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 第一三一回 ('06年12月17日放送)
  「どうする『安倍外交』」

  ゲスト: 野中広務 氏 / 寺島実郎 氏

あと2週間程で2006年も終わりです。しかし世界は動いています。明日からは北朝鮮を含めた6カ国協議が再開されます。また国内では人気者として登場した安倍総理の支持率の低下が止まりません。このままで大丈夫でしょうか。そして国会も閉幕となりますが、この2ヶ月あまり何をしていたのでしょうか。世界の動きの裏事情に詳しい寺島さんと政治の裏を知り尽くす野中さんにズバリ伺いました。



― 松坂投手が大リーグへ
寺島

「松坂の年収10億円っていうのと、最近良く言われる日本のワーキングプア。年収200万以下で働くっていう人が1260万人とかいう数字があるんですけれども、これって実は裏表だなぁと言えるんですね。というのは、雇用のシステムがどんどんグローバル化すると、余人をもって代え難いっていう実力を持っている人間はグローバルスタンダードで、上の水準に引っ張られて10億円ってなってるわけです。一方、いわゆる下層を支えている人たちは、発展途上国でも出来るよっていう仕事はどんどんそっちいっちゃって、引っ張り下げられるから、分極しちゃうっていうか…。象徴的なことが進行しているんだなあっていうのが僕の印象ですね」

― 北朝鮮問題は?
野中

「私、中国に先月も行って、一晩「北」問題を色々聞いたんですが、結果的に最後は、日本は金出しますよと言いかねない感じじゃないかなと…。ただ、日本政府も最初に五人のみなさんが帰ってこられたあと、一時帰って、そして家族の人達とよく話しあって、家族の人は「北」で生まれて「北」で育った人ばっかり、まあアメリカの軍人が一人おられますけど、そういう人がよくコミュニケーションをして帰らしたいと思ったのが、日本の世論のおもむくところ、帰れなかった。けれども自分達はあと帰したと、それにしては日本は何の説明もしないじゃないかという、そういう言い方が中国の人達が行くと非常に不満に思っている。ここのところはね、日本はやっぱりきちっとね、自分達が約束したことがこういう事情で出来なかったということが向こう側に分かるようにはね、やっぱりきちっとしといた方がいいんじゃないかという話はありましたね」

寺島

「日本は自分の国のことだけ考えてるんじゃないんだと、地域全体の話。それから国際的な核ルールを、先頭にきってはしるんだと、だからその為には、いやしくもね、「北」が核をもったらね、我々も持たねばならないなんていう思わせぶりな雰囲気ではなくて、まっしぐらに国際的な核の廃絶だとか、核管理っていうものを主導してるんだっていうことをみせなきゃですね、筋が通らない」

― アメリカは変化しているのか?
寺島

「変わってますね。つまり僕は脱9.11って言ってるんですけれども、9月11日からの5年間の政治のパラダイムが大きく変わって、多分、来年目撃するのはイラクからの静かなる撤退っといいますか、コミュニケーションとりながら、できれば南部の石油地帯の権益だけはしっかりおさえつつ、面子を保った形でイラクからひけないかっていうゲームにもう入ってきてる。したがってイラク戦争は間違いだったということが、中間選挙の結果にも現れているわけだし、アメリカの政治に携わっている人達の底流を流れている認識として、そのことが確認されたっていうのが、ぼくは今年だったと思うんですね。

しかも、そこにコミットしすぎてるもんだから、アジアに展開する余裕がないで、北東アジア、特に北朝鮮の問題について、中国の力を借りて制御していかなきゃいけないということで。もうこの半年間の間にですね、わたくしが感じる空気としては、とにかく中国と共同管理を北東アジアについてしていこうっていう…。今までは中国を半分ぐらい敵対視するような空気もあったんですけれど、中国ステークスホルダー論っていうやつですね。つまり中国を国際社会の責任ある勧誘者として招き入れて、いわゆる戦略的にパートナーシップを持ちながらですね、管理していこうっていうような考え方の方に次第にスライドしていってる…本質的な変化です」

― 安倍総理訪中後の中国は?
野中

「安倍さんが外交日程で最初に、中国、韓国を訪問してくれたという、ホッとした思い、我々に伝わりますし、一般の市民もそういう感じをうけます。ただ、閣僚の一部やら党幹部の一部で核保有とか色んな集団自衛権とかそういう、不協和音が出てくるのをこれから先、安倍総理が制御していけるんだろうかと…。そして、安倍さんが変わったスタイルで我々と一緒にやっていけるんだろうかっていうそういう一抹の、一抹どころか不安を非常にもってますね」

― タウンミーティングのやらせ問題は?
野中

「世論誘導するのにこういう悪知恵を出したんでしょうね。支持率もそうだと思うんですね、何とかして支持が少し下がりかけると国民の目をパッと変えてしまう。そういうやりかたがこの数年続いてきたわけですね。タウンミーティングでもこういうやりかたで結果的には大手の広告会社に全部やらして、そこが仕切ってやっていってるから、こういう数字になって矛盾が出てくるんですね。そんなもので、国民の世論みたいに決められて法律が通過して、こんな重要な時に、教育基本法と防衛省の昇格だけが、決まってしまうというようなことで本当にいいのかなあと…」

寺島

「ポピュリズム政治ってやつで、みなさんの意見も聞きましたよっていう手続きを踏んだかのように…。今そうなってますよね。これだけじゃなくてタウンミーティングだけじゃなくて、ほとんどの省庁が、ネットで意見を問うだとかって色んなことやってます。それを手続きを踏んだということで、多くの国民の意見を聞いたっていうことになっているわけですけども、ある種の官僚機構の恐ろしさで、聞いたっていうことを上手く作り上げるためにですね、こういう代理店使ってでもね、やりましたよっていうことの証拠のためにね、やるっていう形で。だから合意形成の仕組みが、こんなことでいいのかっていうね、民主主義の本当のところを問い返さなきゃいけないんだと思いますけどね」

― 安倍総理にひとこと
野中

「あの人のおじいさんは昭和17年の大政翼賛会の時に、その推薦を蹴って当選した反戦代議士で…、お父さんも非常にリベラルなバランスの取れたお父さんで、幹事長、外務大臣をこなしてこられました。だから安倍さんはそのお父さんを超えて総理になられたんですから、戦後生まれの総理としてやっぱりお父さん、おじいさんのこの気持ちを大切にしながらね、この国の形をどういうふうにしていくんだ。そして世界の中でどういうふうにして尊敬される日本を構築していくんだというね、広い視野でじっくり私は歩んでほしいと思いますね」

寺島

「戦後体制からの脱却ってこと言われてるんですけれども、戦後の光と影を、今の野中さんの話そのままですね、影の部分を否定するのは大事だけども、光の部分、例えば安定して平和な時代っていう反戦基準をつくった。それを踏まえてですね、どうするんだと。それをどうやってつなげるんだっていうことをですね、やっぱり我々考えなきゃいけないと思いますね。戦後世代の人間として」




 
   
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