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第二七八回('09年11月22日 放送)
 「政権発足2ヶ月」
 〜鳩山首相のリーダーシップ〜
 ゲスト: 渡部恒三 氏 / ジェラルド・カーティス 氏

― 「事業仕分け」をしたのなら
カーティス

「事業仕分けで、約1兆円減らすでしょ。これは要するに財政問題が日本にあるからです。すごくいい事だし、大事なことだけれども、もっと大事だと思うのは」

御厨

「はい」

カーティス

「税収が思ったより8兆円とか9兆円少ないでしょ。それでもマニフェスト通りにやれば、事業仕分けで、いくらムダを無くしても財政がパンクしますよ」

御厨

「そうですね」

カーティス

「ですから、鳩山総理が早く、マニフェストで公約したのは方向性であって、税収が足りなかったら、子ども手当をもっと少なくするとか、高速道路の無料化をしばらくやらないとか、色んな事を考えて、マニフェストを修正して、財政の赤字がこれ以上多くならないようにしないと」

御厨

「はい」

カーティス

「せっかく1兆円減らしても、10兆円増やしたら、事業仕分けの作業自体があまり意味がなくなるわけですよ。だから、マニフェストの見直しを早くしないといけないと、私は思っているんです」

御厨

「渡部さん、いかがですか?」

渡部

「子ども手当は、優先しますけれども、高速道路の無料化の方は延ばします。マニフェストは大事です。しかし今、国民が、何を考えているかは、なお大事なことですから」

御厨

「なるほど」

渡部

「マニフェストに書いてあったから、何が何でもやらなくちゃならないわけじゃありません。私が鳩山君に言っているのは、4年間の任期を与えられたのですから、4年間の間にお約束した事を出来るだけやりますよって事で」

御厨

「はい」

渡部

「国民のみなさんも、来年度の予算だけを見て、マニフェストに入っているのに、やらなかったという事ではなく、ここは、ひとつ考えて頂きたいと思っております」

カーティス

「政治は生き物ですから、事情が変わってきているのに、前に言った通りにするというのは、政治じゃないですね」

御厨

「事業仕分けに関して、各大臣から反発が強くなっていますが?」

渡部

「私なんかもね、地方交付税は、絶対増やせと騒いでます。正直いって」

御厨

「そうですか」

渡部

「今、地方は本当に大変なんですよ。農業は大変。それから、長い間続いている商売してる人がみんな潰れちゃう。やっぱり格差是正が、民主党の基本哲学ですけど、その中で地域格差の是正、これはやらなきゃなりません」

御厨

「カーティスさんは、いかがですか?」

カーティス

「私が一番の問題だと思うのは、大臣というのは役所の代弁者ではないということです。総理大臣の下で、政権を運営する人たちであるはずです」

御厨

「はい」

カーティス

「しかし、まだ2ヶ月しか経っていないのに、もう前の自民党と同じように、大臣がその役所の利益、立場に立ってしゃべっている」

御厨

「そうですね」

カーティス

「こんな事になってしまったら、せっかく民主党が起こそうとしている変化が、無意味になってしまう」

御厨

「なるほど」

カーティス

「鳩山総理が、大臣に対して、これは私の内閣である。私の言うことに、反対するようなことを言うのだったら、辞めてもらうという事を言わないと、総理大臣の権限、そのものが弱くなりますよ」

御厨

「そうですね」

カーティス

「特に、亀井さん。4、5人位の政党しかない人が、総理大臣と対等な立場にあるような感じでいるのは、とんでもないと思う」

御厨

「なるほど」

カーティス

「鳩山総理が、もっと強く自分のリーダーシップを発揮しないと大変な事になりかねない。非常に危険だと思うんです。農水省の赤松さんが言っている事とか、いかにも自分が決めるというような感じです」

御厨

「はい」

カーティス

「そうじゃない。総理大臣が決める事であるはずです。まだ2ヶ月だから色んな問題が出てくるけれども、これは非常に危険だという事を、鳩山総理が考えることは、すごく大事だと思いますね」