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第二五五回 ('09年6月7日放送)
 「迷走麻生」
 〜早くしろ!失われた3年〜
 ゲスト: 塩川正十郎 氏 / 片山善博 氏

― 「直轄事業負担金」の使途に、高まる地方の不信感
御厨

「大阪の橋下知事は『負担金の請求書は、ぼったくりバーみたいだ』と、かなり怒ってますね」

片山

「『ぼったくりバー』と言われましたけど、まさにそのとおりで。どこで何をするか、どういう事業をやるか、国が一方的に決めるんです。それで、そのツケだけを地方に請求してくるわけです」

御厨

「なるほど」

片山

「しかも調べてみたら、国の職員の退職金や庁舎の修繕など、別の所に流用されていた」

御厨

「しかし、国の職員の退職金を地方が負担するというのは、考えられない話ですが、塩川さんこういうこともあるわけですか?」

塩川

「ありますわね。知事とか市長にしても、国の大部分の人達は、まだ以前のように『お上に盾突いたら損だ』という精神、土壌がある。これが問題なんですよね」

片山

「やっぱり今まで、全国の自治体も国に対して、キチンした明細を要求してこなかった。その結果、国の方も、ルーズになって、色んなのところに流用してきたのではと」

御厨

「塩川さん、どうでしょう。今まで、明細が出てこなかったというのは?」

塩川

「明細なんか無かったんじゃないですか。どうせ、どんぶり勘定でしょ。そもそも、今まで各自治体は、社会施設を造ってほしいものだから『何でも言う事を聞きますから、やってください』ばっかりだった」

御厨

「そうかもしれませんね」

塩川

「ところが最近、高速道路、新幹線、空港も、行き渡ってきたでしょ。社会基盤が殆ど出来てきたら、政府離れになってきてますよ。今まで『頂戴、頂戴』だったのが『中味を一回調べみろ』という時代に変わってきたんですね」

御厨

「それから、国交省と知事とのケンカばかりが目立って、国会議員の顔が見えないのも気になります」

片山

「そうなんです。そもそも、国と自治体が、上下関係、主従関係にある、こういう制度は早く直さなきゃいけないんです。この仕組みは法律で出来てますから、これを直そうと思ったら国会議員が、国会で法律を変えなきゃいけない。しかし、国会議員には、そういう意識がまず無いんですよね」

御厨

「なるほど」

片山

「今は、国が自治体からお金を取る直轄事業負担金の問題ですが、自治体が国から補助金をもらって公共事業を行うこともあります」

御厨

「はい」

片山

「だったら、自治体が国に納めた税金が、国の職員の退職金に使えるなら、逆に国からもらう補助金を、自治体の職員の退職金に使えることになっちゃうんです」

御厨

「そうですね(笑)」

片山

「『それで良いんですか?』って事ですよ」

塩川

「そうなったら財政の秩序は、メタメタや(笑)」


― 「世襲制度」を、どう考える?
御厨

「自民党の菅義偉さんも、武部勤さんも一度は『世襲制限をやる』と言ったけども、結局ぶれちゃって、最終的に投げ出した感じなんですけど」

塩川

「この前ね、ある会合に行ったら、農業関係の人達が『自民党は世襲党、民主党は官僚党』そんな事を言ってました。それで僕は『そうじゃない』と言ってね、説明したんですけどね」

御厨

「そうですか」

塩川

「まず『何で世襲がいけないんだ』という説明を、キチンとしないといけない。人材があれば、世襲でも良いじゃないですか。ただし、能力も人格もなしに、親がやっていたからと、安易にする事は避けるべきです。けれども、家風として、政治的な雰囲気を持って、訓練も出来ている者は、引き続いてやっても、私は別にイカンとは思わない」

御厨

「なるほど」

塩川

「立候補する人の資質を、選挙民が判断してもらわないとしょうがないと思いますね」

御厨

「片山さん、いかがですか?」

片山

「私は、世襲問題というのは、民主主義の国では『公平公正でなくてはいけない』という理念に反すると思うんです。例えば、普通の20代の若者で、選挙に出るだけの知名度はありませんよね。まして、政治資金なんて集まりませんよね」

御厨

「確かに」

片山

「ところが世襲の場合は、20代でちゃんとした政治資金を、受け取ることが出来る。親が、非課税で集めた政治資金を、息子は事実上、非課税で相続できる。これはやっぱり公正さという観点から見たら、問題があると思うんです」

塩川

「その前に世襲しても良いかどうか、ここをしっかり選挙民が見てくれないとね。そうでないと、世襲問題を単純な血統だけの問題で、処理することは狭くなってしまうと思います。しかし、良く考えてみると新人が出にくい1つの理由に、世襲があるという事は事実ですから、これは反省しないといけないと思います」

御厨

「やっぱり、親である議員は、息子さんなり、なんなりに選挙区を譲りたくなるものでしょうか?」

塩川

「親もそうでしょうけど、現在の政治家を取り巻くのは、後援会なんですよ。後援会はその方が、利便が良いですからね。そこで『息子を出せ』『お前の娘婿をだせよ』とかいう事になってくる」

御厨

「でも、そこで見ている視野はえらく狭いですよね」

片山

「今、選挙というのは、本来、政党本位になったはずなんですよ。小選挙区になってから、色んな事が変わりました。政治資金の制度も変わりました。でも、実態は、塩川先生のおっしゃった後援会単位なんですね」

御厨

「なるほど」

片山

「同じ党でも、党の看板を掲げながら経営者が別々という実態。まるでコンビニのフランチャイズチェーンみたいなものですね。もっと言ってしまえば、鎌倉時代の『御家人政治』みたいなんですよ」

御厨

「御家人ですか(笑)」

片山

「『いざ鎌倉』と言って、自分の馬具、槍をもって集まって。そうすると、自分で築いた御家人の領域で、政治資金も集めてますから、どうしたって子供に引き継ごうという心情は出てきますよね」

御厨

「なるほど」

片山

「これを、政党でやりますと、個人的関係ってのは薄れますから。政党が機能してない事が、世襲を生む大きな背景だと思います」

御厨

「いずれにせよ、今は小選挙区ですからね。ますます選ぶ所が狭くなって、中選挙区なら色々出られるのだろうけど」

塩川

「そうです。中選挙区は新人の出る機会、チャンスもあったんです。小選挙区制になりましてからね。公認で決まっちゃうんです。そこがですね、非常に問題なんですね」