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第二七九回('09年11月29日 放送)
 「年末・会期末」
 〜いろいろ起こってます〜
 ゲスト: 武村正義 氏 / 増田寛也 氏

― 「官房機密費」の謎
御厨

「何とも秘密めいたお金ですが、実際に見たものにしか分からない。まさに93年の細川政権時代、武村さんは官房長官でしたが、機密費については、どんな引継ぎがあったのですか?」

武村

「私の時も自民党からの政権交代でした。私の前任者は河野太郎さんでしたが、引継ぎはありませんでした。書類であったのかも知れませんが」

御厨

「そうですか」

武村

「一番印象に残っているのは、官房長官の部屋へ入って椅子に座った途端に、官邸にいる参事官の会計課長がやってきまして、いわく年間何億ありますと、月に割ると約1億円位ですと」

御厨

「なるほど」

武村

「そして、歴代の慣習ですが、領収書も請求書も、そして一切のメモも残さないようになってますと。残さないでくださいとは、言われなかったですが、残さないようになってますというレクチャーがありまして、それが非常に印象的でした」

御厨

「具体的に聞きたいのですが、金庫というのは、どれぐらいの大きさのなのですか?」

武村

「僕の背丈の半分位の大きさ1メートル位あるのかな、銅版で作った明治からずっと伝わっている金庫かなと思って見ていましたが、官房長官室の角にドンと置いてあるんですよ」

御厨

「そうなんですか」

武村

「だから、私も金庫は毎日見えるし、お客さんも知ってる人は、あれは金庫か?とちょいちょい聞く人もいたくらいです」

増田

「私も大臣時代にずいぶん官房長官室に入ってますが、そういうものは見当たりませんでしたね」

武村

「そうか、増田さんの時は、新官邸だから。そう言えば、福田官房長官が僕におっしゃっていました。『武村さん、今度は隣の部屋へ移したと、見えるところに置かないで。ちょっと小部屋があってね」

御厨

「何に使うのですか?アドバイスなどは、誰に受けたのですか?それとも官房長官ご自身でお決めになる?」

武村

「全く何の制約もないというか、そういう意味では不思議な金なんですね。戸惑いながら使わざるをえない金なんですが、それでも噂でどういうものに使っていたのか、伝わってきますので」

御厨

「例えば、どんな?」

武村

「議会対策費とか、国会議員の餞別費とか、あるいは議員連盟、色んな勉強会に出すとか。内閣の中でも、総理大臣にも金が要りますし、他の大臣でも必要な時には機密費持っていくし、副長官にも多少渡すし」

御厨

「なるほど」

武村

「それから民間にも、NGOとか、学者の研究会、勉強会とか、マスコミにも研究会とか、慣行でずっと毎年出してるものですから、そういうものは黙って同じ額を出してましたね」

御厨

「しかし、自民党が衆院選の直後に、2億5000万円を引き出したというのもひどいですね?」

武村

「これは、分かりませんが、選挙の後に出したというよりも、選挙負けて政権交代で、官房長官も辞める事が決まったので、残りを全部キチっとしなさいと言われて、それを全部だして、使い切ったのかもしれませんね」


― 「官房機密費」の今後の取り扱いについて
御厨

「民主党は、これまで機密費について追及してきたわけで、この際もっとオープンにしてもいいのでは?」

増田

「そうですね。なにか腰が定まってないというか、逃げてるというか。嫌だけど、そういう事を以前言ったから、ちょっとは明らかにせざるを得ないなと、そういう感じですね」

御厨

「なんだかね」

増田

「私は、中身はよく分かりませんが、新聞など見てますと、背広代だとか、餞別だとか、いろんな使途が書かれいて。それはもう時代が違っているのですから、今の時代は必要ないと思います」

御厨

「そうですね」

増田

「一方で、情報収集など、どうしてもやむを得ないのも、何かありそうですから、そういったものの公表というのは、馴染まないので、賛否いろいろあるかもしれませんが、秘密のベールでもいいんじゃないかと」

御厨

「なるほど」

増田

「その代わり、額を半分なのか4分の1なのか分かりませんが、個人の懐に入るのは一切辞めて額を圧縮すると。そういうメリハリをつけた方がいいと思いますね」

武村

「私も、鳩山さんが、野党時代にせっかく『官房機密費 公開法』を提案しているので、これは一刻も早く民主党政権は、公開に踏みきるべきだと思います」

御厨

「なるほど」

武村

「すぐに全部は、不可能だと思いますから『10年後に100%公開する』というルールを決めて、発表すべきだと。そうすれば、簡単には使えないですよ」

御厨

「そうですね」

武村

「使い方が公平性を欠いてるとか、物議をかもすとか、何であの人にあげて、こっちにはあげないのとか。こっちは金額が多くて、こっちは少ないとか。そういうことが、かなり問題にされそうですから、結局使えないと」

御厨

「なるほど」

武村

「そうすると、私は10分の1以下の金額で収まると、堂々と発表できる金というのは、その位で済むと思います」