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第二七七回('09年11月15日 放送)
 「二番底は大丈夫か?」
 〜鳩山政権「予算」をどうする〜
 ゲスト: 藤井裕久 氏 / 浜 矩子 氏

― 「事業仕分け」スタート!
御厨

「国の1年間の予算を、体育館のみんなの見ている前で議論する。こんな光景は、初めてですね」

「たいへん結構なことだと思います。たくさん見に行かれた方がいましたよね。私も行きたかったという風に思います」

御厨

「そうですか」

「ただ、いくらでも鋭く突っ込んで頂いていいのですが、相手の方に同情が集まるようにならない方がいいとは思いますね」

御厨

「なるほど」

「あまりにも横暴だと、削られる側は、そういう風に言うわけですが、それが一理あると思われてしまわないよう、大人ぶりを合わせて発揮しながら突っ込んで頂きたい」

御厨

「藤井さんは、元主計官で、これを役所で渡り合ってきたわけですが、今回のやり方のメリットは何ですか?」

藤井

「大蔵省というか財務省は、役所の中の役所とか、色々いわれますが、結局は、他省庁と並列なんです。ですから、モノを言うにも限度がある。分に過ぎた事はやっちゃいけない」

御厨

「そうですね」

藤井

「ところが、この新しい仕組みでは、仙谷さんの『行政刷新会議』というのは、役職的に言うと上級官庁なんですね」

御厨

「なるほど」

藤井

「だから、並列官庁では出来ない色んな話が出てきているわけです。ですから、大変ありがたいですね。一人の市民としてこういうやり方は、本当に許せないというものが、随分あったと思います」

御厨

「埋蔵金6000億円って、よくこんなにありましたね。ないないと言われてきましたよね」

「埋蔵金というものが成り立ちうるということが、明らかになったという事も大変結構なことで、そういう精神構造というか、発想が、赤裸々に、我々の前に出てくるということ重要だったと思います」

御厨

「農水省は、9つの基金の全部が返納になっている。しかも、担い手支援だと言って、800億円を定期預金で運用していたという。こういう事を、ごく当たり前にやっていたのですか?」

藤井

「そうなんでしょうね。これは、やっぱり政権交代って意味は、今のようなものが出ると同時に『会計検査院』の態度が、全然変わりましたね」

御厨

「そうですか」

藤井

「『会計検査院』は、1兆のお金が今、基金の中に積立金として残っていると、140いくつって言ってましたかな。これは『会計検査院』が言い出したんです。今までは、言わなかった。しかしこれが、急に出てきた」

御厨

「なるほど」

藤井

「『会計検査院』は、前の政権の時も、いろいろ資料は持っていたんだと思うんですよ。だけど、出せなかった。だから政権交代の意味は、そこにもありますね」

御厨

「そうですね」

藤井

「ですから、査定当局は、全部謙虚に受け止め、世の中の方のお気持ちに応えなきゃいけないと、強く職員に指導しております」


― これからの「景気対策」とは?
御厨

「スーパーで、お客一人が使う金額が、安くなっていると言うんですね」

「スーパーで使う金が減るってことは、本当にごく当たり前の日常生活において、非常につらさがひしひしときてる。普通だったら、なかなか刈り込んでいかないところまで、我慢せざるをえなくなっているという事ですよね」

御厨

「そうですね」

「リーマンショックから1年ちょっと経ちましたが、これは経済というものが本格的に牙を剥いている姿です。 それに対して政治は、どう対応していくのかが、大きなテーマになってくると思います」

御厨

「公共事業も減って困っているという事ですが、景気の司令塔としては、藤井さんどうしますか?」

藤井

「公共事業優先という時代は、もう終わっていると思うんですよ。昔は『内需拡大』と言って、大規模公共事業をやった。でも、今の時代は、それではダメで『福祉経済』『地域経済』というか、そういうところに力を入れるべきだと」

御厨

「と言いますと?」

藤井

「例えば、同じ公共投資でも、地方道路の本当にキメ細かい所であるとか、これは公共事業じゃないかもしれないけれど、保育所の増設とか、そういう所に目を向けていくように、経済政策の方向を変えていかなきゃいけないと思います」

御厨

「なるほど」

藤井

「大規模公共投資では、高度成長の時は『1億総 中流階級』になって良かったのですが、今、大規模公共投資なんかやったら『1億総 格差社会』になっちゃう。その政策転換が大事だと思っております」

「今、藤井さんが言われた中で、非常に重要なのは『キメ細かい』という言葉を使われました。これは、やっぱり今、一番重要なことだと思います。鳩山首相の所信表明の中でも『人間のための経済』という言葉を使われましたよね」

御厨

「はい」

「だからまさにそういう意味では、大型公共投資でもない。ハコモノをつくっていくのでもない。やっぱり『人間のため』ということを打ち出した限りは、この今の悲鳴にどう対応するかという所がポイントになってきますね」

御厨

「なるほど」

「確かに、大企業の景況は、賃金カットなどで良くなっているかもしれないけれど、最終的にやっぱり人を痛めつけていたら、絶対にダメですよね。いくら企業が業績を上げても、最終的にその企業が、作るものを買ってくれるのが人なわけですから」

御厨

「そうですね」

「ですから『人間のための経済』というものを実現するために、政治は何をするのかを考えていくべきで、その時には『キメ細かさ』が大切で、非常に手間がかかる話ですが、より東方西走する政治になってもらわないといけないと思いますね」