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 第七十九回 ('05年11月27日放送)
  「自民党結党50年」

  ゲスト: 中曽根康弘 氏 / 渡辺恒雄 氏

結党50年。自民党大会の壇上で宣言をしたのは杉村太蔵さんで、テレビでもそればかりが取り上げられました。選挙から2ヶ月以上経っても、お祭り騒ぎは変わりません。その一方で、アジア外交では立ち往生している小泉総理。このままで大丈夫なのでしょうか。今回は歴史の転換点を鋭く読み解く中曽根さんと、政治記者として数々の場面に立ち会ってきた渡辺さんに、処方箋をうかがいました。



― 来年のジャイアンツは…
渡辺

「かなりいい選手がとれましたしね。もう2、3人とれば、ピッチャーも20人近くになるんですよ。一軍には12人しか入れられない、満杯。いいピッチャーが…。ちょっと老朽化した建物が、新しい鉄骨が入って、ピカピカ輝いているというような感じで…。原君も、優勝の経験と敗戦の経験と両方持っているから…。それで2年間、沈思黙考して出てきたんだから。来年は期待できますね」

― 自民党結党50年大会は…
中曽根

「我々の時代の党大会と、非常に様変わりしたと感じましたね。我々の時には、私の時には30年でしたけれども、やっぱり30年の自民党を振り返り、これからのまた30年、自民党は何をするかという、そういう演説やら決議やら、割合に思想的な、聞かせるものが多かった。今度のやつは見せる方になってね。83の新しい当選した人を全部ずらっと並べて、お辞儀させたりね、あるいはビデオで今までの事を見せたりね。やっぱり、今の政権の政策、特に幹事長のやり方が、考えたり、あるいは勉強したりというよりも、見せるもの、そういうショー化しているという性格がこの10年で出ましたね」

岩見

「大会宣言を杉村大蔵という人が読み上げるという、ああいう風景はどうですか」

渡辺

「あれは非常にふざけているというか、政治を冒涜していると思うな。武部幹事長とその後話したら、あれは大成功だったと。で、本人もね、途中詰まったらしいんだが…あれ、暗記したんだってね」

岩見

「そうらしいですね」

渡辺

「読むんじゃなくて、暗唱させたらしい。何日かかけて。それで馬鹿じゃないという事を示す為に暗記できると。それで詰まった時に、小泉さんが、『我々は』とかいう枕詞を囁いて、それで何か上手く繋がったらしい。それで『暗記できた。偉いだろう』って言って武部さんは威張っておったけれども。あの人は大体落選した人ですよね。比例代表の最後でやっとこ、間違えて入っちゃった。本人も、当然それとは思わずに名前だけ出したと。それで料亭に行きたいとか、ベンツに乗りたいとか。最初の発言はそうだった人でしょ。おそらく政治的な理念とか、理想とかに燃えて立った人ではない。そういう人をわざとね、ああいう大事な場面に出して立党宣言を、まあ暗唱力を示す為に、ショーですね、一つのショーとして見世物にした。そういうやり方はふざけていると思いますよ」

― 小泉総理は「日米が緊密ならば他も上手く行く」と言っているが…
中曽根

「今までの歴代総理大臣は、アメリカと一緒に話したり、声明出す時には、必ずアジアに触れているんですよ。単に、アメリカ一辺倒だけじゃなくて…。その後に、やはりアジアの心とか、アジアの多元性とか、そういうものを日本として主張しておくんですよ。今度はそれが無いですね。だから、韓国あるいは中国、ASEANというものから、日本というものが段々見下されるように、最近になってきてしまっている。非常に残念な事です」

― 渡部さんは著書の中で「民主政治は衆愚政治に逆行してしまう」といっているが…
渡辺

「やはり、人間というものはある種の理想、理念、まあ上昇志向でもいいんだけれども、目的を持って生活をしないと駄目になる。…自分の価値観とか自分の哲学を持たずに、ただホリエモンが格好いいとね。ああいう人が出てくるんですよ。僕は資本主義にも、やっぱり秩序がなくちゃいけないし、ある種の理念がなきゃいけないし、ある種の道徳観がなきゃいけない。ドラッカーだって、ある種の道徳観というものがなければ、単なる市場経済原理主義じゃだめだよ、という事を言っているんですね。

中曽根さんがよく言われる、砂のようになった、粘土の玉のバラバラの砂のようになっちゃって。それをまとめたり、吸収したり、くっついたりする能力のないバラバラの社会になってしまう。そのためにはもうちょっと、我々理想主義と、高い道徳観というものを取り戻す必要があるんじゃないか。その為には、ニートに合わせてやっていたんじゃ駄目なんで。ニートを見捨てろとは言わない。彼らにも良い影響を与える為には、やっぱり選ばれたエリートの間で、本当の、人間的な、知的な、人格的な競争・・・お互いに磨きあう、そういう努力が必要なんじゃないですかね。そういうことが全く無視されているんですよ。

小泉さん、そういう事言ってますか?言わないで小泉さん、市場経済原理主義しかばら撒かない。従って、武部幹事長も杉村大蔵さんが『よかった、よかった』なんて言っていたけれども。同じような気持ちで『ホリエモンというのは、非常に気持ちのいい、良い青年だから会ってくれ』と僕に言うんですよ。もちろん僕は断っているけれども。ああいう人たちとは会いたくないな。ああいう人たちが日本の社会を壊していきますよ、将来」

― 中曽根さんは2007年が重要というが…
中曽根

「2007年というのは参院戦がありますしね。それから、今やっている財政再建という問題が出てくる。そうすると、税制改革がでてきて、消費税が良いか、悪いかとか。それから今やっている公務員の数を減らすとか。あるいは、今幾つもある特殊法人。政府が持っている機関。あれを統合する。それが実際実現し始めるのが2007年位なんですよね。そういう意味でね、2007年にあらゆる難しい問題が殺到してきている。それに対する構えを今からやっていかないと危ないよ、と。今の状態で、大衆迎合的な形でふらふらやっていったらね、必ず転落する。そういう警告を今から発して、2005年というものの地盤を、自民党の、日本の主体性をまず作り、そして2007年の備えをつくる。だから、次の自民党の総裁というのはね、よっぽど性根のしっかりしたもんでないとね、憲法問題ですら処理できないですよ」

― ポスト小泉は…
渡辺

「安倍さんと麻生さんではちょっと違いますよね。靖国っていう点は麻生さんは似ているけれども、その他の点で、中川、竹中ラインとは大分違うと思いますよ。小泉さんが最近中川、竹中ラインを大事にして、谷垣、与謝野を抵抗勢力と、また仕分けをして。絶えずあの人たちは小泉さんの癖で、どっかに抵抗勢力がいないと、凧揚げの論理でね。逆風が来ないと凧が上がらない。凧を揚げるために今、谷垣さんと与謝野さんを使っているんですね。まあ、谷垣さんも与謝野さんも無茶な事を言っている訳じゃないので。当然の事を言っているので。中川さんという人は政策マンではありませんから。

やっぱり次の政権、小泉さんの後は安倍ちゃんが有力じゃないかなあ、と。安倍内閣を作る為には、安倍さんより小泉さんよりに、ぺったりに居た方がいいなあと。武部さん以上の中心になろうと思っている面もあると思いますよ。それの犠牲に、ちょっとしわ寄せを受けているのが谷垣さん、与謝野さん。福田さん、加藤さん、山崎さんはもう小泉外交はとても駄目だと。靖国問題が、すべての喉にささった棘だと。これはもう抜かなきゃいかんと腹を決めてですね。それに福田さん、加藤さんというのは反主流派だってわかるけれども、山崎さん本当のこないだまで小泉さんの盟友だった。今でも一番近いところにおりますけれども。それで福田康夫さんがのっかっているというのは色々な意味が、大変な意味があると思いますね」

― 次の総理を目指す人たちへ
中曽根 「やっぱり、蹴られても、踏んづけられても立ち上がっていくような、ど根性のあるそういう人間じゃないと持ちこたえられない時代だと。だから秀才では駄目だ」
渡辺 「僕は内政的には社会保障政策が一番大事なんで、その為に、今ハゲタカファンドと呼ばれている、ああいうファンド至上主義をやめてね、真面目な市場経済を作ってくれる人が総理大臣になってもらいたい」




 
   
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