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第二三三回 ('08年12月28日放送)
  「行く年 来る年 私の重大ニュース」
  〜この1年なんだったのか?来年は何が…〜
  ゲスト: 野中広務 氏 / 藤井裕久 氏

― 今年の重大ニュース「金融恐慌」
野中

「アメリカ発の金融恐慌で、日本の社会がこれほど苦しみ、年末を迎えても路頭に迷う人が増えていく困難な時期に、政治は早々と御用じまいで、緊張感も何も無いまま年末を迎えてしまった。民は今日の食事に苦しんでおり、職を得ないで苦しんでる時に、政治家が分ってない。これが一番悲しいですね」

藤井

「1929年に、高橋是清は『失業者を出すことは政治家の犯罪だ』と言ってます。そのくらいの気持ちを政治家は、持たなきゃいけない。日本にも、金を儲けりゃ良いという拝金主義がはびこり出してるんですね。明治の財界人は『がっちり儲けて、綺麗に使う』と言っているんです」

御厨

「なるほど」

藤井

「例えば、藤原銀次郎という人は、慶応大学工学部を寄付してるわけですね。儲けるのは良いけれども、それをちゃんと『世の中の為に役立てよう』というのが、明治の財界人だったと思うんですが、今は金儲ける事しか趣味が無い」

御厨

「『派遣切り』が、大変な問題になっています」

野中

「これもクビを切られたら「直ぐ寮を出て行け」とか「社宅を出て行け」というのはね、働く人に対する思いやりが全く無い。経営者が『自分達の給料を全部返還してでも、こういう人を1人でも少なくしよう』という話は、入ってこない。企業の良識とか、モラルをもっと取り戻して欲しいと思いますね」

藤井

「全くその通りですね。派遣が一般化しますとね、人件費の切捨てに繋がります。これは消費を落としますね。それから、やっぱりね、社員も物件費みたいに扱われるのでは、企業に対する忠誠心が出るわけが無いんですね。野中さんが言われましたけど、経営側が配当を全然落とさないで、派遣社員だけをどんどん切る。こういうやり方を経済界のトップリーダーがするというのは、全く情けない話だと思うんです」

― 今年の重大ニュース「総理大臣の退任、交代」
野中

「やっぱり安倍さんが途中で辞任をし、福田さんになって、小泉改革の粉々に日本国中を潰したような改革の軌道を、少しでもまともな関係に戻していこう、あるいは靖国や、中国の関係も正常な形に戻していこうと、ようやく落ち着いて政治をやってもらえるかな、と期待したその時に、福田さんが途中で辞められたというのは、今日の麻生さんの混迷振りに、結果的に繋がり、最悪の事態になってしまったと」

御厨

「う〜ん」

野中

「日本の人達も、格好良く踊る政治家にある意味において憧れたのかなと。何回も総裁選に負けては出、負けでは出した、小泉さんや麻生さんの内面を知る事が出来なかったというのが今日の最大の不幸だと。そうなると福田さんが辞めたのは、非常に惜しかったなとしみじみと思います」

藤井

「私も、本当にそう思うんですよね。だけど、こういうことが重大ニュースになること自体が、日本の政治が滅茶苦茶だという風に言わざるをえません」

御厨

「そうですね」

藤井

「前から言っていますように、この2年の間には『解散』という大きな選択肢があったはずです。政治が混迷したときこそ解散すべきなんですね。もう1つは「憲政の常道」なんですがね。昭和29年に吉田自由党と鳩山民主党があったわけですが、吉田自由党が瓦解して、緒方竹虎さんが次の総裁になった。その時、緒方さんは、野党第一党である鳩山民主党に譲るということを決断されたわけです。そして、その代わり鳩山民主党が解散をする。数ヶ月のうちに解散して選挙をやった。これが憲政の常道なんです」

御厨

「麻生さんは、選挙向けの顔だったのに、解散を先延ばしにしたことで、色んな面でギクシャクして」

野中

「それはその通りでしてね。麻生さんが、文藝春秋に論文を書かれたのは冒頭解散だったと思うんですけど、それがいつの間にか居座りになり。それを批判する党の中の雰囲気も無くなってしまった。だから野党も野党としてですね、健全化ぶりもはっきしないで大連合というような夢を描いてみたり、混乱が混乱に拍車をかけてしまったと私は思うんで、支持率はどんだけ下がろうが必死に権力にしがみつく。資質が無いのに、そういう嫌な面を国民は見せられ、どん底に国民が落ちていく。そこに警告を発する政治家がいないというのは非常に悲しい事だなと思っております」