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第四二五回('12年11月25日 放送)
 「天下分け目の中で」
 ゲスト: 武村正義 氏 / 片山善博 氏

御厨

「武村さん、今回の選挙のあるべき争点というのは一体何なんでしょう」

武村

「テレビ・新聞を見てますと、いわゆる消費税の増税問題と、原発問題と、TPPばっかり取り上げられていますが、政治家がそれだけを語っているとは思わないんですが。しかし最も大事なこの国のありようというか、今すさまじく困難な局面に日本の国は立ってますよね。その局面を得てこれから日本はどういうふうにかじ取りをしていったらいいのか、国家のあり方の基本に関する発言がほとんど見られない。

私個人の話ですが、これまで日本人の頭の中を支配してきた二つの考え方に、非常に疑問を感じているんですが、その一つはやっぱり経済の成長主義です。どんどん無限に何か成長が続けられるかのごとき考え方に疑問を感じますし、もう一つは明治以来の日本の大国主義。主義というのはないんだけども、戦前までは軍事大国で走ってきて失敗した。戦後は数十年、今度は経済大国で成功しましたけど、何か大国でなければならないという。絶えず経済は成長を続けなきゃならない。それは続けられたらいいですけどね。

先生ご存じのように、もう40年前にローマクラブというのが「成長の限界」というメッセージを出しましたね」

御厨

「出しましたね、レポートを」

武村

「あれを思い出すと、あのときにもう人類はこれでどんどん無限には成長できないと、資源がないと、環境が壊れるということを指摘しましたし、そのとおりなんで。だから自民党が3%の実質成長と安倍さんはおっしゃってるけど、この20年間で0.9%ですよ、平均成長率は。2%でも容易じゃない。軽々と3%とか、そんな成長ができる、あるいは続けられると思うのはすごく甘いと思います」

御厨

「片山さんはいかがですか」

片山

「私は争点は幾つかあると思いますけど、最近のこの政治が非常におかしくなったことを思いますと、一つはやっぱり官僚たちをちゃんとリードできるかどうか、力量のある政治集団なのかどうか、これが問われていいと思うんですね。長い自民党時代に官僚主導だったわけです。それを覆すということで政治主導を掲げた民主党、野田内閣になって本当に失敗しましたよね。そうすると今度できる政権というのは官僚主導から本当の政治主導をやれるかどうかということが一つあると思います。

もう一つは、国民の心を一つにするということがなかなか難しくなっている。それは格差社会というのが背景にあると思うんですね、正規と非正規の問題。これを真剣に真っ正面からとらえて、この問題を解決していくというのが政治としてなければいけない。何か国民が心が一つになるのは対外危機に対する勇ましい毅然たる態度だけというのでは危険ですよね。ですから、今回の内政の問題としては、格差をどうやって縮めていくのかということ。それから心を一つにするということですとか、被災地の復興。今度はあまりほとんどの政党は言わないんですよね」

御厨

「言わないですね」

片山

「まだ1年半ぐらいしかたっていないのに。ですから、被災地に寄り添った復興をやるということ。こんなことを政党の皆さんは真剣に考えてもらいたいですね」