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第二七〇回('09年9月27日 放送)
 「スタート鳩山丸」
 〜外交やら、ダムやら〜
 ゲスト: 加藤紘一 氏 / 増田寛也 氏

― 鳩山演説!温室効果ガス「25%削減」
御厨

「鳩山さんの外交デビュー、加藤さんはどのようにご覧になりましたか?」

加藤

「お互いにまず知り合おうと、それで、最初から議論すると危ないと言って、両方が安全運転している感じですから、案外スムーズにスタートしたようで、良かったと思っています」

御厨

「増田さんは?」

増田

「まず、こういう国連の場があったのは、大勢の各国の首脳にお披露目が出来たので、良かったんじゃないですか」

御厨

「そうですね」

増田

「ただ日米関係で言えば、11月にオバマさん来日される予定ですが、その時は、本気で向こうが成果を求めてくるでしょうから、その時が大変難しい局面になるんじゃないでしょうか」

御厨

「インド洋の問題であるとか、米軍基地の問題もありますね、そのあたりは?」

加藤

「アフガンの給油の問題も、給油してる量はたいした量でもないし、現実にアメリカ軍やイギリス軍が、やろうと思えば、出来るのだと思うのですが、日本がやってる『シンボル』なんだという事がポイントですから、そのシンボルを消してしまう事が『どうなの?』って事なんです」

増田

「非常に慎重なデリケートな答えを求められるでしょうね」

御厨

「その鳩山さんですが、温室効果ガスを25%削減しようと、首相演説で表明しました。この25%削減について、加藤さん、どのようにご覧になりますか?」

加藤

「25%というのは、鳩山さんもこの演説で言ってますが、他の先進国もやってくれる場合ですよと。だから、他の国を引っ張り込めたらいいのですが、他の国が着いてこなくて、日本だけやったら、鉄鋼なんかは日本でつくっていられなくなりますから。だからものすごくリスクの高い事をやったんだと思いますね」

御厨

「日本の省エネ技術とか、資金を援助するということで、鳩山イニシャティブということを言いました。これが効果をあげるために、加藤さんが、アドバイスされるとしたら?」

加藤

「中国とインドをどうやって引っ張り込むかということでしょう。それから一番冷たい顔で見ているのはアメリカだと思います。オバマさんの演説では『中国もインドも一緒にやろうね』ということを言ったけれど、日本だけ抜かしてあるんですね」

御厨

「そうですね」

加藤

「日本と同じ事をやるということに引っ張り込まれないように。もう、すでに、外交テクニックは、始まっているわけです」

御厨

「なるほど。増田さんは、どのように?」

増田

「日本国内で、この目標を掲げることに、大方の皆さんが好意を持っているにしても、現実の生活がどのように変わっていくかについて、ものすごくライフスタイルを変えなきゃいけない事があるんで、早く皆さん方にその内容をきちんと説明したほうが、いいと思いますね」


― 八ッ場ダム問題について
御厨

「この騒動、建設省出身の増田さんは、どう見ますか?」

増田

「公共事業というのは、実は、一度動き出すと止まるルールってないんですよ。だから、八ッ場ダムのように、周辺の工事が終わって、いよいよ本体工事っていうところで止めるのは、今まで前例がありません」

御厨

「はい」

増田

「ただ、人口減少の時代に入ってきていますから、公共事業のあり方は、ここで本当に根っこから考え直さなくてはいけないと思うんです。社会上の整備という問題はあるんですが、もうひとつ大事な役割としては、自民党時代には、所得の地域的な格差を埋めるための再配分を担ってきたという役割がありました」

御厨

「そうですね」

増田

「しかし、そのやり方を人口減少の時代に、いつまでも続けるというわけにはいきませんので、公共事業のあり方について、民主党としてどうするのか、そのあたりの筋道を早く見せて欲しいですね」

御厨

「今回、八ッ場では地元の反発が強いですが、加藤さんは、どう思われますか?」

加藤

「マニフェスト選挙というものの本質問題だと思うんです。今度、民主党が歴史上の大勝をしました、ところがマニフェストのナンバー1は、実は高速道路の無料化だったんですね。2番目が子ども手当」

御厨

「はい」

加藤

「選挙中、世論調査しますとね、この2つとも賛成よりも反対の方が多かったんです。ですから個別マニフェストというのは、ある意味で、ノーになっていたんです。でも選挙では、バーンと勝っちゃった。そうすると選挙の勝利とマニフェストとの関係が問題になってきますよね」

御厨

「なるほど」

加藤

「八ッ場の問題は、その方向で検討すると言いながら、丁寧に話をつめていく必要があったんじゃないかという気がしますね」

増田

「確かに、選挙のときに中止と言った、そのままバッと流れ込んだという気はしますね。だた、先ほど言ったような理由で、国交大臣になられた前原さんには、ぜひ公共事業の新しいやり方というものを示して欲しいなと思います。けして何か手続きがおかしいというよりも、むしろこれから、その手続きの筋道をきちんと示していただく必要があると思うんです」

御厨

「反対サイドからは、工事を止めた方が、840億円多くかかるという話も出ていますが、これは、どう思われますか?」

増田

「お金だけで言うと、止めたときの方が、費用的には多くかかる可能性はあると思います。だた、この問題については、むしろ一般的に、計画時点と、完成時点に50年もかかっている事業について、ストップをさせるルールが、今のところないいうこと。それがいいのかどうか」

御厨

「はい」

増田

「あるいは、そもそも論として、人口減少の時に、新しくつくるというよりも、事業を維持管理する、あるいは延命化させる方向に今後切り替えていく。それで地元の業者さんが出来るだけ入りやすくするといったことも必要だと思うんです」

御厨

「なるほど」

増田

「あと、この問題は、国交省の中の道路局や、河川局など、いわいる技術系の方々の中で、いろいろ物事が進んでいくような公務員制度の問題ですとか、いろんなところに波及すると思います。自治体の補助金行政で、官依存の体質を作っているのも、こういったところに原因があるので、これはいろんな意味で考え直さなきゃいけないと思います」