃないかと、そういう意味じゃ非常に危険な状態が続いてるというのを思いますね。昭和史の折角のいい教訓があったんですから、そこから学んで欲しいなと思いますね」

御厨

「増田さんはこの点いかがですか」

増田

「一つは、不慮の衝突が起きた時のいわゆる事務的な色々な連絡網のようなこと。これは事務ベースでは時々会ったりしてるわけですから、そういったことをきちんとやることがひとつ。それから一方で、当事国同士が最終的には机を囲むような形になるにしてもですね、もう少し日本も日本の主張を国際社会に訴えるようなことがやっぱり必要じゃないですかね。だからロビー活動みたいなところでね、韓国ともそうなんですが、向こうは非常に熱心にやっておられるけどね、ですから武力衝突は絶対にしないと、だけど日本の主張が世界的にもっと受け入れられるようなそういう努力って言うのは日本は少し欠けているような気しますね」