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 第六十六回 ('05年8月28日放送)
  「刺客選挙の行方・『壁』はどうなる!?」

  ゲスト: 塩川正十郎 氏 / 養老孟司 氏

刺客といわれる候補も出揃って連日テレビでは選挙区で握手を拒否されたとか涙を流しただとかという話、そして各党代表の話もどうも選挙向けの建前ばかりという気もします。大ベストセラーバカの壁で知られる養老さんからご覧になると今回の選挙は一体どうなるのかうかがいました。


― 今回の選挙の感想は?
養老

「僕、こういうのが当たり前みたいに思ってましたけどね。他の世界ではむしろ当たり前ですよね。つまり、政策というか理念というものがあって、それに対してそれは違うみたいな形でモノが決まっていくのは、まぁ良かれ悪しかれ近代的なやり方という事ですね」

― 小泉総理を昔から知っている?
養老 「面白いと思うのは、僕、お父さんの代から小泉さんの選挙区なんです。鎌倉・横須賀が中心で、あのあたりと川崎が一緒なんですよ、横浜をとばして…。で、中選挙区時代その飛び石の選挙区でずっとやってこられたのが小泉さん」
塩川 「飛び石でしたね」
養老

「そうなんです、それを何十年もやったんですから、地元との関連って良くいうでしょ。そんな事僕らの選挙区ではあり得ないですよ。地元って言ったって飛び石で…。

僕、時々思ったんですけど、そういう都市型でしかも地元の利益というものを考えててもしょうがないなと、さらに言うなら戦後のいわゆる自民党政治の中である意味では一番割りを食ってきたでしょ。随分前の東京ですけど、国税還付率というのが新聞に出た事があって、しっかり覚えているんだけど、神奈川県とか大阪府で100円税金を払うと国から40円返ってくる。新潟ですと当時180円返ってくる。そいう所から、あの政治家が出てくる。石原さんとね小泉さん両方とも湘南なんですよ。

だから丁度、江戸幕府のあとに薩長が出てきたり、ご本人達は意識がないでしょうけど、常識にしておられる事は例えば森前首相と小泉さんが合わないって言ってますけど、選挙区の事情から見たら歴然としてますよね。合うわけねぇって、全く常識が違うんじゃねぇかって気がしますね」

― 小泉総理というキャラクターをどういうふうにお感じになってますか?
養老 「まぁ、キャラクターが問題になる事自体がやっぱり時代が変わってきたのかなという気がしますね。日本の世間というのは個の突出する事を嫌うんですね。ですから、田中真紀子さんにしても小泉さんにしても、あれだけジャーナリズムで話題になったのは、公に個が出てきたから…。要するに自分の表現で語るとかそういう事を従来はしなかったんですね。特に官僚が典型で、いわゆる官僚答弁と言われる可もなく不可もなくとにかく波風立てないように喋るという事が中心だったんですね。それをかなりはっきり言うようになった。これはむしろ近代化ですね。ある意味では、それがないから逆に退屈だったんですね」
塩川 「おっしゃるように個を集団というものでものを見た場合ですね、小泉さんも田中さんも集団になじまない個なんですね。そういう非常な突出があるんですね。人間は集団的な人間と個性の強い人間とおりますわね。元々そういう個性の強い人に属していると思いますね」

― 政治の胡散臭さを小泉さんには感じない?
養老

「政治って根本的には権力ですから…。権力って誰でも持ちたがる。人間に欲があって、その場合政治というのはそれが一番はっきりでる。誰かに権力を持たせるんですけど、一番安全な方法というのは決まってくるプロセスをオープンにする事。いわゆる自民党ではそこが見えないという形になっている。それを国民が嫌ったのは森前首相が一番良い例だと思います。

なぜ、あんなに人気がないんだってご本人も仰ってた見たいですけど、それはそこが隠れていたという…、それを今の方は嫌いなんですね。どうせ行くんならはっきりして欲しいというのは物事をはっきりするんじゃなくて、プロセスを明瞭に出してくるんだと、明らかにする。それがはっきりしてるならば、それこそ投票で多数なら仕方がないんですから…。そこがはっきりしてないでやると今の新しい考え方では受けない、それは決して全部をオープンにする事が良いとは言ってませんけど、ある段階ではオープンにせざる終えないと思っている。私はもうそれをはっきりやらないと、談合型ではいかないんだと、そういうことですね」

― 選挙制度に何か?
養老 「やっぱり、選挙制度というものがどの程度力を持てばいいのかという事が私は自分の中の課題ですよね。それこそ学級委員の選挙から始まって、古くから言えば入れ札ですから…。今、国民全員が政治に対して責任を持つという意味の教育としては良いんでしょうけど、すべての局面で選挙が出てくるというのは、良いのか悪いのか分からない、自分でも判断がつかないとこです。実はあんまり良くないんじゃないかって本音では思ってんですけどね」
岩見 「その代議制民主主義みたいなものは…」
養老 「全てを動かすっていうのはおかしい」



 
   
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