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第二四八回 ('09年4月19日放送)
  「近づく選挙の足音」
  〜麻生でいいのか、小沢でいいのか〜
  ゲスト: 野中広務 氏 / 亀井静香 氏

― 北朝鮮 6カ国協議・脱退!核施設・再稼働を表明!
御厨

「ミサイル発射からの一連の動きを、どのようにご覧になりますか?」

野中

「4月9日に金総書記が国防委員長に再選されるので、国民の士気をあげる目的だったのではないかと。それから、打ち上げによって、飛ぶ距離を商品価値としてイランやら、そこらに見せようと言うのが、見え見えです」

御厨

「なるほど」

野中

「しかし、最近は、北朝鮮の軍人を見ていたら、やせ細ってますよ。これはね『軍隊に入ったら、食料は満足できる』と思っていたら、軍隊までも食料が行き届かなくなったのかなと。金正日総書記も発作があって、体調が十分でないのは分かりますね」

御厨

「そうですね」

野中

「だから、こういう孤立主義は、向こうの常套手段ですから、あんまりこの常套手段に踊らされないで、日本は整然としていく余裕を持ってくれなければ。こんなに踊って、そして、その間に法律も無いのに、アフリカのソマリアまで海上自衛隊が出て行くのは、何か恐ろしい感じがして、取り返しのつかない道をひた走ってるんじゃないかという気がしてなりませんね」

御厨

「なるほど。亀井さんは、いかがですか?」

亀井

「けしからん事を北朝鮮はやっちゃったんだけどね。それに対して大騒ぎして、PAC3を東京からゴロゴロ転がして秋田の方に持って行って対応すると言うのは、やはり、今、野中さんがおっしゃったように過剰反応をしていて、何か日本自身が、外国の動きに対して、力には力で対抗すれば良いんだという雰囲気が強くなるというのは、私は非常に怖いことだと思います」

御厨

「なるほど」

亀井

「ソマリアの話もね。これは本来、海上保安庁が対応することでしょ。橋本総理が当時300億円投じて『敷島』という海上自衛艦と同じぐらい大きな機関砲も持っていて、装備もしっかりしている船を作っているのに、東京湾で遊んでいる」

御厨

「はい」

亀井

「やはり海上保安庁が、本来の海賊退治という任務を遂行して、それでも能力的に無理な場合に、自衛隊が出て行くという手順を踏んでいかないと。何でも『自衛隊を出せば良い』という事をやっていて良いのか。マッカーサーが押し付けたとは言っても、憲法がある以上は、それとの間合いを計りながら、法治国家として、冷静な知恵を働かせる必要があると思いますよ」

御厨

「迎撃ミサイルを準備するとか、そういう事だけは報道されて『日朝間に交渉があった』という話はないんですけど。そういう外交交渉がないのは、どうしてなんでしょう?」

野中

「そうなんですよ。それはやっぱり私は小泉総理が2度訪朝して、拉致の皆さんが2度に渡ってお帰りになりましたね。私どもも90年から99年まで北朝鮮に9回行きました。向こうは何も持たないで素手で交渉するんですから、だから大変難しい国ですよ」

御厨

「そうですね」

野中

「それが、拉致を返したという裏には、何か約束をしたと思うんですよ。何も無しに返しません絶対。そう思うと、それが充分果たされないまま来てるのではないかと心配はしてますね」

御厨

「それで北朝鮮が、今、こういう感じで出てきている?」

亀井

「あのね、北朝鮮との関係は、今、日本は全部、アメリカや中国におんぶと言うか、6者協議の中でやってるけど、日本の場合は、アメリカとは違った国益の問題があると思いますよ」

御厨

「と、言いますと?」

亀井

「安全保障だって、テポドンはアメリカには届かないけど、日本には届くわけですから、そういう事の中で、2国間で協議をやっていかないと。全部アメリカに任せておけば良いという形の中でやったって、私は拉致問題は解決しないと思います」

御厨

「なるほど」

亀井

「やはりここは、北朝鮮も独立国家ですから、国家としての誇り、体面もあると思います。そういう事も考慮をしながら、しかしキチンと日本として厳しい態度で交渉していけば、拉致問題も私は解決出来ると思うんですよ。アメリカ頼みにしてるから結局、駄目なんだ」

御厨

「野中さん、金正日総書記の第3期新体制が生まれたわけですけど、健康問題や、後継問題を含めて、どんな感じなんでしょう?」

野中

「写真を見る限り、やっぱり左半身が発作である程度不自由になってるのではないかと推測されますね。この頃は、北朝鮮の人民がやせ細った姿を見て『ここまで総書記を苦しめてる』と涙を流す写真までが出たりしてますから、相当、国民も総書記の姿を見て、心配してるんだと思いますね。それだけに後継者問題というのは付随して必ず出てくると思います」


― どうなる!?「小沢問題」の今後…
御厨

「新聞でも、6〜7割の人が、小沢代表は辞めなきゃ駄目だと思ってる。小沢さん不利な状況ですけど、どうご覧になってます?」

野中

「そうですね。それは直接の秘書が逮捕され、未だに勾留されたままと言うのは非常に異常なことでありましてね。私はそういう点で小沢さんがどれだけ勇ましい事を言おうとも、やっぱり国民は、小沢さん率いる民主党の限界を見てると思うんですよ」

御厨

「なるほど」

野中

「自民党と一緒で、誰も体を張って『降りろ』と言う者がいない。亀井さんだったら降ろしてますよ(笑) 本当にどっちも『降りろ』と言う者がないから、このままズルズル選挙まで行っちゃうんじゃないかなと心配をしますね」

御厨

「亀井さんどうですか?」

亀井

「これはね、検察が明らかに、選挙妨害をやっちゃったんですよ。こういう事件をやるのなら、選挙後にやれば良い話であって、影響は甚大です」

御厨

「なるほど」

亀井

「しかし、国民の殆どは、検察のやることは正義だと思ってるんです。そうあらねばならぬ。私もそう思いますよ。あらねばならぬ。しかし、そういう中で『こちらは潔白だ。検察が間違えたんだ。やっちゃいかん時にやったんだ』と、いくら声を大にして言ったとしても、今の世間の雰囲気は変わらないですよ」

御厨

「そうでしょね」

亀井

「だから、小沢さん自身は潔白なんだから、党の為に身を捨てる。そういう事をおやりになって、今の空気を変えないと負けると思いますよ。そうしたら、小沢さんの考えてる政権交代を実現しない事にもなってきますので、きっちりとタイミングを考えて、国民に対して明確に、小沢さんの綺麗な姿を早く見せること大事だと思います」

野中

「僕はね、亀井さんの意見とちょっと違うんですが、時期が適切であったか、これは後の判断です。今はそれよりも、三権分立の我が国において、立法府の中の一政党・民主党が『国策調査だ』と言った。党首も『国策調査だ』と言った。これは重大な事だと思うんですよ」

御厨

「なるほど」

野中

「立法府が司法について、そういう発言をする事の責任の重さ。そういう所が政権を担うことが可能なのか、そこまでいく話だと私は思います。だから、非常にですね、自分達に不利だったからお騒ぎをしたけれども、やっぱり立法府にある人として、この国の健全な民主主義を守っていくために、やはり発言は慎重であるべきだと思いますよ」

亀井

「それはね、麻生さんがやらせたわけじゃないでしょう。日本の捜査は、検察も警察もそんなに総理大臣が指揮をして『あれやれ、これやれ』なんて出来る状況ではないですから」

御厨

「そうですね」

亀井

「しかし、検察は、司法じゃないんですよ。これは勘違いしちゃいかん。裁判所は、司法だけど、検察は政府の一員なんですよ。その政府の一員である検察が、こういう政治の流れを場合によっては、変えるかもしれない事をやったことについて、検察は、ちゃんと説明をしないといけないと思いますよ」