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 第九十二回 ('06年3月5日放送)
  「今、政治に必要なこと」

  ゲスト: 中曽根康弘 氏 / 渡辺恒雄 氏

この4月からの新しい予算案が衆議院を通過して、ポスト小泉をにらんだ政局は、新しい局面を迎えました。しかし、民主党はメール問題でガタガタの状態です。一方で、強気の自民党ですが、国民の冷ややかな視線は、国会全体に向けられてしまっているのが実情です。お二人は今の政治をどう感じているのか…。



― メール騒動について
中曽根

「民主党の体質のみならず、日本全体の体質が今、劣化しているんです。どっちかって言うと、どん底の方へ転げ落ちている。そういう状況下に、今あると思うんです。ライブドアだとか、耐震強度問題だとか、防衛庁の汚職だとか、東大の大学の先生が実験をごまかしたとか、毎日新聞見ていると、日本の各層が、非常に体質が弱って病弱になってきていると。政治も例外でなくて、民主党の代表はああいう体たらく名質問をして、国会が大混乱をしてしまったと。まあ、経済だけは良くなりそうだけれども…。しかし、大企業はいいんであってね。中小企業や地方はまだ駄目ですよ。だから、沈滞して元気がなくなってきた日本を、どういう風にして活力を与えるか。これが、政治家の一番大きな問題でね。今、民主党だけの問題じゃないという、日本全体の問題だと。この病弱になった体質はどこから来たか、それをどう直すか…。そういう課題なんですよね。そこに政治家や、国民全体が思いを致してね、それに対する長期的なものでもいいから、本当に懇切なしっかりとした対案をみんなで、国民でつくっていくと。そういう段階に入ってきたという気がしますね」

渡辺

「ちょっと落ち目になっていた小泉内閣を…。小泉さん、お陰で多少立ち直っただろうと思うんだけど。小泉さんを喜ばせた、ガセネタメール問題ね。ああいうことで懲罰を受ける。あれは新聞記者以下。言っちゃ悪いが、新聞記者並の取材力というか良心を持っていれば、あんなバカな事はしませんね。…今度の騒ぎは余りにもみみっちくて、けち臭くて、汚いね。レベルが低い。国権の最高機関のレベルがあんなに下がっちゃたのか。民主党だけ僕は笑ってられないと思うんですよ。自民党にもあのレベルの代議士は、チルドレンがゴロゴロいるから」

― 武部幹事長の対応は…
渡辺

「本当に自信があるならば、もう少しゆったりと、堂々と、相手をからかうような調子でよかったんじゃないかと思うけど。ちょっとカッカしていましたね。相手が相当お粗末な、前科って言ったら言葉悪いんだが、何度も懲罰の対象になったような程度の人でしょ。大蔵官僚というけれどもね。新聞記者並の取材もできない。あんな一本のガセネタメールのコピーだけで、国会でああいう発言をしちゃいけませんね。だから、武部さん怒るのも無理ないと思うけれども、まあ武士の情けとは言わんが、もう少しユーモラスにね、堂々と構えていていいと思うんですよね。勝ったんだし、勝つんだし。だって最初から勝つとわかってたって言う」

― ホリエモンを応援した自民党は…
渡辺

「小泉さんも、武部さんも、私と小泉とホリエモンの三人で国を改革するとまでいった竹中さんも、立派じゃないですね。ホリエモンの人相ね。それから彼の企業内容、等々、ちょっと見れば、あんなもの国会議員に担ぐというのはね不謹慎ですよ。眼力が無さ過ぎる。しかも俺の息子だ、弟だ、とまでいって持ち上げる。これちょっと僕は、眼力が無さ過ぎるな、と…」

中曽根

「参議院の問題で衆議院を解散するというのは、これは、違法ではないけれども、議会制民主主義の趣旨に反する。妥当性を欠くと。それから、刺客を出すとはなんですかと。まるでその刺客を出すというのは、恨みか親の仇討ちみたいな気持ちでね選挙をやらなきゃ、刺客という言葉は出ませんよ。それを一国の一番トップの者が、言葉でも出す、ということは恥ずかしいことじゃないですかね?それを行動にしたという、この2つの点はね、今度の解散選挙という議会制民主主義の面から見て、大いに将来反省しなきゃならん点だと思います」

― 格差社会は
渡辺

「そりゃ、小泉さんの言うように、人によって能力その他違いますから、富の格差があっても仕方ないと思うんですね。完全に格差なくして、悪平等にしようというのは社会主義ですから。だから社会主義よりは、市場経済の方が良いに決まっている。しかし、市場経済も原理主義になってくると、いわゆるファンダメンタリズムといわれるような、狂信的な市場原理主義というのは、弊害を出しますね。それから、弱いものの事は、政治家は絶えず考えてえていなければいけないので、労働能力と、労働機会の無い人間は、100パーセント国が、救うという気持ちを絶えず持っていれば、格差あるのは当たり前だよ、と小泉さんは言うけれども、じゃあ、その本当にそういう機会も無い、能力も無い人たち、これをどう助けるかということについて、何にも言わないじゃないですか。彼は郵政改革しか言わないんですから。社会保障制度についてなにも言わないんですから。年金制度についてもほとんど何も言わないんですから。これ、良くないですよ。悪い意味での格差社会というものが、国民に印象付けられていきますよね。あって当たり前という、悪い面での。僕は、あるのは普通だし、それから、富めるものいくら出来てもいいと。しかし、下も、少しずつ上がっていかなきゃならんと。下はどうでもいい、上だけ上がればいいんだよ、という、原理主義的な思想は、間違いだな、それは」

― ポスト小泉は…
中曽根

「次の政権はどういう政権か。国の為に、どういう政権をつくらなきゃいけないのか、と。それがやはり一番中心なんでね。そういう点でみると、今度の総理大臣は、まあ受難の総理大臣で、一番難しい困難を突破しなくちゃならない。これからの4年を考えると、その間には増税問題に、憲法改正、国民投票法とか、もう、小泉さんのときに片付けなきゃならん問題が、ザーッときますね。そういう、非常に日本にとって一番難しい困難のどん底を乗り切るだけの総理大臣は、今いませんよ。そうなるとね、みんなで、チームを組んでね、3人とか、5人とかが固まって、そうして助け合いながら、お前は総理やれ、お前は幹事長やれ、俺は外務大臣やる、とそういう風に分け合って、チームで時局を乗り切ると。そのトップをどうするかと。そういう、チームを組むという事がね、私は6月以降出てくると」

渡辺

「総理大臣として、安倍さんが、本当に立候補するなら、僕は個人的には親しいから応援したいんだけども、靖国神社公式参拝に拘っていると、アジア外交が出来なくなる。それから、個人的な名前は言わないけれども、市場経済原理主義者を閣内に抱えていると、これから格差社会行くだろうし、社会保障政策もあるしね。まあなかなか難しくなるなあと。だからその辺を身辺整理してね、良い参謀をつけることじゃないですか?それは福田さんだって、みんなそうですよ。谷垣さんにしても、福田さんにしても、いい参謀を組んで、どういうチームワークを作るか。中曽根さんの後の時は、安倍さん、竹下さん、宮澤さん、3人を全部内閣に入れてね、内閣党3役にいれて、競いながら、協力体制をとりましたよね。そいで、結局竹下内閣が出来たけれども、安倍さんも、竹下さんも閣内に入って助けると。あるいは、3役として助けるという体制は出来ましたよね。そういう風に一体、なるだろうか、ということについて、極めて心配ですね。もう一つ、大きな心配は、来年、参議員選挙ですよ。これ、65改選ですよね。去年、一昨年の選挙で、小泉、安倍小泉・安倍、小泉総裁、安倍幹事長でやってた選挙でとったのは47ですよ。だから、当然、10くらいは減る恐れがありますね。そういうものにすぐ直面する。やっぱアジア外交は、内政上は憲法改正、社会保障制度の問題、財政再建の問題、等々、難問が続出ですから、小泉内閣のこの、とんとんとんときた5年弱のね、政権のようには行かないとおもいますね。まず、選挙で負けることを覚悟しなきゃいかんですから」

― 次の総理大臣がするべきこと…
渡辺

「僕はね、道徳と愛情の復活。これ、僕の新聞のね、今年の社論のスローガンにする。そういう意味じゃ、中曽根さんの言っていることと同じ内容になりますけれども、やっぱり、道徳と愛情が、ちょっと古いと言われるかも知れないけれども、無くし過ぎましたよ日本は…」




 
   
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