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第三七三回('11年11月6日 放送)
 「揺れる世界の中で」
 ゲスト: 武村正義 氏 / 石破茂 氏

武村

「私は自由貿易も賛成だし、貿易障害をだんだん低くしていくのもいいことだと思っていますが、しかし今後10年間でTPPに入ると全部関税を撤廃するとか、ゼロにするとか、あるいは貿易障害もどんどんなくしていくという、そこまで各国が裸になっていいのかと、画一化していいのかという思いはあります

「ですから、FTAを見ていてもやっぱり例外は認め合っていますし、そもそも我々の関係したガット・ウルグアイ・ラウンドやWTOでも関税は認めてきたんですね。自由化はするけども関税はやむを得ないという、そういう穏やかさがあったのを、今度全部取っ払おうという。ちょっとこれは世界じゅう裸になろうということで、それはいいのかなという思いが、反対とは言いませんが、やり過ぎてはいないかという……」

御厨

「懸念がある、そういう感じですかね」

武村

「感じが僕にはあります」

御厨

「石破さん、自民党の中からは、まだ決めるのは早いという意見も聞こえてきたりするんですけども、さっきのお話のように、大きく動く世界の中では、日本の将来を考えると石破さんはどういうふうに対応されますか」

石破

「私はWTOの交渉も随分やりましたよ。だけども、WTOなんていうのは100何十カ国が参加している中で、日本の主張というのはなかなか通りにくいんですね。ところが、TPPなんて10数カ国なものですから、ましてや日本の存在がやたら大きいんで、日本の主張が通りやすい交渉の場ではあるんですね

「その中身もわからないのに交渉に入れるかという人がいるんだけど、中身はわからないから交渉するんで、そこは間違えちゃいけない。そして交渉するのは外交ですから、内閣の専権事項ですよね。それを承認するかしないかは議会ですよね。つまり、日本に有利なルールをつくってこいと。全部撤廃するんじゃないよと。例えば例外をつくるとか、米は10年かけるとか。ですけど、米も700%を超える高関税を張って、米ってよくなりました?」

御厨

「うーん、なってないですね」

石破

「全然なってないでしょう」

御厨

「なってないです」

石破

「どんどん耕作放棄地がふえてますよ。米をつくるのの後継者なんてほとんどいないですよ。何なんだ、これはということをきちんと見据えていかないと、反対反対と言っていれば明るい未来があるか。そうじゃないんであって、やはり農業の保護というのはどの国だってやっているんですよ。アメリカもやっている、ヨーロッパもやっている、オーストラリアだってやっている

「その農業保護のお金を関税という形で消費者に負担させるか。きちんと納税者が何に使ったかがわかるような形で負担するか。私はそれは非常に重要な論点だと思ってまして、交渉と同時に国内政策をどうするかということに真剣に向き合うべきときですよ」

御厨

「なるほどね。武村さん、どうでしょう。かつてガット・ウルグアイ・ラウンドでもアメリカからの開放を求められ、そのときにお金を使ったんだけども、先ほど石破さんがおっしゃったように、どうも今も米農家は同じように反対をしているという状況ですが、どうなんでしょう、武村さん」

武村

「細川内閣のときも思い起こすと、私が大変ほろ苦かったのは、さきがけとしては私個人も反対なんです。米の自由化、当時反対論を主張していました。細川さんの日本新党は賛成でした。でも総理がその方向で行くし、客観的にももうのまざるを得ないという判断で我々は渋々折れたという感じがあって」

「そういう意味じゃほろ苦いんですが、今度も自由貿易が日本の大原則だから、どんどんこれは進めるのが正しいんだよとか、大事な同盟を組んでいるアメリカを怒らせちゃ損だよとか、そういう単純なそろばん勘定で、それはわかりやすい論理ですけど、賛成していいのかという思いはありますね。私は、そういう意味ではちょっと慎重論の方のほうが、日本の国の成り立ちとか、30年、50年の日本の国の行方をむしろ考えて反対している人も点々といて、そんな単純じゃないと思うんですね」

「それで、過去日本がやってきた貿易の自由化って、例えば日本の国土の70%を占める森は今は荒廃して、全然日本の木は経済的には価値を失っています。これは木材というものを自由化しちゃったから、外材のほうがはるかに安いから、日本の木材には全然見向きもしないと

「それから、大規模店舗法というのができて、あれは私ども自民党にいるときにできたんで、責任があるんですが、あれでもうスーパーがどんどんできて、いわゆる町の商店街がシャッターがおりてしまったとか、派遣労働とか、自由化でほろ苦いというか、失敗というふうな、ちょっと考えなきゃいけないようなケースもあちこちにあって、自由化が万々歳とは私は思えません。だからやや慎重に、選択して自由化に取り組んだほうがいいというのが私の意見です 」