御厨 |
「渡部さん、小沢さんの秘書が逮捕された日は、何をなさってましたか?」 |
渡部 |
「全くの偶然なんですが、私と小沢君とで囲碁を打っていました。その日、4時からかな、約束して打って。そしたら5時かな、テレビつけたら大久保君が、逮捕されたというのが出た」 |
御厨 |
「そうだったんですか」 |
渡部 |
「私は、小沢君は豪胆な男だと思ったのは、私は全然その事を知らなかった。小沢君は知ってるわけだね。大久保君が、逮捕されることを。しかし、全然、私にそういう事を気取らせないで、堂々と碁をやって。碁というのはメンタルゲームですから、やっていて電話がきただけでもちょっと困るぐらいでね。私が逆の立場だったら、今日は勘弁してくれと言って、やれなかったと思いますよ」 |
御厨 |
「その瞬間は、どんな話をされたんですか?」 |
渡部 |
「小沢君は『絶対心配ない。間違った事はしてない』と言って。私は『そうか、しっかりしろ』というような事です」 |
御厨 |
「森さんは、どうご覧になりますか?一連の秘書逮捕から起訴までの小沢さんの心の揺れに関しては?」 |
森 |
「個人の立場ってものがあるでしょうし、もう1つは民主党全体の上に立って、党首としての責任もある。党首の感情が出る時と、個人の人間としての感情が出る時と、色々交錯しているんじゃないですか」 |
御厨 |
「なるほど」 |
森 |
「今、囲碁を打っていた時に、大変な豪胆だと、渡部さんはおっしゃったけど、逆にいうと、なかなか心が落ち着かないから、囲碁を打つことによって、心を静めていようという事だったのかもしれませんよね。まぁ、分かりませんね」 |
渡部 |
「これはね、国民の皆さんにも知って頂きたいのが、2つの心理が交錯してると思うんです」 |
御厨 |
「と言いますと?」 |
渡部 |
「今度のように、検察が、大久保秘書を強制捜査したような事は、今までありませんからね。政治資金の事務的な問題ですから。それで『強制捜査なんて、断じて許せない、頑張らなくちゃならない』という面が強く出る時と。一方、森さんの前で悪いけど、小沢君にしたって、私にしたって、自民党に残っていれば、森さんや小泉君より先に、総理になったかもしれないんだからね」 |
森 |
「・・・(笑)」 |
渡部 |
「しかし、その事を全部捨てて、この国に2大政党。自民党と、自民党に代わって政権を担当できる政党を作って、政治を国民のものにするという事で、やってきた」 |
御厨 |
「そうですね」 |
渡部 |
「だから、今度の事件の為に駄目になったなんて事になったら、申し訳ないから、今『次の選挙に勝てるかどうか、という事を物差しにして判断する』と小沢君が言うのは、その意味で。俺が党首に留まってる事が、次の選挙で勝つために不利になるか、あるいは俺が党首に留まっても勝てるかという事で、迷い苦しんでいる。それで、さっきの男の涙になったんだろうと」 |